もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第489回 もとまち寄席 恋雅亭
 
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 公演日時: 令和元年5月10日(金)      午後6時30分開演
   出演者     演目
  笑福亭 喬 介  「七度狐」
  桂   阿か枝  「大安売り」
  林 家 花 丸  「太鼓腹」
  桂   九 雀  「片棒」
    中入
  林 家 小 染  「親子酒」
  笑福亭 福 笑  「惚れ薬」(主任)
 
   打ち出し 20時50分 
   三味線  勝 正子。
   鳴り物  月亭 秀都。 
   お手伝  笑福亭たま、桂 三ノ助、桂 九ノ一。
 今回は、初の10連休のGW、更に改元と、お忙しい日々が続いた、令和元年5月10日の金曜日に、「令和初席」となる第489回皐月公演として開催させて頂きました。当日は、絶好のポカポカ陽気で、今回も熱心な多くのお客様に開場まで並んで頂きました。
チラシも、「新開地喜楽館」、「よせぴー」や本日の出演者の持込などを中心に机に並びきれない程、多数届き、多くの出演者や、桂梅團治、小梅師匠や、三栄企画の長澤社長などの関係者にも手伝って頂き、いつも通り、いつも以上に手際よくこなし、定刻の5時半に開場となりました。
いつもながら長らく並んで頂いたお客様が、一番太鼓に迎えられ、思い思いの椅子に着席され、席は次第に前の方から埋まっていきました。令和初席は、後方に空席が若干残りましたが、大入りとなり、定刻の6時半に開演となりました。

 その公演のトップは、七代目笑福亭松喬一門の二番弟子で、その独特のキャラで、当席は勿論、各地の落語会で人気爆発の笑福亭喬介師。
 当日は早くから楽屋入りされ、チラシの挟み込みから手伝って頂き、準備万全で『石段』の出囃子で高座へ登場。客席からはトップとしては異例の「待ってました」との掛け声も掛かる。「えー、今から恋雅亭始まりまーす。」と独特の挨拶から始まった高座は、自身がフィリピン人に間違われた実話から。そして、すっと東の旅から『七度狐』の一席がスタート。いかにも落語らしい落語で、場面転換も多く、クスグリ満載のお馴染みの噺です。それに、喬介師の随所に味付けを施すのだから面白くない訳がない。発端の野辺で狐の頭に石が当る処から、サゲの大根抜く処まで、言葉・場面のカットも上手に施され、大いに盛り上がった17分の大爆笑編でありました。

 二つ目は、地元明石出身の桂阿か枝師匠。先代の五代目桂文枝師匠の末弟。末弟と言ってもキャリア23年。五代目師匠の語り口に最も近いお弟子さんであります。
今回も早くから楽屋入りされ、チラシの折込も手伝って頂く。喬介師の客席の反応を確認され、サゲと共に奏でられる、『早禅』の出囃子で高座へ登場。
「ここは自宅から一番近い職場」と紹介して、始まった本題は『大安売り』の一席。この噺、昭和47年にお亡くなりになられた神戸出身の橘ノ圓都師匠によって多くの当時の若手に広まった噺で、軽くトントンと進む展開で聞いていても「それからそれから」とのめり込んでいく噺。その噺を基本に忠実に先代の文枝師匠の教育よろしくキッチリと演じられた秀作でありました。

***  落語ミニ情報 其の壱 このネタ、前は、いつ出たかなぁ ***
 当席は事前に演題を明らかにしません。これにより、その日の出演者全員で一つの物語を演じるとか、お客様や今日の客席の雰囲気に応じた高座になる、真剣勝負の高座になる、とか色々な要素があります。反面、演者にとっては、緊張する部分でもあります。
今回も楽屋で何を演じるかを演者さんが悩まれていたようです。そこで、今回の演題が以前いつ演じられたかを調べてみました。口演が新しい順に紹介します。なお、トリの福笑師匠の『惚れ薬』は当席初演です。 【敬称略】
・32公演ぶり。『七度狐』。 平成28年9月・第457回に桂紅雀 演。
・46公演ぶり。『片棒』。  平成27年7月・第443回に桂わかば 演。
・46公演ぶり。『親子酒』。 平成27年7月・第443回に笑福亭岐代松 演。
・74公演ぶり。『大安売り』。平成25年3月・第415回に桂ひろば 演。
・92公演ぶり。『太鼓腹』。 平成23年9月・第397回に桂文華 演。

 三つ目は、林家染丸一門から林家花丸師匠。平成3年入門でキャリア28年。上方落語界の大の宝塚ファンとしても有名。勿論、落語も数多くの受賞暦のある当席常連の逸材。
今回も満面の笑みで楽屋で談笑され、『ダアク』の小粋な出囃子で高座へ
「えー、続きまして花丸の方でお付き合いを願っておきます。言っておきますけど、阿か枝さんの着物を借りて出てるのではございません(着物の色が良く似ていたため)。似ているのは縦縞なところで、あっ、これからは横縞な人が出てまいります。(客席に笑いに)怖いわお客さん、性格ちゃいまっせ、着物の柄」と挨拶。「噺家も増えまして・・・。」と、弟子入りに来たけったいな男の話。東北大学出身で西日本高速道路を辞めて弟子入り。弟子を辞めて就職した先は東日本高速道路。思わず「内はインターチャンジか!」。そして、ご自身の入門当初の失敗談を紹介し客席の笑いを集める。林家伝統の「はんなり・もっちゃり」をベースに、芸名そのままに花の有る高座スタイル。
男芸者、幇間(ほうかん)、幇間持ち、遊郭などで、男が男を遊ばせる最も難しく芸の力が必要となる職業で、落語の登場人物としてはメジャーな幇間が若旦那の無理難題に苦慮し、大爆笑を誘うことになる『太鼓腹』の一席がスタート。約22分の高座は爆笑の連続であったことは言うまでもありません。

*** 落語ミニ情報 其の弐 林家一門について ***
現在の林家は、初代染丸以降、ちょっと途切れていたのを、五代目笑福亭松喬師匠が二代目林家染丸を襲名され、再スタート。その弟子が、三代目染丸と三代目染語楼師匠。三代目染丸師匠の弟子が、四代目小染、四代目染丸となります。三代目染語楼師匠の弟子が、当席でもお馴染みだった林家市染、後の四代目染語楼師匠でその弟子が現在の林家市楼師匠です。四代目小染師匠は落語の名手として将来を嘱望されていましたが、若くしてお亡くなりになられた「おこりないなぁ」の小染師匠。マスコミでは、「ザ・パンダ(小染・八方・きん枝・文珍)」としても大活躍でした。その弟子が、今席にご出演の五代目林家小染師匠。林家花丸師匠は四代目染丸師匠の弟子となります。
・二代目染 丸→三代目染 丸→四代目小 染→五代目小 染→染 八。
                    →四代目染 丸→染二、そめすけ、うさぎ、花丸、・・・・。
         →三代目染語楼→四代目染語楼→市 楼。

 中トリは、桂枝雀一門から桂九雀師匠にお願い致しました。
今回はお弟子さんの桂九ノ一師を伴われての楽屋入り。前回のご出演が平成28年の10月ですから、30ケ月ぶりの出演となります。『楽しやな』の出囃子で高座へ登場。「えー、決してヨコシマな男ではございません。」と、花丸師匠のフリを笑いで返される。ここらが、真剣勝負の当席の面白い処。そして、先月の10日に新開地・喜楽館で会をしてお客さんから怒られ、「二度と10日にはしません。」とお詫びしたこと。入門当時は落語をする処がなかったのに、同じ日に多くの会場で落語を演じられるありがたさ。二ヶ月ぶりの仕事をアルバイトが忙しいと断ったと、つないで、始まった本題は、『片棒』の一席。ケチな父親が、その財産を相続することになる浪費家の三人兄弟に、「自分の葬式?」を問いかける。その答えに一喜一憂する父親が九雀師匠の口跡の良さで面白さが爆発する25分の口演でお仲入りとなりました。

 中入後は、五代目林家小染師匠。客席の反応から、本日の演題(ネタ)を検討され、「よっしゃ、今日は『親子酒』」と、お馴染みの「ちゃかちゃんりん」の『たぬき』の名調子に乗って満面の笑みで高座へ。ここで、ちょっとしたハプニング。お茶子さんが、小拍子を帯に指したままだったので、見台に乗っていない。あわてて用意され座布団におっちん。「えー、別に置いてくれんでも、私が直接、帯から取ったのに・・・」。この一言で客席は大爆笑。一気に小染ワールド全開。マクラの酔っ払いの表情で拍手。「酒飲みはこの顔で、シャックリしまんねん」と、シャックリ。ここでも大爆笑。そして、酒の小咄から『親子酒』が始まる。全編、先代譲りの「酒の小染」の本領発揮の秀作。一言、一動作、に客席が波を打つように笑いが広がった秀作でありました。余談ですが、この勢いは打ち上げお開きまで継続でした。

 さて、皐月公演のトリは、上方落語界大御所・創作落語の鉄人・笑福亭福笑師匠。今席も愛弟子の笑福亭たま師匠もお手伝いとして来席されました。出番まで実に仲良く落語談義。『佃くずし』の出囃子で登場されると客席から本日一番の拍手が起こる。「えー、ありがとうございます・・・。」から、「福笑流時事放談」がスタート。多額の申告漏れの堺市長、それを応援した枝野さんの応援責任、名前も知らず応援した田中真紀子さん、など、爆笑マクラが続いた後、始まった本題は、自作の創作落語『惚れ薬』の一席。倒産した会社の友人が持ってきた惚れ薬を使って・・・。いつもと同じコメントですが、師匠の創作落語を紙面で表現するのは・・・。
大いに盛り上がった「令和初席・恋雅亭」は、お開きとなりました。