もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第395回 
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 公演日時: 平成23年 7月10日(日)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 桂   雀五郎  「黄金の大黒」
 桂   出 丸  「牛ほめ」   
 笑福亭 竹 林  「近日息子」
 桂   枝三郎  「転宅」
   中入
 桂   あやめ  「雑俳」    
 桂   雀三郎  「蛇含草」

   打出し  20時55分
   お囃子  林家和女、勝 正子
   手伝い  桂 三之助。
  平成二十三年開催の六公演も全公演大入りとなり、折り返しの七月公演を迎えました。
二回続いた「襲名公演」や猛暑の影響もなく、前景気も絶好調で開催日までには前売り券も完売となり、開催当日の猛暑の日曜日を迎えました。猛暑の中、今席も出足好調で多くのお客様に列を作って頂きました。出来るだけ涼しいようにと階段に詰めてもらって並んで頂きましたが、それでも多くのお客様にご迷惑をお掛け致しました。各地で開催される折込チラシ数を人海戦術で折込。完了と同時に定刻に開場となり、ゆっくりゆっくりお客様に、ご入場頂き、席は次々埋まっていき、開演の六時半には満席となりました。客席と同様に演者さんの楽屋入りも早く、開演までには到着。

 二番太鼓に続いて、定刻の六時半に七月公演のトップバッターのトリの雀三郎一門の二番弟子で、平成12年入門、今年でキャリア11年目、当席は二度目の出演となられる桂雀五郎師が『石段』の出囃子で高座へ登場して開演となりました。
  「えー、ありがとうございます。只今より開演でございまして・・・・。」のあいさつから、「三月裏、八月裏、釜一つ裏」と長屋の紹介から、始まった演題は『黄金の大黒』。キッチリした土台の上に自身の工夫をたっぷり盛り込んだ一席は、雀五郎師の明るさが登場人物と一致して発端から爆笑の連続。時間の関係で大黒さんの登場はなかったが、宴会のクダリで盛り上がって十五分の口演となりました。

 二つ目はざこば一門から桂出丸師の登場。芸名でもお判かりのように、現、桂ざこば師匠が朝丸時代の昭和六十年八月に入門であります。
 『せつほんかいな』の軽妙な出囃子に乗って高座へ「えー、続きまして出丸(でまる)のほうで」、名ビラを見ながら「横に書いてあるとよく丸出(まるだし)と呼ばれます」のあいさつから、初舞台の苦心談の「前半はざこば師匠口調、後半は米朝師匠口調のなんともちぐはぐな『子ほめ』」で大きな笑いをとって、マクラを本題に上手くつなげ「人間、付け焼刃は剥げやすい」から本日の出し物『牛ほめ』の一席が始まる。この噺、上方落語の定番とも言える噺で、池田への旅(旅ネタ)、二人の会話(根問物)の二つの要素がタップリ入っています。
 師匠譲りの明るい語り口と米朝一門の伝統を受け継いだ正当な演出で、滑舌も噺の運びも基本に忠実。そこにご自身の工夫が満載でポイント、ポイントで会場は爆笑に包まれた爆笑高座、サゲもサラリと決まった二十分で構成もバッチリでありました。

 三つ目には笑福亭一門から笑福亭竹林師匠。
『山羊の郵便屋さん』の出囃子で高座へ登場し、「えー、続きましてこんな胡散臭いのが出てきてごめんね」とあいさつ。この独特の芸風で客席は爆笑に包まれる。
 マクラは、東日本大震災の慰問落語会。やや引いた感のある客席に対して「今、このムードでは落語に入れませんので話題を変えて」と小咄。「電子ジャーでご飯を炊いたら爆発した、作ったのがかやくご飯。」この小咄で客席は拍手喝采と大爆笑に一変する。「落語に入ってもええかなぁ」と再び笑いを誘って「とりあえず、元気のええ処を聴いて頂きます」と豪放磊落の笑福亭のお家芸ともいえる『近日息子』の一席がスタート。実に見事なものであります。
 この噺の原点は、二代目桂春團治師匠で、その後、故露の五郎兵衛師匠と、故六代目笑福亭松鶴師匠へ伝えられています。笑福亭では、鶴光、福笑、呂鶴、鶴志の師匠連が十八番として演じられています(いずれも、元気よく押していく演じ方であります)。竹林師のそれも、押して押して押す演じ方。特に近所の人が集って、お悔やみの相談をする場面での元気の良さは、他の師匠以上でありましたし、場内もそれに応えての大爆笑に包まれた二十五分の熱演高座でありました。ちなみに、この噺は竹林師匠の新人賞受賞作品です。

 中トリは三枝一門から「枝さん」こと桂枝三郎師匠にとって頂きます。
当席へは前名の三太時代から数多く出演され今回は初の中トリ。「今日は中トリでタップリとね」との投げかけに「へ、へ、ちょっぴり」と笑いながら『二上がり中の舞』に乗って登場。
 「えー、私が終わりますとお待ちかねの仲入りでございまして・・・」と、爆笑枝さんワールドがスタート。「えー、今日は言えませんが明日、発表される大きなニュース、今日は言えませんが・・・」と、翌日のビッグニュースとはもう皆様ご存知の「桂三枝六代文枝を来年襲名!」でした。さらに、最近の話題を枝三郎風に、落語を演っても、コマーシャルの影響で「こんにちわに、ありがとうさぎ」になる。道で片足踏み出すと「ジュー」と焼けるように暑い、次は「ニジュー」、「サンジュー」。大いに客席を沸かして、始まった演題は、『転宅』。この噺、東京では多くの演じ手のいるお馴染みの噺ですが、上方ではお耳新しい噺であります。その噺を純上方風に、さらに、手の内に入った演目なので、随所に本日の演題のフレーズを(このわた、まるきの黒パン)盛り込み会場の爆笑を誘いながらご自身も楽しみながら噺は進展していく。
 サゲも上方風に変えての好演はマクラ込みで二十五分。客席も演者も大満足なうちにお仲入りとなりました。

 中入り後、祈が入って名調『あやめ浴衣』の出囃子に乗って、文枝一門から地元出身の
女流・桂あやめ師匠が登場すると、本日一番の拍手が起こる。「えー、一杯のお客様でありがとうございます・・・。」から始まった。マクラは今年小学校三年生の愛嬢の話題。 やっとのことで覚えた九九は、問題が出ると「いんいにがいち、いんにがに・・・」と大変。漢字の練習は、「校」を二十回書くのは、「木」「?」「八」「X」と分けて、「どんより」を使っての文書では「用意、ドンより先に走ってはいけない」。「きつねうどんよりそばがすき」など大爆笑のマクラが大爆発で、始まった演題は新作落語の春風亭柳昇師匠の十八番の古典落語だった『雑俳』。
 その噺をあやめ嬢は現代版にリメイクした演出になっています。
新聞の勧誘をしている現代っ子の姪に「和歌敷島の道」を教える叔父さんの会話が爆笑を誘う。随所に盛り込まれたクスグリが面白いように爆発して、成程、お見事と言いたくなる好演で、サゲも見事にズバリ決まった爆笑高座でありました。

 そして、トリは枝雀一門から「雀さん」こと桂雀三郎師匠にお願い致しました。
古典&創作、何でも来いの師匠です。何が飛び出すか楽しみにされておられる客席の拍手とハイテンポな『じんじろ』の出囃子で高座へ登場。「私、もう一席でございまして、この後は、掃除と椅子の片付けでして、よろしければお手伝いを・・・。」とのあいさつから、真夏の落語会(トタン屋根の冷房のない体育館で八月の午後二時から開かれた黒幕を引き回した怪談噺の会)で倒れ掛かった話題で笑いをとって、「真夏のお噂で」と、始まった演題は枝雀師匠直伝の『蛇含草』の一席。
 この噺、季節は真夏。暑さの表現は師匠譲りで実にオーバーな演出となって、冬の食べ物の代表の餅の大食いとなる。枝雀師匠同様に食い意地の張った主人公の行儀の悪さに腹を立て、餅箱一杯の餅を食べさすことになり、餅の曲食いの演出でも大爆笑をさそい、三百の餅を二つ残して家へ帰ってのお馴染みのサゲとなり、場内の大きな拍手の中、七月公演はお開きとなりました。
 東京ではこの噺、『そば清』として蕎麦の大食いの噺ですが、上方では、やはり餅。
昔は町内や家中集まって総出で餅をつき、丸餅を作ったものですが、最近はそういう習慣もなくなったようで、スーパーで買ってくることが多くなったようです。さらに、日持ちがするということでのパック詰めは意外と美味しく日持ちのする商品です。 しかし、時たま和菓子屋さんの店先で丸餅などを見かけると、昔の年の瀬がよみがえりますね、だいぶ歳をとったのでしょうか?・・・。