もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第376回 
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 公演日時: 平成21年12月10日(木)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 笑福亭 喬 若  「時うどん」
 桂   歌之助  「桃太郎」
 桂   蝶 六  「豊竹屋」
 桂   雀 松  「尻餅」
  中入
 桂   雀 松  「神様のご臨終」
 笑福亭 仁 智  「源太と兄貴・純情編 」(主任)

   打出し 20時45分
   お囃子 勝 正子。
   手伝い 桂 治門、笑福亭智六。

平成二十一年十二月の第376回恋雅亭師走公演は、十一月十一日より前売券が発売。
師走にしては暖かい、しかしながら雨模様の木曜日に当日を迎えました。暖かいとはいえ、雨模様の中、いつもながら長時間並んで頂くには申し訳ないことである。
 今回も一杯届いたチラシの準備をお手伝いの噺家諸師も加わり人海戦術で折込を行い、さらに、上方落語協会の来年度のカレンダーの即売会も企画し開場を迎える。一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていき、後方に少し空席が出るほぼ満席で定刻の六時半を迎える。

 その公演のトップバッターは、笑福亭松喬一門の三喬師匠の筆頭弟子の笑福亭喬若師。
愛くるしい笑顔とその顔を十二分に生かしたツカミから繰り出される爆笑噺は当席でもお馴染みでファンも多い。今回も大張り切り。早くから楽屋入りして開場準備。
 『石段』の出囃子でにこやかに高座へ登場。「えー、ありがとうございます。まずは落語界の松坂大輔と呼ばれております・・・。」と、得意のツカミに客席も高反応。「笑福亭喬若でお付き合いを願っておきます。えー、私の方が年上ですので向こうが私に似ております。年収が七桁も違います。郵便番号ちゃうちゅうねん」と連発に会場も大受け。
 そして、始まったマクラは小学校の落語教室の話題。「おとなしそうな小学生を舞台に上げて、うどんの食べ方を、ああ、こう言ってますと前に座ってた、がき大将が『うどんぐらいゆっくり食わしたりーなぁ』とのツッコミがありましてん」とのマクラから「そのうどんの出てくる噺の『時うどん』の一席を・・・」と、お馴染みの噺が始まる。乗り乗りで噺は展開。途中で失念という急ブレーキがかかるが、そこは持ち前の人懐っこい笑顔で再スタート。
 お馴染みのサゲで拍手で引っ込む照れくさそうな喬若師であった。

 二つ目は、米朝一門から桂歌之助師。
平成九年に先代師匠に入門して桂歌々志(かかし)を名乗る。この名は歌之助師匠の「歌」と雀々師匠の「々」と本来、「案山子」の「歌々子」となる処を米朝師匠の「志」の字を推薦し付いた名前とお伺いした。平成十四年先代師匠がお亡くなりになられ、平成十九年師の前名の歌之助を三代目として襲名。当席でもお馴染みの先代同様にキッチリした芸風で演じられる落語は当席もお墨付き。細身ながら健康体の師です。落語の腕も定評があり、数多くの賞に輝いている実力派である。
・平成十五年「NHK新人演芸大賞」入賞 ・平成十八年「なにわ芸術祭」新人賞
・平成十九年「天満天神繁昌亭」輝き賞  ・平成十九年「咲くやこの花賞」大衆芸能
・平成十九年「文化庁芸術祭」新人賞
 にっこり笑顔で高座へ登場した歌之助師匠。
「えー、ありがとうございます。続きましてお付き合いを願っておきます」と、あいさつから、マクラは大阪のおばちゃんが発車寸前の電車に強引に、遅れていたお連れも「待ってくれてはる」との言葉を添えて乗り込んでくるシーンに遭遇した話題をコミカルに紹介。そして、始まった本題は『桃太郎』。この噺、大師匠に当る米朝師匠から師匠の歌之助師匠に、そして当代と伝わっている噺。マクラからそれを充分感じさせる口演の一言。
 その一言で好演を感じていただけることでしょう。

 三つ目は先代春蝶一門から桂蝶六師が、『乗合船』の出囃子に乗って高座へ登場。
「えー、どうも今日は本当に皆様方に・・・会いたかった。落語は古典芸能と言われていますが、どちらかというと大衆芸能。伝統芸能は、能、狂言、浄瑠璃などで、落語とは声の出し方が違いまして・・・」と、狂言の特徴をユーモア一杯に説明、演じられる。「お客様もご一緒に」とばかりに会場全体を巻き込んでお客様も大声を挙げ、場内は最高潮にヒートアップ。充分に温まった頃、始まった本日の演題は『豊竹屋』の一席。
 浄瑠璃好きの豊竹屋節右衛門さんと口三味線名人?の花梨(かりん)胴八さんが即興の浄瑠璃を語ることにする。 お互いに「先に」「先に」と順番を譲っているうちに、どちらともなく「先に旗持ち踊りつつ、三味や太鼓で打ちはやす」「チン、チン、チンドンヤ」。「水をじゃあじゃあ出しっぱなし、隣の婆さん洗濯」 「ジャジャ、シャボン、シャボン」。とコラボレーション。
 さらにヒートアップし、「去年の暮れの大晦日、米屋と酒屋に責められて」 「テンテコマイ、テンテコマイ(てんてこ舞い)」。「二十五日のお祭りは」 「テンジンサン、テンジンサン(天神さん)」。「子供の着物を親が着て」「ツンツルテン、ツンツルテン」。「夏の売り物、そばに似れども蕎麦でない、うどんに似れどもうどんでない、酢をかけ蜜かけ食べるのは」「トコロテン(心太)、カンテン(寒天)」。「それを食べ過ぎてお腹を壊して駆け行く先は」 「セッチン、セッチン(雪隠)」 。
 そして、サゲとなる、自身も大いに楽しんで、乗り乗りの二十分の高座であった」。

 中トリは上方落語界の重鎮・桂雀松師匠。
地元神戸出身で、1975年3月に桂枝雀師匠に入門、人気実力とも兼ね備え、さらに、2003年3月には合格率6%の難関の気象予報士の資格を取得し、自らを「落語もできる気象予報士」となのっておられる。通称は、枝雀師匠の命名の「あたまっちゃん」。
 マクラは「落語もできる気象予報士」の話題へ。「今日は前線の説明を」と、「前線とは暖かい空気と冷たい空気の境を指しますが、実際は目には見えません。しかし、ここ(会場)はハッキリありまして、(高座の縁を指しながら)ここにあります。つまり、暖めようとする演者と、暖まりたくないお客様」。これには、場内大受けで拍手喝さい。
 充分会場を暖めて、「昔の暮れの風物詩に『お餅つき』がございまして」と、『尻餅』の一席がスタート。発端から達者な口調で進展する高座。
 長屋の妻の要望に応えるためにはと無理難題を並べる夫の要求にけなげに応える妻。この表現だとほのぼのとした夫婦の情景を語るとなるのですが、そこは落語のこと、世間体を気にする妻と邪魔くさがり屋だが、一人で餅つきを演じる器用な夫が繰り広げるドタバタ劇の方が的を得た表現。
 餅つきのシーンでは会場から大きな拍手が起こった、二十五分の秀作であった。

 中入後は、三枝一門から三番弟子の桂三歩師。
この師匠も早くから楽屋入りして、自身のテンションも最高潮。
中入りカブリに『三百六十五歩のマーチ』の出囃子で満面の笑みでいかにも嬉しそうに、ちょっとおかしな位置に三つ柏の定紋のついた黒紋付で高座へ登場。いかにも楽しそうにマクラを振りながら、紋付の紋は張り紋とネタばらしに会場は大受け。
 そして、始まった本日の演題は、師匠である三枝師匠の自作の創作落語『神様のご臨終』。勿論、師匠直伝の創作落語。三枝師匠の多くの自作創作落語の中でも、噺の舞台、内容、登場人物は奇想天外。突然、キリストさまから携帯電話がかかった安部さん。二十世紀の神様のご臨終に一緒に立ち会う約束をし、鶴橋のうどん屋で待ち合わせをし、極立病院へ・・・・。このストーリーは随所にダジャレが散りばめられた爆笑創作落語。
 師匠の原作に忠実に、そして自身の工夫を随所に加えて、爆笑の連続の20分の口演であった。

 そして、当席の師走公演・本年の大トリは、創作落語の達人・笑福亭仁智師匠の登場となる。おなじみの『オクラホマ・ミキサー』の出囃子で高座へ登場。
 「えー、ありがとうございます。本公演の後、出演者で一年の労を労う打ち上げがありますので、ここはトントンと短く済ませで・・・。」と、いきなり仁智ワールドへ突入。大爆笑の爆笑マクラから始まった本題は、自身の創作落語でシリーズものの十八番『源太と兄貴・純情編』。
 色々策を弄するのだが見入りの少ないアウトローコンビの二人が巻き起こすドタバタ。まずは、トイレに入った兄貴が源太に「ちりし(トイレットペーパー)、持って来い」。これに応えた源太が差し出したのは「明治のチェルシー(お菓子)」。
 実際では起こりえない間違え方に場内は大爆笑。矢継ぎ早にたたみかけるように、このパターンを繰り出す。場内は図ったように爆笑が起こる。ネットでの婚活で年上の人とお見合いするのだが、これがまたえらい勘違い。
 しかし、男女の出会いは合縁奇縁。見事、ゴールイン? となりそうな展開でサゲとなった。