もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第433回 
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 公演日時: 平成26年9月10日(水)      午後6時30分開演
   出演者     演目
  桂   吉 坊  「寄合酒」
  桂   かい枝  「堪忍袋」   
  笑福亭 達 瓶  「ちゃめ八」
  桂   文 我  「古事記」
    中入
  桂   三 象  「お忘れ物承り書」
  笑福亭 仁 智  「目指せ甲子園」(主任)

   打出し  21時05分
   お囃子  入谷 和女、勝 正子
   お手伝  桂 三ノ助、笑福亭智六、笑福亭智丸、笑福亭大智
平成二十六年九月十日、「二度有ることは三度有る」。先月、先々月同様に台風出現となりました。ただし今回は遥か太平洋南を通過。影響なく当日は好天に恵まれる。ただし、ムシムシとした湿度も高く、客席は前の方はクーラーの効きも悪い。
前売り券を若干枚残して、当日を迎えました。お客様の出足はいつも通りで、先乗りとなった、かい枝師匠の情報では三時半には約十名様が列を作られる。
今回も机に並びきれない程のいつも以上のチラシの量、文我師匠や挟み込みだけに応援にお越し頂いた梅團治師匠にも手伝って頂いて一丸となって人海戦術で手際よくこなして開場に間に合わしました。
開場は定刻の五時半。早くから並ばれたお客様から次々とパンフレットに一杯挟み込まれたチラシを持って景気の良い一番太鼓に迎えられてご入場され、思い思いの席を確保されました。
最初はやや鈍い出足でありましたが、席は次々と埋まっていき、着到(二番太鼓)がなる頃には客席一杯の大入満席の状態となりました。
今席のトップは、故桂吉朝一門から桂吉坊師。全国各地の落語会で真面目に落語に、歌舞伎などの古典芸能にも造詣が深い、皆様お馴染み逸材。当席へはスケジュールの都合で久々の出演となりました。早くから楽屋入りして大張きりで、ネタ帳を見ながら演目を思案され、『石段』の出囃子で高座への登場となりました。
袖からニコッと笑顔で登場するとトップバッターであるにもかかわらず、拍手と歓声が起こる。
もっとも、平成十一年入門でキャリア十五年の吉坊師がトップ、キャリア二十年のかい枝師が二つ目とはもったいない出番組であります。
「ありがとうございます。大勢のお客様で大入りでございまして、只今から開演でございます。まずは私、吉坊の方で・・・。」とのあいさつすると、客席から大きな拍手。「ありがとうございます。挨拶だけでこんな拍手もらえたらこれで終わっても・・・。」と、嬉しそうにお礼を述べて、携帯電話の注意から、出身地の西宮、酒(小学校の社会科見学は酒造メーカー。もちろん、利き酒はなし)、米朝一門の夜を徹しての酒宴の話題から本題の『寄合酒』の一席がスタート。
この噺は色々な部分を足したり引いたりすることが可能な噺で間違うと間延びしたり物足りなかったりする難しい噺。その噺を色々な登場人物が吉坊師の明るさと口跡の良さ、よく通る声、さらに、一門の自分の持ち場を良く理解しての行儀の良い時間配分など、申し分のない好演で客席は大爆笑の連続。十八分の高座は客席も演者も大満足でありました。
この噺、原話は寛永五年(1628年)の笑話本『醒睡笑』の一遍の「児の噂」とあります。『寄合酒』は代々の桂春團治師匠の得意ネタで、東京へも移され多くの演じ手がいるおなじみの噺です。

二つ目は地元神戸在住・先代桂文枝一門から桂かい枝師。この師も師匠の天性の明るさで全世界を飛び歩いての活躍はご存知の通り。今回も大好きな当席。二つ目もバッチリです。と、案内
しましたが、その通りで、忙しい中、早くから楽屋入りされ、『三枚引き』の踊りだすような出囃子に乗って鮮やかな薄いピンクの紋付き袴姿で登場。紋は良く観るとかい枝師の似顔絵の三つ柏。
「えー、ありがとうございます・・・。」と、あいさつから「今日は英語落語にしようか迷っています。」と、「試しに」と、英語での小咄「初めての手術」。客席の想像以上の無反応に「あきらめました」と、今度は日本語で披露すると、大受け。
続いて、「天然の妻」を紹介。喉の手術で声の出ない友人のお見舞い。友人が「声が出ないので筆談で」と、紙に書くと、妻は紙に「お大事に」と書く。友人は紙に「奥さんは喋っていいよ」。
「まだ、一部の方は判っておられないようですが・・・」と、始まった本題は『堪忍袋』。
発端から大声で元気一杯の高座は大受けの連続。この噺は元々、東京の噺でありますが、上方では鶴瓶師匠が袋がいっぱいになってから主人公宅をたずねた商家の嫁が「クソババア、死ね!!」と絶叫した時点で袋が満タンになり、病の身であるその姑の番で袋がはじけて、姑が袋の中に入っていた嫁の「クソババア、死ね!!」を聴いた途端に元気を取り戻す、工夫された演出で、よりお笑いの多い噺に仕上られ、多くの演者がいる噺。かい枝師は明るい、明るい演出に自身の工夫の演出をプラスしての好演。仕草、言葉使い、意外性のある愚痴のそれぞれのクスグリに場内は大爆笑に包まれ、大いに盛り上がった二十二分の高座でありました。

かい枝師のHPの文書を拝借(一部割愛)しました。昨日は夕方中日新聞さんの「人欄」の取材を受け、そのまま神戸元町の風月堂ホールの第433回元町寄席恋雅亭へ。昭和53年から36年間続く老舗の地域寄席。学生時代、僕もよく師匠のおっかけでお邪魔しました。憧れて見てた舞台に自分が出させてもうてるって、めちゃくちゃ幸せですよね。ネタ帳見てもすごいです!第一回はモタレが先代春蝶師匠トリが六代目、二回目はモタレ仁鶴師匠にトリがうちの師匠。第六回目(?)は、トップ鶴瓶師匠モタレ先代小染師匠、トリがうちの師匠。ネタ帳見てるだけで上方落語の歴史がわかる。ネタ出しない会なので、当日ネタ帳見て決めるのは結構ドキドキします。

三つ目は笑福亭鶴瓶一門の四番弟子の笑福亭達瓶師匠にご登場願いました。
一門一のイケメンで何時までも若々しく現代的なセンスでファンの多い師匠。今回も一門のホームグランドの当席で大はりきりで、『三下り米洗い』で、高座へ登場。マクラも振らずに「おてかけさん」の説明から始まった本題は、師匠十八番(おはこ)の『茶目八』。
この噺、上方では先代三代目林家染丸、二代目桂枝雀の両師匠をはじめ現在も多くの噺家諸師が口演されています。東京では『王子の幇間』として『昭和の名人』八代目桂文楽師匠の十八番である幇間持ちが主人公の噺でありますが、どちらかと言うと珍しい部類の噺となっています。
原作は明治初期、東京で大活躍した初代三遊亭円遊師匠作とされていますが、詳しくは薄学の小生としては存じ上げません。ええ加減な幇間をこらしめてやろうと、最初は乗せて、駆け落ちを持ちかけその気にさせて、これもあれもと荷物を持たす無理難題を持ちかけるおめかけさん。それに苦悩する幇間をいかにも軽く、師匠自身の持ち味を最大限生かし、滑稽に演じた二十二分の秀作でありました。

中トリは故桂枝雀一門から四代目桂文我師匠に久々、ご出演頂きます。
昭和五十四年三月入門。平成七年、四代目桂文我を襲名された、一門、上方落語界の重鎮です。当席には三代目の文我師匠もご出演でしたのでご存知のお客様も多いことでしょう。
先代同様、『せり』の出囃子で高座へ。
「えー、ここ(恋雅亭)はネタを出しておりませんので、何を演(や)ってもええ訳で、今日は天に関わる噺を・・・。」と、前振り。
勉強不足の小生などは、一瞬、『鰻屋』から『月宮殿星の都』かと思ったが、一瞬にして打ち砕かれる。『月宮殿』には、日本書紀は出てこない。
本日の演題は当席では勿論、初お目見え。ほとんどのお客様が初めて聴かれるであろう『古事記
』の一席。聴いたことのある神様の名前がどんどん出てくる。名前は知っているが内容は知らない。もちろん、知らない神様の名前も。そして、「古事記の話かな」と思うと一転、現代の話題へと、話はどんどん変化。師匠曰く、三重県松坂の有名人では一番の逸材の文我師匠の舌の元、客席を後方から見ていると揺れ動くお客様の様子が秀作の証明。半時間強の口演は、「大国主命(オオクニヌシノミコト)」が登場する前で、「これからが面白い・・・。」と、お中入りとなりました。

中入後のカブリは、六世桂文枝一門から、桂三象師匠。当席ではいつも高座へ登場と同時に大爆笑の師匠。今回も姿形(すがたかたち)と師匠直伝の創作落語で大爆笑請け合いです。
『芸者ワルツ』の出囃子で高座へ顔を見せるだけでそのとぼけて、何とも言えない暖かさを感じさせる風貌に会場からは「クスクス」と笑いが沸き立つように起こる。
いつもの爆笑マクラはいつも通り大爆笑に包まれる。
 本日の本題は三枝師匠の創作落語の『お忘れ物承り所』。三象師匠も十八番の一席であります。六世文枝一門を中心に演じ手の多い噺ですが、内容は演者の個性でポイントの置き方で七変化。引き続き本題も爆笑の連続。この師匠はマクラから本題に入る時の落差がない、実にスムーズ。
原作をベースにご自身の工夫を随所に入り、さらにその風貌のおかしさに客席は大爆笑が連続して起こる。いつもながら大受け、風貌で得している、愛嬌タップリの三象師匠の二十分の熱演でありました。
ちなみに三枝師匠のHPによるとこの噺は、昭和五十八年十二月初演で四十四作目。今から二十八年前とは思えない、みずみずしくホンワカとした秀作で、題材はどこにでもあるような、駅の忘れ物の承り所でのスケッチ落語。


そして、八月公演のトリは、上方落語界の重鎮・創作落語の鉄人こと笑福亭仁智師匠にとって頂くことになりました。すっかり板に付いた感ののある『六段くずし』の出囃子で高座へ登場すると、本日一番の拍手が起こる。
「えー、てな訳でございまして・・・。」と、いつものように、ホンワカマクラが始まる。ちょうど、佳境だった、阪神巨人戦で「えらいことになっています」と、興味を誘ってストンと落とす。
 プロ野球の中継アナウンサーの特徴を誇張して笑いを誘ったり、夏の高校野球のテーマソングの「ああ栄冠は君に輝く」の一番を熱唱。続いて二番、途中で自ら「誰が止めるねん」と、突っ込む。
実に楽しそうにマクラが進んで、始まった本題は『目指せ甲子園』の一席。師匠自作で、実に良く考えられた十八番ネタであります。今回も絶好調でツボツボで客席が揺れ動いた秀作でありました。
・・・・・・・・・仁智師匠と当席・・・・・・・・・・・・
師匠と当席のつながりは深い。
開席当初から、明るくて、どの位置でもピッタリな師匠は、笑クリエイト社の楠本社長の出番組にはなくてはならない逸材でした。阪神大震災前の数年は年に3~4回の出演でありました。
楠本社長がお亡くなりになり、同人会が結成されてからも、世話人の故春駒師匠と同期の縁もあって、ほぼ年に一度の間隔で出演されて爆笑創作落語を演じて頂いています。

433回『目指せ甲子園』、415回『兄貴の頭』、403回『多事争論』、389回『ハードラック』、376回『源太と兄貴・純情編』、363回『源太と兄貴』、351回『EBI』、336回『川柳は心の憂さの吹き溜まり』、325回『トクさん・トメさん』、316回『スタディベースボール』、300回『目指せ甲子園』、286回『ハードラック』、264回『アイスクリーム』、250回『アフリカ探検』、244回『川柳は心の憂さの吹き溜まり』、228回『目指せ甲子園』、210回『健康居酒屋DHA』、199回『掛取り』。