もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第368回 
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 公演日時: 平成21年 4月10日(金)      午後6時30分開演
  出演者     演目
 桂   梅團治  「転失気」
 桂   枝三郎  「お忘れ物承り所」
 笑福亭 松 枝  「紀州」
 林家  染 丸  「寝床」
  中入
 桂   南 光  「京の茶漬」
 小米朝改め五代目
 桂   米團治  「くっしゃみ講釈」(主任)

   打出し 21時00分
   お囃子 勝 正子
   お手伝 桂 治門、米市、林家染吉、笑福亭飛梅、露の團二郎

 平成21年4月の第368回恋雅亭は、『小米朝改め 五代目桂米團治襲名記念公演』です。3月11日に発売された前売り券は、なんと2時間で売切れ。その後も電話やネットで前売券の有無、当日券の状況確認の電話が鳴り止まない。間違いなく大入りが予測される中、当日の十日を迎える。当日は暖かくなった金曜日。お客様の出足はいつもより早く、絶・絶好調で多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。長時間並んで頂くには申し訳ない。
 チラシの準備も人海戦術で折込を行い、五時半に予定通り開場。一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていく。出足は早い、早い。当日券も即、売切れ。最後尾に長椅子を入れ込んで席をご用意するが、お客様の出足は衰えず、大勢のお客様が立ち見となってしまう。会員様とお連れ様で二百十名様の過去最高を大きく更新致しました。
 そして、定刻の六時半に開演を迎える。

 記念公演のトップバッターは春團治一門から桂梅團治師。
神戸・須磨寺での落語会も毎回大入り。ホンワカムードの暖かさ一杯の高座は当席でもお馴染みである。二番太鼓(着到)、祈が入って、いつもの『石段』ではなく、自身の『龍神』の出囃子で大きな拍手の中、満面の笑みで登場。
 「えー、最初に出るの久しぶりですわ。えー、二十九年目ですわ。噺家になって、まさかトップに出るとは(会場、拍手喝采)。けど、横見たらもっとビックリしまっせ。今、太鼓打ってましたのは染丸師匠と春駒兄貴でっせ。笑いましたわ、誰も居ませんねん。この一週間、繁昌亭に出て、一応トリ努めさせて頂いて、昼、トリで、夜、こっち来て最初ですわ」と、満面の笑みのあいさつから、入門当時、修業時代の失敗談を例に笑いを誘って、「物事を知らない、判らないと言いたくない人はいるもので・・・」と始まった演題は十八番の『転失気』。
 知らないと言いたくない和尚さんと近所の住人と、小僧の珍念が巻き起こす爆笑噺、・・・。
トップから完全燃焼で襲名記念公演がスタートした。

 二つ目は文枝一門から「枝さん」こと桂枝三郎師。
ネタ数の多さ、誰も演じなくなった噺にも積極的に取り組まれている師匠であり、今回は文枝一門を代表して華を添えるべく、『二上り中の舞』の出囃子で登場。
 「ベテラン寄席でございまして、・・・私の方は三十一年目でございまして(拍手)、私らが入門した頃は三十年といえば威厳のあったものでございましたが、未だに私らこんなんで・・・」と、枝さんワールドが始まる。「献金問題が自民党にも飛び火しまして、何回や言うたら二回(二階)」「カーネルサンダース、前の日に上が出てきて、次の日に下が出てきて、やっぱり半身(阪神)や」。米朝師匠の話題。物忘れの話題から始まった演題は、師匠である三枝師匠の自作の創作落語『お忘れ物承り所』。練りに練られた噺を感じさせないスケッチ落語であるが、それを感じさせない演出はさすが。
 全編、爆笑の連続の二十二分の好演であった。

 三つ目は笑福亭一門で上方落語界の重鎮・笑福亭松枝師匠。
『早舟』の出囃子で登場すると「ありがとうございます。次から次、芸歴を言うのですが、私の場合は四十年やっておりまして(割れるような大きな拍手)。大学卒業して就職してたら、定年ですよ・・・。」
 さらに「五代目米團治ね、四代目ごね團治、ちょいちょい間違えるんです。今日は各一門を代表して出てるんです。トップの梅團治が春團治一門、文枝、笑福亭、そして、林家一門。なお、露の一門は喪に服しておりますが・・・。」
 そして、笑福亭を代表しての言葉は「祝儀とられた」。続いて襲名の続く落語界の状況を説明し、「明るい話が続いておりますのでひとつくらい米團治襲名という暗いニュースがあっても・・・。(大爆笑)」「私も襲名出来るんです。師匠の松鶴からは『うめにつるのばいかく』の梅鶴という名前は貰ってまして・・・。そういえば今日のメンバーは皆、襲名してるんです、春秋改め梅團治、三太改め枝三郎、染二改め染丸、そして、人間性を改めて南光(又も大爆笑)」と、松枝ワールド絶好調。
 そして、襲名、跡取り、跡継ぎとして本題が始まった。演題は、『大奥物語』か、途中で扇子を落とすハプニングもあって大いに盛り上がったが、ここでチェンジされたのか『紀州』(師匠には未確認)。この噺、地噺と言われ演者の腕の見せ所。
オリジナリティー一杯の口演は爆笑の連続で、自身も大満足であったであろう二十二分であった。

 中トリは林家一門の総帥で前上方落語協会副会長の林家染丸師匠が本年初席に続いてのご出演。本日は太鼓でも大活躍。
 『正札付き』の出囃子で登場。「ありがとうございます。幾千万というお客様でございまして、神戸市民が一堂に会して頂きまして。本日はおめでたい会でございまして」。
 そして、四代目米團治師匠を、テレフォンフレンドの松之助師匠【松之助師匠は米團治師匠の家に居候されておられた】からお伺いしたと紹介。「一階で代書屋をやっておられ字が上手く、酒飲みながら寄席の架空理想番付を書いて楽しんでおられたり、クリスチャン」と紹介し、「四代目は渋かったが五代目はおっちょこちょい」と、落語の失敗談を紹介して「私の方はお古いお馴染みのお噺を」と、浄瑠璃を紹介するマクラで会場全体の大爆笑を誘って、始まった演題は、十八番の『寝床』。
 浄瑠璃を人に聴かせたい以外は満点の旦那、この日も、その犠牲になりたくない長屋の住人は苦しい言い訳をするのだが、借家を出て行くように脅されて仕方なく聴きに来る。そして、・・・。お馴染みのお噺をタップリ半時間。
 客席は大爆笑で大いに盛り上がって中入りとなった。

 中入り後は、枝雀一門から桂南光師匠。
一門の新・米團治記念公演とあって、おお張り切りで『猩々』の出囃子で満面の笑みで高座へ登場。 もちろん会場からは大きな拍手が起こる。
 「えー、続きまして人間性を改めました南光の方で・・・」と、松枝師匠の紹介を受けて会場から大きな笑いを誘って、一気に南光ワールドへ。勿論、二人は仲が悪い訳ではないことは言うまでもない。中入りの一時休憩の会場のムードがこの一言で一気に笑いのフルモードに変わる。見事なものである。さらに「小米朝の時と米團治になってどう違うのか・・・えろう変わりまへん。」「私もざこばさんの全国四カ所でしたが新米團治は、七十七公演、すごいでしょう。みんなお父さんの力」。嬉しそうに、新米團治襲名に関しての話題、さらに「べんちゃら」で笑いを誘って、べんちゃらで始まった本題は『京の茶漬』。
この噺、演じ方では、イヤミな噺になるのだが、師匠の手にかかると、ホンワカムードの噺に変身する。サゲもオーバーアクションで決めてトリの新米團治師匠にバトンタッチ。

 トリは勿論、五代目桂米團治師匠。
今回、襲名後のお目見え公演。出囃子も小米朝時代の『元禄花見踊り』から、師匠である米朝師匠の出囃子である『鞨鼓』で、ゆっくり登場。
 『鞨鼓』という出囃子は三種類あり、本調子は、先代・当代三遊亭金馬師匠。二上りは、当代の小三治師匠。そして、三下りが米朝師匠の出囃子。新米團治師匠が登場すると、本日一番の大きな拍手が起こり、師匠自ら手を伏せて止めないと止まらない。
 「えー、ありがとうございます。わあ、今日が襲名初日のような拍手で・・・」と、襲名秘話から、始まった本題は『くっしゃみ講釈』。
発端から、唐辛子を買って講釈場へ。講釈師が登場して本格的な講釈を聞かせた後、盛り上がるくっしゃみのクダリへ。場内は爆笑の連続。大いに盛り上がってサゲとなった。
 座布団を外して、打ち出しの太鼓を一時止めて、拍手の鳴り止まない会場のお客様へ「ありがとうございます。もとまちのお客様は本当に凄い。今日が襲名初日のような雰囲気で、本日はありがとうございました。・・・」と、感謝のあいさつをし、大盛況のうちに『襲名記念公演』はお開きになった。