もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第383回 | |
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公演日時: 平成22年 7月10日(土) 午後6時30分開演 | ||
出演者 演目 桂 佐ん吉 「いらち車」 桂 こけ枝 「ちりとてちん」 林家 染 二 「皿屋敷」 桂 梅團治 「宇治の柴舟」 中入 三遊亭 竜 楽 「堪忍袋」 桂 米團治 「千両みかん」(主任) 打出し 21時10分 お囃子 林家 和女。 お手伝い 桂 治門。 |
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平成二十二年七月の第383回恋雅亭・七月公演の当日は夏本番を思わせる陽気。 さらに土曜日とあって、熱心なお客様はいつも以上に早くから列を作られる。いつもながら長時間並んでいただくには申し訳ないことであります。今回もいつも以上に一杯で届いたチラシを人海戦術で折込を行い開場を迎える。一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていく。前売券も完売で前景気も絶好調で、定刻の六時半には数名の立ち見も発生した満席で開演を迎えました。 今公演のトップバッターは吉朝一門から桂佐ん吉師。 早くから楽屋入りして、楽屋の準備で大活躍。入門以来、師匠の教えを守って若々しい高座で各地の落語会で活躍中で、今回で2度目の出演となります。『石段』の出囃子に乗って満員の客席の拍手に迎えられて高座へ登場し「えー、ありがとうございます」とお礼を述べて始まったマクラは「この商売になって色々な所へ行けます。北は北海道から南は、なんばまで・・・」で、会場から大きな笑いを誘って、始まった本題は『いらち車』のお馴染みの一席。 若さ一杯の師にピッタリな噺で、ガンガン飛ばすように演じ、佐ん吉師の口演も大いに笑いが起こったことは言うまでもない。再演を大いに期待したい達者な十五分の高座であった。 二つ目は、これほど芸名と風貌がピッタリな噺家は他に類を見ない文枝一門から桂こけ枝師。自身も風貌を十二分に生かした上方落語は毎回、爆笑もので、「えー続きまして、こけ枝のほうで・・・」と、満面の笑みで芸名の由来のマクラがスタート。さらに、「風貌とは違ってまだ若い」と強調して、母親と夫婦と間違えられた逸話で笑いをとって本日の演題、『ちりとてちん』が始まる。 多くのお客様がNHKの朝の連ドラでも良くご存知な噺、知ったかぶりをする男を困らせてやろうと豆腐の腐ったものを加工し食べさせる。困った様子や笑いをこらえる旦那さんを風貌を充分生かして演じられるのだから面白くない訳がない。大爆笑の連続の高座であった。 高座を終えられた、こけ枝師は楽屋で過去のネタ帳に目を通しながら「昔、入門して師匠のお供に来てた頃の思い出が目に浮かびますわこの時ですわ。・・・・この噺もソデで聞きましたわ」と感慨深げであった。 三つ目は林家一門から林家染二師匠。 この師匠も当席常連。持ち前の笑顔とパワー一杯で繰り広げられる上方落語は爆笑の連続。早くから楽屋入りされた師匠。奥様は事前のチラシ準備のお手伝いを願って恐縮の極み。楽屋袖にて今日の演題を検討。「タップリと」との声に「よろしいか」と応えて夏の滑稽怪談噺の大物『皿屋敷』と演題が決まる。師匠譲りの『藤娘』の華麗な出囃子に乗って高座へ登場すると場内からは待ちわびた様に拍手と、「染二!」と掛け声も掛かる。 この噺、ご存知のように播州姫路が舞台。物知りの町内のおやっさんの所へ町内の若い衆が「車屋敷(地元ではそう呼ばれている)」のことを聞きにくる処から物語りはスタート。怪談のクダリはややトーンダウンで演じられたがあったが、その他のクダリはパワー全開。ワイワイガヤガヤとお菊さんを見物に。幽霊の登場に怖がるが、「明日の晩も行こ」。翌日からはお祭り騒ぎでお菊さんも豹変し、大爆笑のうちにサゲとなった半時間の高座であった。 現在上方で演じられている『皿屋敷』は米朝師匠によると、二代目桂三木助師匠―>橘ノ円都師匠―>四代目桂米團治師匠―>桂米朝師匠。米朝師匠から三代目桂春團治師匠に口伝され、さらに多くの演者に継承されたそうである。 中トリは、各地の落語会で大活躍の桂梅團治師匠にお願い致しました。 今回は当席初の中トリとあって梅團治ワールド全開は請け合い。神戸・須磨寺での落語会も毎回大入り。ホンワカムードの暖かさ一杯の高座は当席でもファンも多い。『龍神』の出囃子で大きな拍手の中、満面の笑みで登場。 「えー、前回も米團治師匠と一緒でした。その時は、『米團治襲名記念公演』でしたので、三十年のキャリアの私がトップでした(会場は拍手喝采)。けど、昼は繁昌亭に出て、一応トリ努めさせて頂いて、昼、トリで、夜、こっち来て最初ですわ」と満面の笑みでマクラを、さらに、「今日は、さっきまで『ねずみ(左甚五郎の逸話)』を演(や)ろと思ってましてん。けど、『皿屋敷』の最後のクダリでワーワー言う処が付きますねん。急遽、噺を変えまして夏向きのお噂を」と、笑いを誘って始まった演題は師匠直伝の大変珍しい『宇治の柴船』。 発端は若旦那の病気から始まって後半はグッと芝居仕立てになる。三代目春團治師匠も「もうこの若旦那出来んわ」とお蔵入りされ、先代春蝶師匠亡き今、梅團治師匠の十八番となっている。 いわゆる古典落語のはずなのに、何かモダンな感じがして、ちょっと違う時代の雰囲気のこの噺、力量がないと演じるのは難しい噺である。サゲも三代目師匠はサゲなしで演じておられたが、梅團治師匠は工夫された、25分の大満足な高座であった。 中入りカブリは、東京から来神の三遊亭円楽一門から、三遊亭竜楽師匠に本格的・江戸落語の神髄をタップリ頂きます。 三遊亭竜楽師匠は、本名を柳井淳嘉(やない あつよし)。昭和33年9月12日に群馬県生まれで中央大学法学部を卒業後、昭和61年1月に故三遊亭円楽師匠に入門し、平成4年10月に真打昇進。「にっかん飛切落語会若手落語家奨励賞・努力賞など、数多くの授賞暦に加え、語学力を生かして平成21年に、ヨーロッパ6都市を廻り三カ国語による落語口演を行なわれた。 初めての当席ではあるが、何を言ってもドッカン、ドッカンくるお客様。反応はすこぶる良く、マクラから乗り乗りの高座が続く。始まった本題は『堪忍袋』の一席。実にテンポの良い江戸弁で物語は展開していく。長屋の本当は仲の良い夫婦の喧嘩を収めるのに効果バツグンの堪忍袋。パンパンに詰まった袋が破れて最後の言葉が聞こえ・・・・」。バツグンのサゲに会場からは爆発的な笑いと拍手が起こり二十五分の高座は無事、お後と交代となる。 着替えの終わられた竜楽師匠にお伺いした。「実は、元々は東京の噺だったのですが、鶴瓶師匠の演出が気に入って、そのまま演じています。もちろん師匠に許可はもらいました。ただ、師匠は「梅干と塩昆布」で演じられていますが、東京では塩昆布はあまり食べないので沢庵に変えています。東京でも実に受けが良く私の売り物にさせてもらっています。今日も大受けでとてもやり易かったです」とのコメントを頂いた。 そして、七月公演のトリは五代目桂米團治師匠が、昨年の「襲名記念公演」以来、一年ぶりの出演となります。 開場前から楽屋入りされ、自ら高座へ上がって、ライトの位置を少し角度を変えて全ライトが演者の顔を照らすように調整のご指示頂き「これでええわ、演者の顔が明るくなって」と言われて下りられる。『鞨鼓』の出囃子で高座へ登場。ホンワカとしたマクラから始まった本題は、夏の噺で、上方落語の中でも大物とされる『千両みかん』。 ジリジリとした夏の暑さの表現から病気の若旦那を見舞う番頭。ここで、前出の『宇治の柴船』と噺が付くことに気が付き、苦笑いし登場人物の会話で上手く逃げられる。 ここからは、もう独壇場で、場面転換の妙、息を呑む様な商売人としての言葉使いの変化、真夏の情景もすばらしく、何とも言えないすばらしいサゲにつながる。 サゲと共に打たれるバレ太鼓を一時止めて、「この噺は今ではスーパーでいつでも簡単に手に入るみかんが手に入らなかった時代のお話です」と、締めくくって「皆様方の今後ますますのご繁栄を祈念しまして、お手を拝借」と、米朝師匠考案とされる、五本締めで締めくくり。 |