もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第428回 
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 公演日時: 平成26年4月10日(木)      午後6時30分開演
   出演者     演目
  桂   雀 太  「商売根問」
  露の  吉 次  「私がパパよ」   
  笑福亭 鶴 二  「隣の桜」
  桂   春 若  「三十石」
    中入
  林家  小 染  「猫の災難」
  笑福亭 福 笑  「便利屋さん」(主任)

   打出し  21時05分
   お囃子  林家和女
すっかり暖かくなって神戸の桜も満開のピークからやや下り坂の四月十日、もとまち寄席恋雅亭『第428回公演』が開催されました。
消費税疲れもあったのか、前売券もちょい残りで当日を迎えました。
出演者にも手伝って頂いてスムーズな開場のための準備を進め、チラシの挟み込みを実施。
いつもながらの人海戦術で望むも若干の人手不足。手際よくこなして開場に間に合わす。
定刻の五時半に開場となり、いつもながら早くから並ばれたお客様が次々とパンプレットに一杯挟
み込まれたチラシを持って景気の良い一番太鼓に迎えられてご入場される。
最初はやや低調だったお客様の出足も着到(二番太鼓)の入り頃には、後方にやや空席の残こり
ましたが、大入り満席となり、定刻の六時半、『石段』の出囃子でトップバッターの桂雀太師の登場
で開演となりました。

トップの桂雀太師は、平成十四年、桂雀三郎師匠の三番弟子として入門。今回、キャリア十年
で当席、初出演となりました。
師匠の教えを忠実に守った明るく、元気一杯、そして、基本に忠実。各地で開催される落語会で
大活躍中の逸材です。
「えー、・・・聞き間違いとか思い込みとかがよく有ります」と、「あべのハルカスのマリオットホテル
をマリオネットホテル。」などと紹介して、客席を暖めて始まった本題は、前座噺の定番の『商売根
問』の一席。
『雀』、『鶯』、そして、『河童(かっぱ)』を捕まえにいっての失敗談を、持ち前の口跡の良さとネタ繰
りと本番の多さが物語る落ち着きのある行儀の良い口演で客席を爆笑に誘った、待ち時間をキ
ッチリ守った十五分の名演でありました。
大阪や奈良では河童(かっぱ)のことを河太郎(がたろ)との呼び名があるので、この噺でも「がた
ろ」で登場します。「がたろ」は落語好きな皆様は『代書屋』の主人公の職業でお馴染みです。
胸の処まであるゴム長靴で「河川に埋没したる廃品を回収し生計を立てる」商売です。
昭和三十年代までは実在した商売だそうです。
上方落語家でもこの名前は出てきます。当席へもご出演され、この『商売根問』も十八番でした、
三代目桂文我師匠が、三代目を昭和四十三年に襲名する前まで、桂我太呂(がたろ)として高座
を努められておられました。

二つ目は露の五郎兵衛一門から露の吉次師が久々の登場となりました。
『かんちろりん』のコミュカルな出囃子に乗って、ニコニコ笑顔一杯で高座へ登場。
「えー、私も若こう見えてますけど五十を超えまして・・・」と、第一声。これだけで、客席全体がホン
ワカムードに包まれる。マクラは超高齢で授かった子供の話題。これが実話だから面白い。
本題は、六世文枝(三枝時代)師匠が平成十四年に創作された『私がパパよ』の一席。
昨今、高齢出産のお母さんも多く、同い年の子供のお母さんの年の差は話題になりますが、当
然、お父さんも同じで、学校行事での出来事は笑いを誘います。
さらに、吉次師匠のように半分以上が実話となれば、面白さも倍増。
マクラでの実体験と符号するような内容に吉次師匠もノリノリの大爆笑の二十分強の好演であり
ました。

三つ目は六代目笑福亭松鶴一門の末弟、笑福亭鶴二師匠。
末弟と言っても昭和六十一年入門ですからもうキャリア二十八年。三味線や日本舞踊もこなす勉
強家で、今回も早くから楽屋入り。
口演予定のネタと過去のネタ帳、本日出演者の顔ぶれとを入念にチェックし、ネタをこの時期に必
ず演じられる桜を扱った噺の『隣の桜(鼻ねじ)』と決定。
お囃子を和女嬢と打合せし『独楽』の出囃子に乗って満面の笑みで高座へ登場。
「えー、・・・。私も四十七になりまして(客席からクスクス笑い)、何がおかしいんですか。これでも
若い時は『上方落語界の中井喜一』と・・・(客席は今度は大爆笑)。」
爆笑マクラは続き、狙い済ましたような爆笑を誘って本題へ突入。季節感ピッタリな内容と、笑福
亭ならではの豪快な噺の進め方と、日本舞踊の素養を匂わせるようなしなやかな所作が相まって
全編、爆笑の連続。サゲもピッタリ決まってお後と交代になりました。

中トリは上方落語界の大御所・桂春若師匠が久々のご出演をお願い致しました。
春若師匠は昭和四十五年入門で、昨年末、惜しくもお亡くなりになられました、当席の大恩人の桂
春駒師匠の一つ上の兄弟子に当たります。
同期には、桂南光、桂米輔、お亡くなりになられました桂米太郎、笑福亭松葉の師匠連がおられ
ます。
楽屋入りするなり、上方四天王を初め多くの先輩師匠連から口伝された多くの噺の中から何を演
じるかネタ帳をご覧になり、「『天狗裁き』と思ったが出てるし・・・」。鶴二師匠が「師匠、『天王寺詣
り』」。「それ、君(鶴二師)が演(や)りいなぁ。同じ六代目師匠の演(や)ってはった『三十石』にしょ
う。これ、若い頃に先代文枝師匠に京名所からキッチリ教わって、最後、ちょっと工夫したんや」
と、ネタが決定。
『供奴』の出囃子に乗って高座へ登場すると、「噺家が多過ぎます。六人位やったらここに毎月出
れるのに・・・。私ら長いことやってますのでもうこれしか出来ません。若い連中もやめません
ね・・・。」から、私の方は人のやらないちょっと捻った小噺をやって本題に入ります。と、断って、切
り口の面白い小噺を・・・。「一つ空席のワールドカップ」「ムカデの名サッカー選手」などなど。
そして、始まった本題は上方落語の大物『三十石は夢の通い路』。
この噺のセットとして、「船に籠、馬、汽車、電車・・・、地下鉄」の変遷から、伏見の浜から噺がスタ
ート。船宿、船乗り込み、出帆、そして、船中の出来事、聴かせどころの船歌もタップリ入って、早
朝の農家の唄を紹介して半時間の好演はお仲入となりました。

中入後のカブリは、当席常連の五代目林家小染師匠です。先代同様、酒の噺は明るくてほん
わか芸風で先代の十八番は勿論、当代独自の演題と持ちネタは多彩。
今回も早くから楽屋入りして準備万全。「こんど、繁盛亭や道楽亭で中トリを努めますねん。大変
でおま。」と、コテコテの大阪弁で嬉しそうに語り、前後のバランスを考えて本日のネタを十八番の
酒の噺、『猫の災難』と決め、軽快なチャカチャンリンチャンリンの『たぬき』の出囃子に乗って満面
の笑みで高座へ登場し、座布団におっちん。
座布団の色と着物色が一緒だったので、「なんか、座布団から生えてるようで」と笑いを誘って、酒
の小噺から本題がスタート。
先代の師匠とは血縁関係はないのだが、おかしなもので益々先代師匠とよく似て、明るくもっちゃ
りしてきた感の当代小染師匠。十八番のお酒の噺をご自身の酒好きとあって、最初、ほんのり、
半ば、いい気分、最後、グデグデと見事な好演。二十三分、客席に爆笑が巻き起こり続けたカブリ
の小染師匠でありました。

そして、三月公演のトリは上方落語界の爆笑王・笑福亭福笑師匠にとって頂くことになりまし
た。いつも明るく、切れ味鋭く、はちゃめちゃのイメージですが、実は細かく考え抜かれ、それを感
じさせない爆笑創作落語を演じて頂く師匠。
過去、大爆笑の連続でした。今回も大爆笑は◎です。『佃くずし』の出囃子で待ち焦がれたように、
高座へ飛び出される。客席は待ってましたとばかりに本日一番の拍手が巻き起こる。
マクラはおなじみの「福笑世情を斬る」とでも言うべき昨今の話題。「マレーシア航空行方不明」、
「小保方晴子さんとスタッフ細胞」、「腹の立つ理研」、「猪瀬直樹は五千万で略式起訴、渡辺喜美
は八億でどうなる」、などなど、次々、新鮮な話題のマクラが続く。
パワー全開で小拍子を客席まで飛ばすハプニングも客席を大爆笑に誘って、始まった本題は自
作の創作落語『便利屋さん』。
高額な時間給を貰っての仕事は「危険物の取扱い業務」。いつもながらの奇抜な設定とパワー溢
れる熱演半時間超。客席はいつも以上にピートUPでお開きとなりました。