もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第378回 
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 公演日時: 平成22年 2月10日(水)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 桂  ちょうば  「狸の賽」
 桂   珍 念  「紙入れ」
 桂   米 左  「一文笛」
 笑福亭 小つる  「二番煎じ」
  中入
 川上  じゅん  「腹話術」
 桂   文 珍  「高津の富」(主任)

   打出し 21時05分
   お囃子 林家和女、勝 正子
   
 平成二十二年二月の第378回恋雅亭・如月公演は、一月十一日より前売券が発売され、四日間で完売。そして、ひっきりなしの問い合わせが途切れぬまま、当日を迎えました。当日は雨模様。そして、お寒い中、いつもながら長時間並んで頂くには申し訳ないことであります。今回も一杯届いたチラシを人海戦術で折込を行い開場を迎える。
 一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていき、後方に長椅子を引き満席。立ち見のお客様も発生して、定刻の六時半を迎える。

 その公演のトップバッターはざこば一門からの桂ちょうば師で、平成十三年入門以来、師匠の教えを守って若々しい高座で各地の落語会で大活躍。今回、初出演となりました。
 『石段』の出囃子に乗って長身の体をやや前屈みに、高座へ登場。
「ありがとうございます。もとまち恋雅亭、只今より開演でございます。えー、まず、出て参りましたのは、桂ちょうばでございます。すぐ終ります。安心してください」。さらに「本当に超満員でございまして、こんなに入ってる落語会は少ないです。中には少ない落語会もありまして・・・」と、某所(実名入りだったがカット)では毎日、一人の噺家が一時間語って、その後、ビールと河豚と唐揚げが付いて二千五百円と紹介し、そこでの一人のお客様の前で演じた実話をマクラに噺がスタート。
 充分、会場を暖めて始まった演題は『狸の賽』。お馴染みの昔話のようなストーリーをコミカルに。そして、漫画チックに。サゲも決まった十五分の高座であった。

 二つ目は、トリの文珍一門から桂珍念師。
愛くるしく、人なつっこい笑顔で演じる落語はいつも場内の爆笑を誘う。今回も絶好調で、常連の当席での笑顔一杯の爆笑落語は請け合いです。
 いつものイメージピッタリの『ずぼらん』の出囃子に乗って、満面の笑みで高座へ。
「どうもありがとうございます。一杯のお客様でございまして、続きまして出てまいりました私は桂文珍門下の二番弟子の桂珍念と申します」。いつも当席ではここで大きな拍手が起こる。今回も起こった拍手に嬉しそうに「どうも、どうも、おかまいなく、私もすぐに失礼させていただきます」。さらに、「私もこう見えましても内の師匠に入門しまして来年で入門、二十五年でございます。(場内の反応に)こう見えましてもと言いましてもどう見えてるか判りませんが」と珍念ワールドへ突入。
この間も師匠に「『おい珍念、お前、わしとこ来てもうすぐ二十五年やなぁ』『はい、そうです』『そうか、ええ、節目や辞めるんやったら』」と、嬉しそうに「これ言わな落ち着きませんねん」とマクラを振る。そして、「笑うことは幸せを呼びます」と、顔が丸になってる方(目尻が下がって口角が上がってる人)は幸せを呼び、反対に顔がバツになってる方(目尻が上がって口角が下がっている人)と、紹介して本題へ。
 「今日は艶っぽいお噺を、『間男は亭主の方が先に惚れ』『町内で知らぬは亭主ばかりなり』」と、川柳から『紙入れ』が始まる。出だしは、体を斜にして色っぽく「新さーーん」。場内は「クスクス」。照れくさそうに「もう、始まってます」には場内はドッカーンと大爆笑。
 全編、何とも可笑しげな色気を放つ女将さんに翻弄される男二人を、コミュカルに描く珍念師であるが、場内からクスクスとの笑いに包まれた十七分であった。

 三つ目は米朝一門から桂米左師。
今回の高座も米朝師匠の教えを忠実に守って演じる落語は礼儀正しい。『勧進帳(寄席の合方)』の出囃子でユッタリと登場。「えー、落語会で落語がこれだけ並びますとお疲れも出ますし、気を抜く時間も要ります。今がチャンスです」と、冒頭のツカミから、「落語の世界の序列が」から、「盗人の世界も序列が」と繋げて、一番は「スリ」。名人は、すった財布から中身を抜き、勘定して領収書を入れてまた元へもどすそうである。始まった本題は、米朝師匠の自作で直伝の『一文笛』の一席。
 師匠の教えに忠実に、さらに歌舞伎や踊りの素養のある師匠だけに、仕草が見事。発端から面白い内容、場面転換、さらに、ほろっとさせる処もあり、あっと息を呑むサゲまでの二十二分の口演は、原作にさらに磨きのかかった秀作であった。「よっ、お見事!」と声を掛けたい。

 中トリは本年、師匠の名跡の六代目を襲名される笑福亭小つる師匠が久々の出演で、師匠譲りの豪放磊落で笑福亭十八番の落語を期待されるお客様の拍手と師匠(五代目笑福亭枝鶴)も大師匠(六代目笑福亭松鶴師匠)も、そして、同門ですぐ上の兄弟子の笑福亭鶴志師匠(鶴志師匠は『だんじり』を小つる師匠に譲って、内海英華嬢にアレンジしてもらった『鶴志囃子(舟行きくずし)』を現在は使用中)も使っておられた笑福亭伝統の『だんじり』の小気味の良い出囃子で登場。
 「えー、今、携帯でニュースを見てますと、民主党の小沢幹事長が、逮捕・・・飛び降り自殺・・・」と、マクラを振る。場内の驚いたような反応に、ビックリして思わず「お客様、落語でっせ」と打消すと、今度は会場全体から大きな笑いが起こる。「災難は、いつ起こるかも判りません。天災もそうですし、火事も・・・」、さらに、昔の消火方法は破壊。防止は夜回りに頼る。そして、極寒の十二月はご近所の有志での夜回り、とのマクラから始まった演題は『二番煎じ』。
 この噺は、東西で多くの演じ手のいる冬の酒の噺で、上方では二代目桂春團治師匠の十八番。その噺を「冬の寒さが伝わって、鍋の温さが引き立つように、根深の熱々食うとこをじっくりやれたらええんですが」と語られておられたが、見事に演じられた半時間の好演であった。

 中入りカブリは、川上じゅんさんの「腹話術」と「マジック」を融合した不思議な腹話術を引っさげて当席へ初出演です。「続きましては色変わりでございまして腹話術の方でお楽しみ願っておきます。吉本興業、唯一の腹話術士、川上じゅんです。どうぞ。よろしくお願いいたします」と、あいさつすると場内から大きな拍手が起こる。さらに「私の師匠は川上のぼる」。さらに拍手に応えて「今、拍手を頂いた方は六十以上と思います。今年、八十一になりましたが、元気です。私は息子に当たります、似てます?」と、続ける。
 「まず始めはちょっと変わった腹話術を」と、ハリーポッター譲りの腹話術を、さらに、人形を二体使っての見事な高座。

 如月公演のトリは上方落語界の重鎮・桂文珍師匠。
お忙しい師匠ですが当席へは年に一回の出演を頂いています。『円馬囃子』で登場して、爆笑マクラがスタート。川上先生の想い出、一人のお客様の前での落語会、名手品師小沢さんと鳩山ポッポちゃん、沖縄基地問題の解決策は落語『三軒長屋』の応用、立松和平さん死去、四万十川は遠い、鰹が上手い、全国の独演会、一ヵ所で色々な人と会えるのは宿屋さん、と、すっーと本題へ『高津の富』の始まり。
 おおホラ吹きの一文無し、人の良い宿屋の旦那、富くじに群がる人々、二番籤が当たると信じる男ののろけ、登場人物一人一人が生き生きと大活躍する上方落語の大物を小気味よいテンポで演じる師匠。ツボツボで爆笑が起こる客席。演者と客席の息がピッタリ合った四十分の力演であった。

 終演後、嬉しそうに木戸口で、嬉しそうにCDの即売会をされておられた文珍師匠であった。