もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第477回 もとまち寄席 恋雅亭
     平成6年入門同期会
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 公演日時: 平成30年5月10日(木)      午後6時30分開演
   出演者     演目
  林 家 菊 丸  「青菜」
  桂   米 紫  「宗論」
  桂   文 鹿  「さわやか健康ランド」
  桂   かい枝  「三十石」
    中入
  桂   吉 弥  「風邪うどん」
  桂   春 蝶  「ねずみ」(主任)
 
   打ち出し 21時20分 
   三味線  勝 正子。  
   鳴り物  桂 紋四郎。
   お手伝   桂 三ノ助、桂 鹿えもん、桂 弥っこ、桂 雪鹿、桂 弥壱。
 今回は、平成30年5月第477回・『もとまち寄席 恋雅亭 平成6年入門同期会』を開催させて頂きました。4月11日の前売り開始後、月末までに予定枚数を完売と、前景気は絶好調。
 当日はやや肌寒い気温でしたが、五月晴れとなりました。ただし、会場はお客様と演者の熱気で空調を効かせても暑い状況でした。前景気通り、早くから(一番乗りは12時半、4時前には約30名)多くのお客様に開場まで並んで頂きました。当日券もアッと言う間の完売。
 さらにチラシの数は、出演者の持ち込みも多く、過去最高水準。挟み手もいつも以上、桂梅團治夫妻や三栄企画の長澤社長をはじめ出演者・関係者、総動員で5時前から実施。手際よくこなしたのだが、何しろ量が多く、開場の定刻の5時半には完了せず、木戸の横で挟み込みを継続。
 いつもながら長らく並んで頂いたお客様が、一番太鼓に迎えられ、思い思いの椅子に着席。その後のお客様の出足は絶好調で、当日のお客様は一旦、ストップ。着到(二番太鼓)の頃には、長椅子を扉近くまで並べ、なんとか待って頂いた当日券のお客様の席も確保した大入満席となりました。
 そして、定刻の5時半。当初からの計画で出番順は事前には決定せず、当日、楽屋で協議。あみだくじと言う意見もあったが、じゃんけんでとなりました。桂吉弥師匠は朝日放送出演中の為、開演には間に合わなかったため、残りの5師匠が出囃子で、着物姿で高座へ登場。客席からは大喝采が巻き起こりました。桂春蝶師匠の司会で吉弥師匠は不参加だったので、中入りカブリとして、勝った師匠からトリ、一番負けた師匠がトップとの趣旨説明をして、順番決めのじゃんけんがスタート。まず、春蝶師匠が勝ってトリ。「えー、早よう帰ろ思とったのに」と言いながら実に嬉しそう。次の菊丸師匠が負けて、トップ。「贅沢なトップ。繁昌亭大賞なのに」。「華のある二人。残ったきたない三人」との米紫師匠の発言にかい枝師匠が突っ込む。その米紫師匠が負けて二つ目。最後にかい枝師匠が文鹿師匠に勝って中トリ、文鹿師匠の三つ目と決定。ここまでで、客席の盛り上がりは最高潮。
 ただし楽屋は大変。ご存知の通りネタには色々種類があり、出番によって演じるネタが変わってきます。それぞれが出番にあわせてネタの思案が始まりました。
 一番困られたのが菊丸師匠。全員が楽屋へ引っ込むと同時に、いつものトップの出囃子の『石段』ではなく『鎧付け』が鳴り、トップからトリまでが全て、キャリア25年選手の同期会がスタート。四代目林家染丸師匠門下の染弥から平成25年に三代目林家菊丸を襲名(当席では、平成27年3月・第439回襲名記念公演を開催)された林家菊丸師匠がトップとして客席中の大きな拍手に迎えられ高座へ登場。なにしろ、ネタを検討する時間がない。しかし、そこはベテランで落ち着いたもので、鉄板のツカミの碁盤の上で落語を披露した時の情景を小咄にして笑いをとってから、初夏の噺として染丸師匠直伝の『青菜』がスタート。楽屋で、「これからも、師匠に教えてもらった通りに演じます。」と、おっしゃっておられたが、お馴染みの噺を、ハショルこともなく本寸法でキッチリと演じられ、難しいトップの重責を見事に果たされ、お後と交代となりました。
 二つ目は桂米紫師匠。桂都丸時代の現、桂塩鯛師匠に入門し桂都んぼ。都んぼを経て、平成22年に四代目桂米紫を襲名。当席では、平成23年6月・第394回襲名記念公演を開催。米朝・ざこば・塩鯛の各師匠連の教えを土台に笑顔一杯の爆笑高座は今回も健在で、『猫じゃ』の出囃子で満面の笑みで高座へ登場。
 マクラは本日の若手会? について。「若手、言っても、全員もう25年でっせ。会社やったら管理職。噺家は若手。原因が判りました・・・。上が死なない。」から、この前、頼まれて落語会に行って「落語、上手いな。普段は何してはるの?」と言われたと、客席の笑いを誘って始まった本題は『宗論』の一席。じゃんけんの時、米紫師匠は、「難しいなぁ。出番とネタ。それと、過去に出てる噺、ここは、年間で70位、出てるからなぁ」と、おっしゃっておられたが、大正期に益田太郎冠者によって作られた創作落語をチョイス。宗教対立の親子のトンチンカンな言い争いが骨子なので、演者の工夫や他の師匠の工夫を随所に入れ易い噺。米紫師匠も十八番として発端から全速力。出番も今回のメンバーの当席では何時もの位置とあって、水を得た魚の様にノビノビと演じられる。まさしく狙い済ました噺で、随所に大爆笑が巻き起こった大満足・大爆笑・大熱演の20分でありました。

 三つ目は、桂文福門下の桂文鹿師匠。入門しちゃん好。平成16年に、地元奈良の鹿から桂文鹿と改名され、憧れの大師匠五代目桂文枝仕込の古典落語や、独自の切り口の自作創作落語を大柄な体格と親しみやすく飾らない口調で大活躍中の師匠であります。
 その文鹿師匠、『キューピー』の出囃子で高座へ登場され、「この間、東京の国立演芸場に呼んで頂きましてん。「前夜、空いてますか?」「空いてます。」と芝浦の料亭・牡丹へ呼んでもらった時のエピソードをマクラとして紹介。宿泊代の足しにと頂いた祝儀を有効利用しようとする苦心談を紹介。最後はカプセルホテルへたどり着くマクラ。これが大受け。友達と喋っているような口調なのだが、お客様には失礼に当らない何とも言えないほのぼのした高座。当席の辛口常連もベタほめ。そして、そのマクラの延長戦とも言える本題、『さわやか健康ランド』がスタート。これが又、大受け。楽屋もこの受け方に袖は鈴なりで、全員が肩で笑っておられる。
 東京の健康ランドのサウナで知り合ったヤクザ風の兄ちゃんや隣り合った露天風呂の敷居越しに聞こえてくる会話で得た大阪のベッピンさんとネタ振り。その後、偶然、ビアホールでベッピンさんと同席。気を良くして勘定は全部持つことになるのだが、「連れも呼んでいい?」「勿論」と応えて現れた連れ・・・。大爆笑のサゲとなりました。

 中トリは、地元神戸市在住故五代目桂文枝師匠門下の桂かい枝師匠。古典落語+創作落語、そして、英語落語と大活躍中の、いかにも上方らしい派手・陽気・賑やかな高座で大活躍中の師匠、『三枚弾き』の出囃子で高座へ登場し当席へは、師匠(五代目文枝)の追っかけをしていた時に、「良く通った」との思い出から、「今日は英語落語をと思いまして、英語で小咄をやって客席の反応で決めます。」と英語でも小咄、『美術館にて』を。客席は大爆笑だったのですが、「では本日は日本語で」。ここでも客席大爆笑。さらに、「飛行機でイライラ防止用にだされる飴ちゃんの効く時間は?」「風呂も備わった高級飛行機の行き先は?」と、実に間の良い小咄の後、始まった本題は、師匠の文枝師匠も十八番だった『三十石』の一席。
 多くの名人上手の名演が耳に残る噺を、基本に忠実に、かい枝流にアレンジを加えた熱演。
伏見寺田屋の浜からの船出した船はお女中の瞑想にふけるお馴染みのクダリも有りで舟唄を楽屋の同期の合いの手も入った舟唄をタップリ」聞かせて、「三十石は夢の通い路、お中入りでございます。」と、中入トリの気分の良い挨拶のかい枝師匠でありました。

 中入りカブリは桂吉弥師匠。故桂吉朝師匠に入門。当席でお茶子などでご協力頂いています、神戸大学落語研究会出身【27代。芸名は甲家(かぶとや)ラッパ。ちなみに現在は54代】で当席とは非常に馴染みがあり、落語は元よりマスコミで大活躍されておられるノリノリの師匠であります。
 楽屋へ到着されるなり、高座袖で同期の噺と客席の反応を注目。満を持して『真室川音頭』の出囃子で高座へ。出身の神戸大学落語研究会の話題。さらに、「暑いでしょ。係りの人に言ったら『これが限界』と、言われましてん。どうぞ、扇いで下さい。」からマクラがスタート。当席で、ざこば師匠の『天災』で立てないほど大笑いした想い出。吉朝師匠に入門後にざこば師匠にその事を伝えると、「ほんなら、なんで、わしの処に来えへんねや!(入門しないのか)」とキッチリネタになっています。出身地の茨木の高台の団地を紹介し、印象に残っている「移動販売車」から流れるテーマソングを紹介と流れを作られ、「落語の方で最も有名な売り声は、うどん屋さん・・・。」と、師匠直伝で師弟とも十八番の『風邪うどん』の一席がスタート。
 ほのぼのとした噺と美味しそうにうどんを食べる見事な仕草、そして、「あっ」と思わず笑みがこぼれるサゲとなりました。第一声からサゲまで、随所に大爆笑が巻き起こった名演でありました。

*** 吉弥師匠話題の大爆笑ざこば師匠口演 ***
 マクラで登場しました、ざこば師匠の『天災』の口演について調べてみました。
その公演は、吉弥師匠が入門される4年前の平成2年10月11~13日に開催されました『開席150回記念公演 中日』 での口演に間違い有りません。
・『ふぐ鍋』桂雀司(現:文我)/『青空散髪』林家市染(故・四代目染語楼)/『袈裟茶屋』笑福亭 松枝/『天災』桂ざこば/中入/『言葉アラカルト』笑福亭鶴瓶/『お玉牛』桂春之助(現:四代目春團治)/『大丸屋騒動』桂小文枝(故・五代目文枝)。

 トリは、桂春蝶師匠。故三代目桂春團治師匠に入門し春菜から平成21年に三代目桂春蝶を襲名。さらに、恋雅亭同人会の二代目世話人としても大活躍の師匠であります。
『新鍛冶屋』の出囃子で高座へ。「春蝶と言う名前は三代目。四、五代と続くようにするには、世界で一番有名な三代目のやった通りにするのが近道。」ネットの三代目ドットコムで第一位を調べたら、「載ってました、キムジョンウンと」。客席は大爆笑。さらに、当席の想い出としていつも家にはゴーフルがあった、父親が良くもらってきてくれたからと紹介。さらに。昔は豪快な噺家が多かったと「月亭可朝師匠の野球賭博事件」や、子供の頃連れて行ってもらった雀荘での「鶴瓶師匠、国士無双事件」で笑いをとって始まった本題は『ねずみ』の一席。
 この噺、一連の『竹の水仙』、『三井の大黒』、『叩き蟹』などの名工左甚五郎の逸話を題材とした噺。落語の『ねずみ』は、上方出身の異色の浪曲師の広沢菊春師匠が十八番として演じられていた落語浪曲(出囃子に乗って座布団の上に正座し浪曲を落語風にアレンジしたり落語を浪曲風にアレンジしたもの)を意気投合した東京の『芝浜の三木助』の三代目桂三木助師匠が脚色して昭和31年7月に落語として初演されたもの。
 上方へは先代桂歌之助師匠が舞台を仙台から岡山に移して東京から里帰りさせ、岡山にゆかりのある桂梅團治師匠が十八番として演じられている大爆笑落語です。
 発端の少年(宿屋の息子)に口説かれて汚い「ねずみ屋」なる宿屋に泊まった甚五郎が主人と息子のために一肌脱ぎ、最後はハッピーエンドになる。涙あり、笑いありの日本人の最も好きなパターンのストーリー。その噺をご自身の工夫満載に演じられた師匠も客席も大満足な半時間の好演で、9時20分に「お時間~~」となりました。
 その後、場所を変えて出演者全員出席の打ち上げが、お店の閉店時間まで続きました。

*** 当席での襲名記念公演 ***
 本日の出演者の師匠連で三師匠が当席で襲名記念公演を開催されておられます。
『春菜改め 三代目桂春蝶襲名記念公演』 平成21年11月10日 【第375回公演】
・『田楽喰い』桂佐ん吉/『あみだ池』笑福亭銀瓶/『お忘れ物承り所』桂春駒/『所帯念仏』笑福亭福笑/中入/『襲名披露口上』春蝶・福笑・春駒・銀瓶/『山内一豊と千代』桂春蝶。
『都丸改め 四代目桂塩鯛、都んぼ改め 四代目桂米紫襲名記念公演』平成23年6月10日 【第394回公演】・『兵庫船』とま都改め桂小鯛/『代脈』さん都改め桂鯛蔵/『厩火事』桂ざこば/『佐々木裁き』都んぼ改め四代目桂米紫/中入/『ご挨拶』塩鯛・米紫・ざこば・鯛蔵・小鯛・松枝【司会】/『鯛』都丸改め四代目桂塩鯛。
『染弥改め 三代目林家菊丸襲名記念公演』平成27年3月10日【第439回公演】
・『子ほめ』林家愛染/『山内一豊と千代』桂春蝶/『てれすこ』笑福亭三喬/『百年目』桂福團治/中入/『記念口上』菊丸・福團治・染丸・三喬・春蝶【司会】/『絵噺』林家染丸・林家愛染/『吉野狐』染弥改め 三代目林家菊丸。

*** 開席300回記念公演の春蝶・吉弥師匠 ***
平成15年8月9、10日に開催されました、300回記念公演に両師匠がご出演されています。
・第1部・『軽業』桂吉弥/『野ざらし』桂坊枝/『子ほめ』露の團六/『抜け雀』桂米朝(故人)/中入/『対談』桂米朝&笑福亭鶴瓶/『タクシー奇談』林家染語楼(故人)/『宮戸川』笑福亭鶴瓶。
・第2部・『四人癖』桂つく枝(現・文三)/『遊山船』林家小染/『遺言』桂雀々/『京の茶漬』桂文枝(故人)/中入/『対談』桂文枝&桂雀々/『めざせ甲子園』笑福亭仁智/『宗悦殺し』露の五郎(故・五郎兵衛)。
・第3部・『野崎詣り』桂春菜(現・春蝶)/『始末の極意』笑福亭三喬(現・松喬)/『きけんなオンナたち』桂あやめ/『代書屋』桂春團治(故人)/中入/『対談』桂春團治&桂 あやめ/『青菜』桂春駒(故人)/『壷算』 笑福亭仁鶴。