もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第384回 
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 公演日時: 平成22年 8月10日(火)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 桂   吉 坊  「月並丁稚」
 桂   かい枝  「うしみつタクシー」
 林家  小 染  「試し酒」
 桂   文 也  「宿屋仇」
  中入
 桂   あやめ  「コンパ大作戦」
 桂   雀 々  「船弁慶」(主任)

   打出し  21時15分
   お囃子  林家 和女、勝 正子
   お手伝い 桂 優々、鈴々

 平成二十二年八月の第384回恋雅亭・八月公演の当日はまさしく夏本番の陽気。
前景気も絶好調で、前売券も完売。熱心なお客様はいつも以上に早くから列を作られる。いつもながら長時間並んでいただくには申し訳ないことであります。今回もいつも以上に一杯で届いたチラシを人海戦術で折込を行い開場を迎える。
 一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていき、定刻の六時半には数名の立ち見も発生した満席で開演を迎えました。

 今公演のトップバッターは吉朝一門から桂吉坊師で、師匠から受け継いだ落語への前向きな取り組みと古典芸能への勉強で腕もメキメキ上達の当席の推奨株。これで当席へ吉朝一門は、五月公演のしん吉、よね吉、佐ん吉、吉坊、そして、九月のあさ吉師まで連続出演となります。
 その吉坊師。早くから楽屋入りして、楽屋の準備で大活躍。『石段』の出囃子に乗って満員の客席の拍手に迎えられて高座へ登場し「えー、ありがとうございます。一杯のお運びでございまして・・・。なんかお茶汲み人形みたいな。私、こう見えましても、どう見えてるか判りませんが・・・。二年前にも出していただきまして、その時と外見は変わっておりません」とツカミもバッチリで昔の子供の仕事を紹介して『月並丁稚』が始まる。
 若さ一杯の師にピッタリな噺で、口上を忘れた丁稚さんがお尻をひねってもらって必至に思い出す姿に場内は爆笑の連続。サゲにも工夫をこらした十五分のいつもながらの行儀の良い高座であった。ガンガン飛ばすように演じ、吉坊師の口演も大いに笑いが起こったことは言うまでもない。
再演を大いに期待したい達者な十五分の高座であった。

 二つ目は、文枝一門から桂かい枝師。
日本の世界に日本の落語の魅力を伝えたいと、97年より、英語落語海外公演を200回以上も開催すると同時に。創作落語にも工夫を加えられて爆笑ものを今回も演じられるべく『粟餅』の出囃子で高座へ登場。「えー、どうもどうも、いやいや、沢山おいででごいざいまして・・・。年配の方は市役所での生存確認は・・・(場内爆笑)」。さらに「高校野球も盛り上がっておりますが」と、暑いうえに顔にペイントはせないかんし、応援も、さらに、入場料は安いけど、寄付金が。と、比較論で「ええのは恋雅亭」と、爆笑マクラ。続いて夏場は涼しくなる怖い噺と、「昔の名人は冷房もない昔、話術で震え上がったとの記録も残っております。私もこの間、寄席で怖い噺をやってみましたら、客席で寒そうにされてますので、俺も腕上げたと思って後で聞いたら冷房が壊れてました」「怖いテレビを観てまして、怖い声なのでボリウムを下げたら画面にカタカナでオンリョウ」。
 そして、新幹線で遭遇した怖い噺から始まった本題は『うしみつタクシー』。気味悪いタクシーに乗ってしまった男が味逢う恐怖が爆笑に変わる秀作。
そして、「あっ」と言うサゲとなる再演を期待したい秀作であった。

 三つ目は林家一門から林家小染師匠。
この師匠も当席常連で持ち前の笑顔でもっちゃり繰り広げられる上方落語はいつも爆笑の連続。今回もお馴染みの『たぬき』の出囃子で高座へ登場。暑い中を来席へのお礼を述べて、熱中症への注意から、老人パワー溢れるカラオケ大会の司会者をやった時の爆笑エピソード。そして、始まったのは十八番の酒の噺。
 小咄の『酒飲みの親子』から本題の『試し酒』。五升の酒を飲むことになった男が実に楽しそうに美味しそうに酒を飲む姿に会場からは拍手喝采が波のように起こる。「なんと」と思われるサゲもズバリ決まった先代、当代と二代続く「酒の小染」の本領発揮の秀作であった。
 この『試し酒』、古典の匂いのする噺だが落語研究家の今村信雄氏が昭和初期にものした新作です。ところが、この噺には筋がそっくりな先行作がありまして、明治の英国人落語家・初代快楽亭ブラック師匠のが『英国の落話(おとしばなし)』で、主人公が英国連隊の兵卒ジョンで、日本酒ではなくビールになって、サゲも同趣向です。さらに、中国唐時代の『笑話』にも同パターンがあるそうです。種工いる以外、まったく同じです。初演は七代目三笑亭可楽師匠でその演出を戦後、五代目柳家小さん師匠が磨き上げ多くに演じ手に伝承されています。

 中トリは、当席では久々となる文枝一門の大番頭・桂文也師匠にお願いし文也ワールド全開でサゲまで大いにタップリ演じるべく『五条橋』の出囃子に乗って高座へ登場。
 久々の出演を話題に笑いを誘って、「私が入門で上方の噺家が五十人になりまして、三十七年経って勘定したら上から三十七番目、十三人しか死んでへん。高齢化です」と、笑いを誘って始まった本題は文枝師匠直伝の『宿屋仇』。
 上方落語の主人公の喜六と清八の二人。これに輪をかけたような威勢のいい、臆病な、お調子者の源兵衛の登場でこの噺が大いに盛り上がるお馴染みの噺。お囃子も充分に入ってサゲまでタップリ半時間。名演でありました。
 この噺の舞台は、宿屋が多かった日本橋(にっぽんばし)東側の道頓堀北岸。ちなみに淀屋橋の大川町繰り広げられるのは『高津の富』です。

 中入りカブリは、地元神戸出身の女流で当席常連の桂あやめ師匠に華やかに艶やかに揚げやかにタップリ頂きます。何が飛び出すか?お楽しみに。とご紹介したが、『あやめ浴衣』の名調子で高座へ登場すると、会場全体から大きな拍手。一気に桂あやめの世界へ。
 「出た人間、出た人間が暑いと、言っておりますが、けど、暑い毎日で」から気になる番組として「魔女たちの22時」に出演することになったと番組を紹介。これがバツグンに面白い。会場全体が笑いの渦に包まれる。激ヤセで若く見えると人生が変わる。そうなると、「コンパ」のお誘いもと、始まった演題は自作の『コンパ大作戦』。
 婚期を逃しかけている三人の女性が秘策を持ってコンパへ参加。大騒動の内に一組のカップルが。男性が選んだ理由が見事なサゲとなる二十五分の爆笑高座であった。

 そして、八月公演のトリは、枝雀一門から桂雀々師匠にお願い致しました。
当席へは年一回のペースで出演され、汗ブルブルの熱演はよくご存知の通り。今回もタップリと熱演する気充分で小気味良い『かじや』で高座へ。さっそく、ここのトリは色々なネタが出るので大変。今日は暑い夏で、「暑いこってすなぁ、背中からジリジリ焦げてくる・・・。蛇含草という噺で、やりまへんで」。これには天井が落ちるほどの大爆笑。
 そして始まった演題は『船弁慶』の一席。言うまでも喜公と師匠のイメージピッタリでパワー大爆発の雷のお松っんの大活躍で、全編、爆笑の連続。発端からサゲまで汗ブルブルの熱演に演者も客席も大満足の四十分の名演であった。
 「必至のパッチ」の即売会も盛況で完売であったことは言うまでもない。
 師匠が熱演された祈りは、
♪東方降三世(こぉざんぜ)夜叉明王、南方軍茶利(ぐんだり)夜叉明王、西方大威徳夜叉明
王、北方金剛夜叉明王、中央大日大聖不動明王ぉ〜ぉ〜ぉ〜……♪ である。