もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第396回 
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 公演日時: 平成23年 8月10日(水)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 笑福亭 鉄 瓶  「あみだ池」
 桂   福 矢  「打飼盗人」   
 月亭  遊 方  「虚礼困惑騒動」
 桂  小春團治  「旅する小説家」
   中入
 桂   楽 珍  「鍬潟」    
 月亭  八 方  「AKO47 新説赤穂義士伝」

   打出し  21時10分
   お囃子  勝 正子
   手伝い  桂 三之助。桂 治門、月亭天使。
  平成二十三年開催の七公演も全公演大入りとなり、今回は猛暑の八月公演を迎えました。
猛暑、節電の影響を受けながらも、前景気も絶好調で開催日までには前売り券も完売となり、開催当日の猛暑の水曜日を迎えました。猛暑の中、今席も出足好調で多くのお客様に列を作って頂きました。出来るだけ涼しいようにと階段に詰めてもらって並んで頂きましたが、それでも多くのお客様にご迷惑をお掛け致しました。今回も各地で開催される折込チラシは非常に多く人海戦術で折込。完了と同時、定刻の五時半開場となり、ゆっくりゆっくりお客様に、ご入場頂き、席は次々埋まっていき、開演の六時半には今席も満席となりました。

 客席と同様に演者さんの楽屋入りも早く、開演までにはトリの八方師匠を除いて到着され、二番太鼓に続いて、定刻の六時半に八月公演のトップバッターの当席初出演となります笑福亭鶴瓶一門の十二番弟子の笑福亭鉄瓶師が『石段』の出囃子に乗って登場となりました。
 鉄瓶師匠は平成十三年二月入門のキャリア十年。各地の落語会で活躍すると共にエアギター選手権関西大会で二位など音楽好きを生かして多方面で活躍中ですが、「本業はやはり落語」と本筋を忘れない逸材であります。「えー、お暑い中一杯のお運びで・・・・、私、はつしゅしゅつえん(初出演)となります・・・」と、つかみもバッチリ決まって、最近はネットで情報が何でも入手出来る話題へ。「よく『てつびん』さんと呼ばれますし、ネットで検索する時は、売れてないので私の名前だけは笑福亭から入れない南部鉄瓶ばかりが出てきます・・・。
 昔は情報は新聞が一番でして・・・」。と、始まった本題は爆笑上方落語の本命、『あみだ池』の一席。元気一杯の高座は、基本X個性X工夫が掛け合わされ、3乗に増幅され、場内は爆笑の連続。お客様も演者自身も大満足な高座となって、下りてこられた鉄瓶師匠は汗を拭いながら「ありがとうございました。よう受けました。けど、暑かった」との感想でありました。

 二つ目は福團治一門から平成六年入門でキャリア十七年の桂福矢師。
平成十四年に初登場以来、師匠の教えを忠実に守った行儀のよい高座には定評があり、今回で四度目のご出演となる当席常連です。髪の毛もセットもきちっり決まって『楽隊』の出囃子で高座へ登場。あいさつから、盗まれた自分の自転車に乗った別嬪のお姉さんに偶然に遭遇した話題で笑いをとって、「昔の盗人は釘一本で侵入したそうで・・・」と、『打飼盗人』の一席がスタート。この噺、登場人物は盗人と長屋の住人の二人。登場人物も少なく、二人の会話のキャッチボール(間・テンポ)で、笑いをとる力のいる噺と言えます。その噺をキッチリ・カッチリとこなし、ポイントでは爆笑が起こる汗ビッショリの大熱演。高座を終えた福矢師、「よう笑ってもらえた、うれしいです、けど暑い」とペットボトルを飲み干された。

 題名の「打飼」とは、木綿製の筒状の底のない腹巻袋で食糧や金銭などの貴重品を入れ腰に巻きつけた袋。東京で演じられる『夏どろ』は大正末期に、この噺を初代柳家小はん師匠が移植されたそうであります。
 この噺は福矢師からすると、高祖父、祖祖父に当る初代・二代目の春團治師匠の十八番の噺で、特に二代目春團治師匠の『打飼盗人』は、「ABC春團治十三夜第五夜【19511年12月11日放送】」として、当時としては画期的なお客様の前での公開で演じられ録音テープに収録され、笑い声もタップリ入った約半時間の長講として放送されました。
 9月にはビクターレコードからCD6枚組みとして発売されます。
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 三つ目は、トリの八方一門から月亭遊方師匠。
いつまでも若々しい現代っ子の師匠、今回も自作の創作落語の中から選りすぐりの一席とネタを選定され、ネタが付かないことを確認して準備万全で、『岩見』の出囃子で高座へ。
 「えー、いつも、一杯のお客様で大好きな恋雅亭でございまして・・・」と挨拶から爆笑マクラがスタート。「繁昌亭ではよく『待ってました』と声が掛かります。私も掛かりましたが、そのお客様が緊張のあまりにかまれたので『まててて』」。「トリで出ますと『タップリ』と声も掛かります。私もこの間、掛かりました、『シッカリ』」。会場は拍手と爆笑に包まれる。「よく、師匠、師匠と言われますが、あれは名前を忘れただけ」と、遊方ワールド全開。そして、プリントだけの年賀状や部長への接待、酒の注ぎ方など、『虚礼』を紹介して始まった本題は自作の創作落語『虚礼困惑騒動』。お世辞にも美味しいと言えない先輩の自家製の豚足饅頭がお歳暮として送られてくる。犬もそっぽを向くまずさ。お愛想のつもりで「美味しい」と言ってしまったために巻く起こる大爆笑落語。転宅したので、ホッとしたのもつかの間、今度は宅配で豚足饅頭が届く。ついに地元では全く売れずに閉店したので、藁にも縋りたい気持ちでとった先輩の奇策とは?
 虚礼とは辞書によれば「形式だけの礼」「うわべだけの礼儀」と記され、物を貰うと嬉しいですが、中には嬉しくないこともしばしばで、身近にもある切れ味鋭い二十五分の秀作でありました。

 中トリは春團治一門の貴公子こと、桂小春團治師匠にとって頂きます。
当席へは前名の小春時代から数多く出演され、多くの爆笑創作落語を演じて頂いている師匠で、今回も暑さを吹き飛ばす爆笑落語を演じるべく『小春團治囃子』に乗って高座へ登場。マクラですぐ小春團治の世界へ会場を引き込んで、本題の平成十年十月十七日「桂小春團治独演会」にて初演の『旅する小説家』がスタート。
 師匠のHPを引用しますと、今までの海外公演での経験を新作落語に反映させ、訪れた外国の町の様子を作品に織り込んだ。編集者の立花は世界をまたにかける主人公の活躍を描くスパイ小説の大家、俊徳道先生の担当になるが、口述筆記で書き進める俊徳道は、小説の主人公とは裏腹に、飛行機嫌いで外国に行ったこともない。書斎だけの知識で大阪の下町を歩きながら、あたかもパリにいるかのように街を描写していく。とのことでした。「百聞は一見にしかず」、会場が大爆笑に包まれた半時間の熱演は、いつも通り大受けの連続でお仲入りとなりました。

 中入り後は、文珍一門から徳之島のスター・桂楽珍師匠。
『ワイド節』のイメージピッタリな出囃子で高座へ登場し、「えー後半戦で、私の後、お目当ての八方師匠。『早く下りろ』との視線を浴びております。(場内から『そんなことないで』と声が掛かる)」。落語好きの方の川柳として、「出来るなら早送りしたいこの落語」「びっくりしたこんな人でもプロなんだ」を紹介して、さらに家族の高座を観ての感想は「肥え過すぎ」「何キロある」「見苦しい」と紹介すると、場内は一段と大きな笑いが起こる。マクラの間、何とも言えない暖かさを感じさせる高座に浸わせて一段と恰幅も良くなった師匠、ご自身も相撲の道を目指そうと思われたらしいが、体重十分だが髷が結えず断念された逸話のある、「えー、今日は相撲のお噂を・・・」と十八番の相撲の噺を息子さんが横綱朝青竜関の付き人で朝山下の四股名で相撲をとっていたことを紹介して『鍬潟』の一席がスタートする。
 場内からはツボツボで大爆笑が起こる。マクラがタップリだったので、導入部分をトントンと進めての二十五分の熱演でありました。

 そして、トリは上方落語界の重鎮・月亭八方師匠にお願い致しました。
マスコミで大忙しの師匠ですが当席へは年一度のペースでご出演頂いております。
無地で品の良い色合いの袴姿で『夫婦万才』で登場すると、「ありがたいことでございます。年に一回、こちらには出さして頂いておりますが、いつも一杯のお客様でございまして、神戸ではここしか出んことにしてます。もっとも最近、暇でんねん」と、当席への熱い思いを盛り込んだあいさつから、あまり遠くへ行くのは、特に飛行機は怖いとのマクラからいつもの八方噺がスタート。
 本日の演題は、十月十五日になんばグランド花月での「月亭八方落語誘笑会パート1」で口演予定の自作の創作落語『AKO47〜新説赤穂義士伝〜』の一席。ちなみにもう一席は『たばこの火』。「AKB48と赤穂義士のパロディーで、生モノですからお早めに」と紹介して、赤穂浪士四十七士が吉良上野介を討つための“センターの座”をめぐり選挙をするという、アイドルグループ・AKB48を意識した内容。随所に散りばめられた師匠の工夫、パロディ満載の噺に場内は爆笑の連続。サゲもズバッツと決まった秀作でありました。口演後の師匠は、「いつも、ええお客様や、今日の反応、やり取りは参考になりますねん。まだまだ、面白い噺に膨らませまっせ」との感想でありました。
大盛り上がりの八月盛夏公演は無事、お開きとなりました。