もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第401回 
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 公演日時: 平成24年1月10日(火)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 桂   しん吉  「明石飛脚」
 林家  染 弥  「読書の時間」   
 桂    珍  念  「ふぐ鍋」
 笑福亭  仁 喬  「くっしゃみ講釈」
   中入
 桂   九  雀  「どろぶん」    
 桂   文  珍  「憧れの養老院 」

   打出し  21時10分
   お囃子  林家和女、勝 正子。
   手伝い  桂三ノ助、桂 紋四郎、笑福亭嬌太。
 寒さもちょっと和らいだ間のある一月十日。十日戎の当日。神戸柳原や西宮神社が賑わいを見せる中、新しいスタートとなります第四百一回もとまち寄席恋雅亭の開催となりました。
 前景気も大爆発で、前売券は二日で完売。さらに、当日券を求められるお客様からの電話もひっきりなしにかかり当日を迎えました。当日の一番乗りのお客様は二時。さらに次から次へとご来場されるお客様で、列はどんどん長くなっていきました。寒さが和らいだとはいえ、長く並んで頂いたお客様には大変申し訳ないことでごさいます。一杯届いたチラシの折込を人海戦術でこなして定刻の五時半に開場となりました。恒例の「三代目春團治師匠のカレンダー」も配られる中、次から次へとご来場されるお客様で、席は次々に埋っていき六時には満席となり、定刻の六時半に「第四百一回もとまち寄席恋雅亭・新春初席公演」の開演を迎えました。
 『十日戎』の出囃子で元気一杯に吉朝一門のイケメン・桂しん吉師が登場。
『あけましておめでとうございます』と、初席ならではの挨拶から、ご自身の鉄道おたくをマクラに笑いを誘う。私は乗るのが好きなので「のりてつ」、梅団治師匠は撮るのが好きなので「とりてつ」、模型を作る人を「もてつ」そして、上品にお電車(おでん車)と呼ぶ人を「かねてつ」。大阪から東京へ行くのにわざわざ新潟経由で行って切符が売り切れと言われた。会場を大いに暖めて始まった演題は『明石飛脚』の一席。当席のHPを研究され四百回の公演でまだ、一度も演じられていない狙いすましたような一席、それもご当地落語。大阪から明石まで手紙を届ける噺だが、お囃子もふんだんに入っていかにも初席に相応しい演題。サゲを言って、『まだ、あります!』。これには会場は大爆笑。続いて、『雪隠(せっちん)飛脚』、そして、『うわばみ飛脚』、場内も演者も軽快な『韋駄天』のお囃子でノリノリ。次を期待されるお客様をすかすように『もう、おまへん』と客席からの大爆笑と拍手で締めくくった十八分の爆笑大当り高座でありました。

 二つ目は『万歳くずし』の出囃子で染丸一門から林家染弥師の登場となりました。
三重県での高校時代の同窓会の話題、担任の体育の先生が熱血漢が行き過ぎて教育実習生を傷つけてしまった失敗談をマクラで紹介して始まった本題は『読書の時間』。
 三枝師匠が平成十六年十二月に初演された創作落語で、一門をはじめ東京の噺家諸師も数多く手がけられる実によく出来た秀作であります。最近の学生は本を読まなくなったため設けられた読書の授業。各人が持ってきた本と作者の読み間違いで爆笑を誘った後、『竜馬が行く』を読むことになったのだが、この本が表紙と内容が大違い。大爆笑を巻き起こした二十分の高座は三枝師匠の原作をベースに、ご自身の工夫も入った秀作でありました。

 三つ目は『ずぼらん』という一風変わった名前の出囃子に乗って愛くるしい笑顔一杯のトリの文珍一門の桂珍念師の登場。
 高座へ顔を見せるだけでいつものように客席はほんわかムードに包まれる。『えー、場内割れんばかりの拍手(文書では表現できませんがこの言い回しだけで客席は大爆笑)・・・続きまして登場しました私は文珍門下の二番弟子の桂珍念と申します』と、いつものフレーズで挨拶し、『笑うということは良いことでナチュラルキラー細胞が出来て、これが癌などに効く』と紹介。『ただし、笑うと病気になりませんが、笑い過ぎると病気やと思われます』、これには天井が抜けるほどの大受け。そして、季節感ピッタリの『ふぐ鍋』の一席。「ふぐ」のことを「てつ」と言う謎解きを簡単にして本題がスタート。主人公が大橋さんであったので林家一門からの口伝。いかにも上方落語らしい、もっちゃりした演出と師匠の芸風がピッタリマッチし、客席は爆笑の連続に包まれる。
 サゲもピッタリ決まった当席ではいつも大当たりの二十分の秀作でありました。

 中トリは仁鶴一門からキャリア三十五年の笑福亭仁嬌師匠。
楽屋入りされた師匠は懐かしそうに昔のネタ帳を見ながら『長いこと出してもろてませんわ、五年ぶりですわ』『ここは、楽屋へ来てネタ帳見んとあかんかったですよ。最近はHPでネタ(演題)載ってるので助かりますわ。けど、今日のネタ次第ですけど・・・』と、楽しそうに談笑。『ぼんち可愛い』の出囃子で童顔を笑顔一杯にして高座へ登場。『えー、久しぶりでございます。五年ぶりで・・・』と挨拶して、最近は師匠と呼ばれるようになりましたが、値打ちのない師匠で、この間も『師匠、そこのぞうきん取って』に、思わず『はい』と返事をしましたと紹介して、一方、講談は先生と呼ばれますと、紹介して始まった本題は師匠直伝で笑福亭のお家芸の『くっしゃみ講釈』の一席。
 発端から爆笑の連続で、山場の講釈師の登場から講釈のくだりでその爆笑はさらに増幅される。なんとも楽しく心から笑える二十五分の好演でありました。

 中入りカブリは枝雀一門から桂九雀師匠、早くから楽屋入りし長身に着物姿でうろうろ。
『楽しやな』の出囃子で高座へ登場、『えー後半戦、後、二席でございます。トリの文珍師匠をお楽しみに・・・』と挨拶から、『昨今は落語ブームですが、昔、私が入門した頃は落語会は少なく一ヶ月の予告は2ページ位で収まる程でアルバイトをよくしてました』。吉朝兄さんから『九雀、心配するな、今は食われへんけど、五年したら食えるようになる』『えー、売れるんですか?』『いや、食べる量が減るんや』実にいい兄さんでとの逸話で大爆笑をとり、さらに、素人さんに落語を教えた時の逸話でさらに爆笑を増幅させて、始まった本題は、泥棒文化学院、略して『どろぶん』。
 泥棒の種類を紹介するクダリでは客席から拍手が起こり実に口慣れた口演で、さらに、サゲも一年中使えるサゲで大いに盛り上がった九雀師匠でした。

 そして、平成24年の新春初席のトリはご存知、桂文珍師匠。
今回も早くから楽屋入りされ、楽屋内で談笑したり、高座の様子を袖でお聞きになったりと気合も十分。下りてこられた九雀師匠と『ええサゲやね、いつでも使える、実技試験』と言葉を交わされて、『円馬囃子』のドッシリとした出囃子に乗って高座へ登場。客席からは本日一番の拍手と『待ってました』と掛け声もかかる。
 ここで、ちょっとしたハプニンング。お茶子さんが小拍子を置き忘れる、『小拍子がないよ』との師匠の催促にあわててお茶子さんが登場すると客席は大爆笑。「ポン」と叩いてお囃子を止め『えーありがとうございます。お寒むうございますので、ご来場頂きまして、関係者一同感涙の涙にむせんでおります。』と、挨拶から『大阪は福娘、西宮は福男、ただ走ってるだけ・・・』。「戎さん」の小咄。『昔からある小咄です、今日しか出来ないネタ』。さらに、「平田容疑者の自首」「郵便を受け取るために自分を証明する難しさ」「スマートフォン、機能が一杯付いているので今日わからん」「阪神電車での奇妙な人との遭遇」「紅白歌合戦」「北島三郎コンサート」、昨今の話題を楽しそうに、客席は爆笑の連続。師匠もお客様もノリノリでマクラはどんどん長くなる。
 本題はいつの間に始まったかと思わせるような流れるような展開で、『憧れの養老院』がスタート。老夫婦の憧れの養老院とは冷暖房・三食完備で家賃0の場所=刑務所。入るために銀行強盗を試みるも失敗して逆に感謝状まで頂く事になる奇想天外な展開に客席は波を打つように笑いの輪が広がる。九雀師匠のクスグリも入っての四十五分の大爆笑編でありました。

 お客様の送り出しは初席ならではのシコロ。帰路に就かれるお客様は景気の囃子に送られて大満足な様子でありました。
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 文珍師匠には、この一週間後に阪神大震災が発生しました、平成七年一月の第201回公演から必ず毎年一回、トリでご出演頂いております。ちょっとご紹介いたします。
・201回(初席)『たいこ腹』 ・214回(6月)『天狗裁き』 ・225回(5月)『らくだ』
・233回(初席)『七段目』 ・247回(3月)『宿屋仇』 ・257回(初席)『星野屋』
・269回(初席)『はてなの茶碗』 ・283回(3月)『軒付け』 ・293回(初席)『胴乱の幸助』
・305回(初席)『三枚起請』 ・317回(初席)『七度狐』 ・329回(初席)『御神酒徳利』
・341回(初席)『天神山』 ・355回(3月)『百年目』 ・366回(2月)『粗忽長屋』
・378回(2月)『高津の富』 ・390回(2月)『猿後家』 ・401回(初席)『憧れの養老院』