もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第491回 もとまち寄席 恋雅亭 | |
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公演日時: 令和元年7月10日(水) 午後6時30分開演 | ||
出演者 演目 桂 三 語 「二人癖」 桂 ちょうば 「皿屋敷」 笑福亭 鶴 二 「粗忽長屋」 桂 小 枝 「小倉船」 中入 月 亭 遊 方 「戦え!サンダーマン」 桂 福團治 「南京屋政談」(主任) 打ち出し 21時07分 三味線 入谷 和女、勝 正子。 鳴り物 桂 紋四郎。 お手伝 笑福亭笑助、桂 三ノ助、桂 福丸、月亭 喜遊。 |
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記録的な遅さの入梅となりました今年、令和になって三回目の公演、令和元年7月10日の水曜日に、第491回公演として開催させて頂きました。当日は、雨模様の予報でしたが、何とかもった空模様。今回も熱心な多くのお客様に開場まで並んで頂きました。 チラシも、「新開地喜楽館」、「よせぴー」や本日の出演者の持込などを中心に多数届き、多くの出演者や、三栄企画の長澤社長などの関係者にも手伝って頂き、いつも通り、いつも以上に手際よくこなして、定刻の5時半に開場となりました。チラシも益々、立派となり、パンフに挟むと分厚い。いつもながら長らく並んで頂いたお客様が、一番太鼓に迎えられ、思い思いの椅子に着席され、席は次第に前の方から埋まっていき、定刻の6時半に開演となり、その後も、パラパラ来場されるお客様も多く大入り公演となりました。 七月公演のトップは、六代桂文枝一門の十七番弟子の桂三語師。平成二十一年入門のキャリア10年で、今回二度目の出演となる当席期待の星。上方落語協会の『上方落語若手噺家グランプリ』のファイナリストの常連でもあります。当日は早くから楽屋入りされ、チラシの挟み込みから手伝って頂きました。横で紋四郎師が「兄さん、キャリア一年しか違わへんのに、僕はまだ一回も出てへんのに」とのツッコミに嬉しそうな三語師でありました。 準備万全で『石段』の出囃子で高座へ登場。「えー、一杯のお客様で、恋雅亭開演でございます。まずは桂三語の方で・・・」との挨拶から自己紹介。三田出身だが神戸三宮への憧れと、大阪の早朝、遭遇したけったいなおっちゃんの話題や、一番前で双眼鏡で高座を見たり、焼き芋をくれたりする落語会での実話談から、「人間、無くて七癖、有って四十八癖。」と、始まった本題は、『二人癖』の一席。 仲の良い二人の男が、「一杯、飲める」、「つまらん」の口癖を直すことになったのだが、「一杯飲める」の男がアドバイスを元に色々、仕掛けるのだが・・・。この噺、たわいもない構成なので、間と目線が非常に重要。待つ、たたみ込む、きばる、など、ちょっとした間で笑いが大きく変化。もちろん、三語師の高座は大爆笑でありました。 二つ目は、桂ざこば一門から桂ちょうば師匠。今回、四年ぶりのご出演でキャリア18年で初の二つ目として登場願います。もったいない出番組です。 『ジョーサンズのテーマ』の出囃子で登場し、さっそく、今日の演題を『皿屋敷』と披露。「昔の名人上手は暑い夏に、怪談を聴かせて、扇子の波を止めた。私も、今日はそれに挑戦してみたいと思います。」と、言って「すんません、冷房、もう五度、効かせて下さい!」。そして、昔は閻魔大王様が天国か、地獄か、幽霊かを決めていたと説明して、「私は天国」。幽霊希望の女性は、顔を見るなり、「幽霊は無理じゃ。化け物とする」とのお裁きに客席爆笑。 そして、「ほたら、何ですか・・・」と前半をカットした15分バージョンの『皿屋敷』がスタート。 全編、ざこば師匠、枝雀師匠、米朝師匠のエッセンスとちょうば師匠の工夫が入った秀作でありました。 *** 落語ミニ情報 其の壱 女性音楽ショー のテーマソング *** ちょうば師匠の出囃子は、『ジョウサンズのテーマ』。そこで、昭和40年代にブームとなりました、女性のトリオ4組の音楽ショーのテーマソングを集めてみました。 『かしまし娘』♪~うちら、陽気な、かしまし娘。誰が言ったか知らないが、女三人寄ったらかしましいとは愉快だね。ベリーグード、ベリーグード。お笑いおしゃべりミュージック。明るく歌ってナイトアンドデー。ピーチク、パーチク、かしましい。『フラワーショー』♪~ようこそ、皆さま、ご機嫌宜しゅう。歌って、笑って、フラワーショウ。どうぞ宜しく願います。『ちゃっきり娘』♪~ハァー、ちゃっきり、ちゃっきり、ちゃっきりな、ちゃっきり娘が、飛び出した-。『ジョウサンズ』♪~さぁさぁ 出ました わたしらトリオ 歌って 笑って 朗らかに トリオ、トリオ、ジョウサンーズ。このジョウサンズは娘、お嬢が三人でジョウウサンズ。後に枝雀師匠の奥様で、お囃子方でもあった志代子様が、日吉川良子の芸名で参加されていました。 *** 落語 ミニ情報 其の弐 『皿屋敷』について *** 古い原型は、室町時代の播州を舞台とする話だそうですが、江戸時代の中期、歌舞伎に、その後、浄瑠璃『播州皿屋敷』が上演され有名になります。その後、東京へ伝わり、講談の「番町皿屋敷」となっています。落語では、上方版が播州、東京版が番町となっています。 上方でも演じ手の多い噺ですが、東京でも多い噺で、『お菊の皿』として演じられています。元々は上方落語ですので、六代目三遊亭圓生師匠は、二代目林家染丸師匠から、留さんの九代目桂文治師匠は、上方修行時代に付けられた噺だそうで、春風亭小朝師匠も良く演じられていました。 三つ目は、六代目笑福亭松鶴師匠の末弟・笑福亭鶴二師匠。昭和61年に18歳で入門し鶴児。平成10年に児を二と改字。キャリア33年の脂の乗り切った師匠。今回もいつもと同様、ニコニコムードで楽屋入り。嬉しそうに、「ここは、いつも困りますねん。今日は三つ目ですやろ、前に何が出るか判らへんし、中トリに迷惑掛けたらあかんし、と言うて軽いのん出来へんしね・・・」。前のちょうば師匠が『皿屋敷』と決まって、「よっしゃ、『粗忽長屋』で」と決定。さっそく、お囃子さんとキッカケの打ち合わせ。 『独楽』の出囃子で高座へ登場し、喜楽館でのお客様を見送り時に、お客様から「写真撮って」。一緒かと思ったら「私らを撮って」。連射したら怒られるし散々ですわと、笑いを誘って「私もこの頃、ちょっと、ボケてきました。」と、実話かネタか判らないマクラから、二人の粗忽者の小咄から、本題の『粗忽長屋』の一席がスタート。キッカケの言葉からお囃子が流れると噺の舞台の大阪は心斎橋筋へ。 馬鹿馬鹿しい展開をご自身も楽しまれて演じられる鶴二師匠の高座に客席からは、「クスクス」と含み笑いが漏れ、それが、合わさって大爆笑。「そんなアホな」のサゲもズバッと決まった秀作でありました。 *** 落語 ミニ情報 其の参 『粗忽長屋』について *** ・粗忽という言葉、現在、あまりポピュラーな言葉ではありませんが、そそっかしい人。おっちょこちょい。落ち着いて考えないで、軽々しく行動する人のことです。 ・この『粗忽長屋』という噺の原話は、寛政年間に出版された『絵本噺山科』の一遍「水の月」とされています。この噺を改作した噺として、『永代橋』という噺があります。これは、東京の隅田川に掛かる、永代橋が深川の祭礼に向う人の重みで落ちた事故を題材にしています。今ではあまり演じられません。題材が良く似ている噺としては、『紺屋高尾』と『幾代餅』という噺もあります。 ・『粗忽長屋』は、人間国宝の五代目柳家小さん師匠の十八番でした。「この噺は、滑稽な噺の中では一番難しい」と、三代目小さん師匠が言っていたと四代目小さん師匠から伺ったとの芸談が残っています。筋立てが単純であまりにも馬鹿馬鹿しいので相当、芸力が要る噺です。今回の鶴二師匠は桂文珍師匠からの口伝だそうです。 中トリは、皆様、よくご存知の桂小枝師匠にお願い致しました。いつまでも若々しい師匠も、キャリア45年で、上方落語協会の理事。いつも通り明るい楽屋から『小枝ブルース』の出囃子でユッタリと「エーーッと」と座布団へ。さっそく小枝ワールドの世界へ。「この前、喫茶店に入って、抹茶アイス、注文したら、オムライスが出てきた」からスタート。羽織の脱ぎ方を紹介して、始まった本題は、師匠の五代目桂文枝師匠も十八番でした『竜宮界龍都・小倉船』の一席。奇想天外で、陽気な噺は小枝師匠の任にピッタリ。随所に尊敬されている五代目文枝師匠を彷彿とさせ、サゲも良く考えられた25分の熱演でありました。 *** 落語 ミニ情報 其の四 『小倉船』について *** ・①、『小倉船』は、上方落語の東の旅に属する噺で、小枝師匠は演じられませんでしたが船中での「考えもん(なぞなぞ)」が聞かせ処となっています。同様の趣向は、『兵庫船』の「謎掛け」や、『矢橋船』の「色問答」などがあります。 ・②、芝居仕立てになっていますので、竜宮城の流れるような言い立ても聴かせ処です。 海底へ着きまして、目を開きますといぅと、朦朧(もぉろぉ)として空晴れわたる隈(くま)もなく、霞にそびえし楼門に大龍王宮の額を上げ、右に紫雲の回廊あり、左に火焔の輪塔あり、七宝七重(しっぽぉななえ)の玉の垣、珊瑚・琥珀の玉簾(たますだれ)。瑪瑙(めのぉ)・瑠璃の鎮(しず)を付け、金銀きらめく庭の砂子(いさご)。さては龍宮界、龍の都でありしやなぁ……。意味が判らなくても耳ざわりが良いですね。 ・③、竜宮の代官の河豚腸(ふぐわた)長安との立ち回りは、忠臣蔵三段目の勘平と鷺坂坂内の掛け合いのパロディ。これは、『質屋芝居』という噺に出てきます。 『質屋芝居』では、 ♪~かかるところへ鷺坂伴内、家来引き連れ出で来たり……。おらが所望のおか坊を、いちゃこちゃなしに渡さばよし、嫌じゃ何ぞとぬかすが最後、からめとろうや返答は?あ、さぁ、さぁ、さささささ、さぁ、勘平返答は何と、なんとぉ~♪ 『小倉船』では、 ♪~かかるところへ河豚腸長安、家来引き連れ出で来たり……。やぁやぁ、偽、浦島ぁ~ッ……♪ うぬが所持なす珊瑚ぉ樹、ごちゃごちゃ無しに渡さばよし、嫌じゃ何ぞとぬかすが最後、からめとろぉや、返答は?あ、さぁ、さぁ、さささささ、さぁ、浦島、返事は何と、なぁ~んとぉ♪ ここで、下座さんが、♪「何と何と」と、詰め寄ったりぃ~。と、入いる。 ここからは、♪~浦島【勘平】プッと吹きん出しぃ~……。むふぅ~、ははぁ~、ふぅふぅ、ははははっ。あ、よいところへ河豚腸長安【鷺坂伴内】。おのれ一匹食い足らねど、この浦島【勘平】が腕の細ねぶか、料理あんばいやってみよえぇ~……。 そして、立ち回りが始まる、見せ場。 中入り後は、月亭八方一門から月亭遊方師匠にご登場頂きます。当席常連・当席大好きの師匠。独特の感性からの自作の創作落語でいつも大爆笑をとっておられる師匠。今回はお弟子さんの月亭喜遊師を伴われての楽屋入り。まずもって、今回も楽屋入りから打ち上げお開きまでハイテンション変わらずの遊方師匠であったことを、まず報告しておきます。 ハイテンションはまず、楽屋から、「ちょっと、久しぶりですよ。長いこと出てません」に、「丁度、2年ぶり」の答え。「僕にとっては長いんです」との会話。そして、中入のシャギリが終わって、『石見』の出囃子と共に、高座へ飛び出される。マクラは同じ会話の東京と大阪のおばちゃんの違い。これが的を得て実に面白い。客席は大いに盛り上がる。そして、本題は、平成16年の自作、『戦え! サンダーマン』。ある遊園地に正義の味方・サンダーマンがやって来た。お客様もちびっ子になり、応援しよう。客席参加型ヒーローショーが始まる。全編、「あるある」の連続。大いに盛り上がった25分の熱演でありました。このテンションは打ち上げまで継続されました。 七月公演のトリは、三代目桂春團治一門の筆頭で上方落語界の大御所・四代目桂福團治師匠。今回は、「新開地・喜楽館」でのトリを終えられ、お弟子の桂福丸師匠を伴われての楽屋入りとなりました。さっそく、楽屋では過去の思い出話から。演題は、前回は昨年の12月だったので、冬の噺の『しじみ売り』。今回は、『南京屋政談』と決定。 いつもの『梅は咲いたか』の名調子で高座へユッタリ登場すると本日一番の拍手が巻き起こる。ここからは、いつもの福團治ワールド。扇子で身体を支えながら、「えー、疲れますやろ。落語もええけど、こんだけ多いと・・・。私も疲れた。五十年やってまっさかいに。休んでますねん。動いてんの、ここ(口の周り)だけや・・・。」このおねおねに客席は、クスクス、そして、大爆笑。しかし、本題が始まると、水を打ったようにシーン。主人公の勘当された若旦那を中心に噺は進み、途中、お涙頂戴のシーンもあり、最後はハッピーエンドのサゲとなり、7月公演はお開きとなりました。楽屋入りから、高座、そして、打ち上げまで、終始、嬉しそうな福團治師匠でありました。 |