もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第379回 
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 公演日時: 平成22年 3月10日(水)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 林家  染 太  「手水廻し」
 桂   三 金  「奥野君の選挙」
 笑福亭 三 喬  「鹿政談」
 桂  小春團治  「職業病」
  中入
 桂   朝太郎  「マジカル落語」
 林家  染 丸  「三十石」(主任)

   打出し  21時05分
   お囃子  林家和女、勝 正子
   お手伝い 桂三ノ助、治門、林家愛染。

  平成二十二年三月の第379回恋雅亭・如月公演は、二月十一日より前売券が発売され、早々と完売。そして、ひっきりなしの問い合わせが途切れぬまま、当日を迎えました。当日は雨模様。そして、三月なのにお寒い中、いつもながら長時間並んで頂くには申し訳ないことであります。今回も一杯届いたチラシを人海戦術で折込を行い開場を迎える。
 一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていき定刻の六時半を迎える。

 その公演のトップバッターはトリの染丸一門からの林家染太師、
愛媛県松山市出身で大学教授の父と薬剤師の母のもと長男として生まれて、関西大学の落語研究会を経て、平成十二年入門。以来、師匠の教えを守って各地の落語会で大活躍。
 今回、初出演となり、『石段』の出囃子に乗って若々しく、愛くるしい笑顔と共に高座へ登場。「はい、そう言う訳でございまして、ただ今より開演でございましてトップバッタ−は私、『落語界のアンパンマン林家染太』でございます。どうぞ、よろしくお願い致します」とあいさつ。
 そして、英語落語で海外に言った時の話題から、九州のゴルフ場で通じなかった、「なにしよっとね」と「ナイスショット」。これには会場は大爆笑。さらに、お国言葉の話題から『手水廻し』が始まる。マクラで丁寧に手水を廻すことは朝に顔を洗うことと説明して、「これが判らないとこの噺は面白くありません」と、笑顔と元気一杯の高座が始まる。お馴染みの噺を師匠の教えよろしくキッチリと、自身の明るさを加えて演じると場内は爆笑の連続。
 再演に期待一杯、汗一杯の十五分の熱演であった。

 二つ目は、三枝一門から桂三金師。
この師も愛くるしく、人なつっこい笑顔で演じる落語はいつも場内の爆笑を誘います。
身長168センチ、体重115キロ、体脂肪率51%。本人の紹介でもお馴染みの八光信用金庫(現大阪信用金庫)から夢を捨てきれず、大学の先輩の桂三枝師匠に入門し、金融機関出身で『三金』の名前と名乗って落語界デビュー。
 『喜撰くずし』で巨体を揺すって「よいしょ」と、座布団に座る。
「えー続きまして『落語界の橋田壽賀子』と自己紹介。銀行員から落語家へ華麗なる転進か転落? と、言いますか・・・。関係はありまして『落語も銀行もどちらもコウザを大事にする』」で、会場からはいつものように拍手が起こる。巨体ならではの困った話題、足を捻挫するのだが、誰も気遣ってくれないし、先生も親切に扱ってくれない。ギブスも足に合わない。散々ボヤイて笑いを誘って本題が始まる。本名の奥野君が大活躍する自作の創作落語・奥野君シリーズで、今回は、選挙でデブの主張を演説する『奥野君の選挙』。肥えている人のことを「デブ」と呼んで下さい。決して「ブタ」と呼ばないで下さい。我々は人間です。から始まる選挙演説は実にユニークであるが実に的を得ている。
 投票の結果は落選。
「砂糖をとらないことを主張したため無党派層が離れた」とのグッドなサゲとなった。

 三つ目は「三ちゃん」こと笑福亭三喬師匠。
昭和58年に大阪産業大学を卒業し笑福亭松喬に入門して笑三を名乗る。師匠の襲名を機に三喬と改名、27年のキャリア。「文化庁芸術祭優秀賞」「上方お笑い大賞最優秀技能賞」「ABC漫才落語新人コンクール最優秀新人賞」「第1回繁昌亭大賞」と数々の賞を受賞し、弟子も喬若、喬介と二人で、もう堂々たる貫禄である。
 今回も絶好調で、常連の当席での笑顔一杯の爆笑落語は請け合いで、待ちわびたお客様の拍手とコミカルでノリノリの『米洗い』の出囃子で高座へ登場。
「ありがとうございます。デブ漫談に続きまして・・・」と、始まったマクラは、ふるさと自慢。「私は西宮の出身ですが・・・」と、西宮には噺家では、紫綬褒章の露の五郎兵衛師匠、信じられませんが吉永小百合さんの弟の笑福亭鶴瓶師匠。この頃、男優として受賞されていますが。一方、警察にお世話になった月亭可朝師匠、おそらく今後、お世話になるであろう笑福亭福笑師匠。「西宮に住んでいる若手の噺家はドキドキしていまして、勲章掛けてもらうか手錠掛けてもらうか」師匠のマクラに会場は大爆笑に包まれる。そして、奈良の名物を紹介して『鹿政談』が始まる。
 元々、上方噺であったが、東京でも演じ手の多い噺。その噺を純上方風をベースに師匠が演じると登場人物一人一人が良い人となる秀作となった二十五分の熱演であった。
 
 中トリは、古典・創作の両刀使いの桂小春團治師匠。
当席へは年に一回のペースでの出演とあってファンも多く、今回も大爆笑の高座を楽しみにされているファンが待ち焦がれる中、高座へ登場すると、客席から「待ってました」と声が掛かる。「もうなんかデブばっかり出てまいりましたが、これから先はノーマルサイズばかりが登場いたします」と、あいさつ。この一言で小春團治ワールドへ突入する。
 マクラは着ぐるみショーの中に入っている人の苦労話、着ぐるみの中の人の上手い下手がショーの出来に影響することを漫画チックに。その一言、一言に会場はドッカーンと大受け。始まった演題は自作の創作落語の『職業病』。この噺は師匠のHPでは平成10年2月4日平成創作落語の会初演。個性的な職業に長年従事していたために、転職してもその仕事を引きずってしまう、一種の職業病を描いた作品。
 今日はファミリーレストラン「キングダムホステス」の開店日、しかし集められたスタッフは元葬儀屋のウエイターや自衛隊あがりのコックなど、過去の仕事から抜けきれない人々だった。 とある。
 当席では、平成11年5月の第249回・小春改め三代目桂小春團治襲名披露公演で口演された。今回はその再演となった。
 随所に爆笑爆弾を盛り込んだ究極の一席は半時間であった。

 祈が入って、中入りカブリは桂朝太郎師匠が久々のご出演。
拍手で迎えられ「・・・・・・」。「あっ、喋るの忘れてました。」と、つかみから「続いて、色物の方で・・・」と始まったのは、「皿廻し(ネタばらし付き)」。「移動するハンカチ」。「浮揚する扇子」。「色が変わるレコード」。「増えるティッシュペーパー」。「スプーン曲げ」と、
 爆笑マジックの二十分の高座であった。

 そして、三月公演のトリは上方落語界の重鎮・林家染丸師匠にお願い致しました。
当席へは第壱回公演の初出演以来、今回で七十八回の出演を数え、数々の大爆笑上方落語を演じて頂いている師匠。『正札付き』の出囃子で黒紋付姿で登場すると場内から「タップリ」と声が掛かる。
 本日は、露の五郎兵衛師匠の追善公演に出演中の師匠、その昔の想い出をマクラ。「怪談噺で幽霊になって会場に出て傘で叩かれた」、「芝居の後見が上手くいかなかった」。そして、始まった演題は十八番の『三十石夢の通い路』。
 発端は、京名所から伏見寺田屋の浜、一旦、宿屋で休憩、住所を聞かれるクダリは爆笑。
 そして、舟に乗り込み土産物を売りに来て出船。さらに、船中の出来事から噺はトントンと進み、舟唄が入って情緒を誘う。
舟唄は「♪やれ〜淀の川瀬のあの水〜車よ、誰を待つやら、クルクルとよ〜」「♪伏見〜〜」と、師匠が唄い、三番を染太師が唄うと嬉しそうにチャチャを入れる。
 高座と楽屋と息もピッタリ合った半時間超に及ぶ熱演に場内からは拍手が鳴り止まなかった。