もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第365回 | |
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公演日時: 平成21年 1月10日(土) 午後6時30分開演 | ||
出演者 演目 桂 しん吉 「鷺取り」 笑福亭 銀 瓶 「宿題」 林家 染 二 「質屋芝居」 露の 都 「堪忍袋」 中入 桂 勢 朝 「南京玉すだれ」 林家 染 丸 「けいこ屋」(主任) 打出し 21時00分 お囃子 林家 和女 お手伝 林家染吉、露の 紫、 |
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平成21年の年頭を飾る第365回恋雅亭の前売り券は昨年中に売切れ。 年明けからも前売券の有無、当日券の状況確認の電話が鳴り止まない。さらに、二つ目でご出演の銀瓶師がラジオの番組で宣伝した為、九日の前日まで拍車がかかる。 今年も初席から大入りが予測される中、当日の十日を迎える。 当日は土曜日であったが空模様も怪しく、午後には一時、雪模様となり心配したが、四時には止んで一安心だが、長時間並んで頂くには底冷えの冬本番で申し訳ない。 当日は戎っさんの土曜日。元町本通りの人通りも多い。その中を多くのお客様が列を作られ寒い中、開場を待たれる。チラシの方も多く、全員で人海戦術で折込を行い、また、春団治一門のカレンダーも準備するといったてんてこ舞いの忙しさ。 五時半に予定通り開場。一番太鼓と共にご入場されるお客様で会場一杯に用意した椅子が次々に埋まっていく。やはり土曜日とあって出足も早く、六時前には当日券の予定枚数も売切れ。最後尾に長椅子を入れ込んで席をご用意し、定刻の六時半に開演を迎える。 初席のトップバッターは故吉朝一門から桂しん吉師。 師匠から受け継いだ本格的で端正な落語は当席でもお馴染みで、早くから楽屋入りしてお囃子の準備やチラシの折込を手伝い自身の演題を当席のネタ帳とノートを比べ検討。時期的にも『ふぐ鍋』とも考えられておられた様子だったが、トップの出番や持ち時間を考慮して、師匠直伝の『鷺取り』と決定。 自身が笛を担当した二番太鼓(着到)から、一呼吸あって、いつもの『石段』ではなく、初席のトップで弾かれる『十二月』に乗って高座へ登場。あいさつの途中、「しん吉!」と掛け声もかかる。マクラは保育園園児の前で演じた時の裏話。「語ってたら急に前の園児が全員、急にいなくなるんですよ。びっくりして終わってから聞いたら、三時のおやつ(場内大爆笑)」。 そして、『鷺取り』が始まる。口跡の良さと語り込んだ噺とあって、ツボツボで笑いが起こる。 鷺に空中を飛ばされるくだりでの「・・・まるでサギにおうたみたいな」では、お客様に「怒ってませんか。ここで下りても(舞台)ええんですが続けます」と言うと、場内は大爆笑。 お馴染みのサゲとなった十七分の好演であった。 二つ目は、鶴瓶一門から、「銀ちゃん」こと笑福亭銀瓶師。 地元出身で当席への愛着も人一倍で、行儀の良い若々しく元気一杯の高座で、落語の真面目な取り組みにも取り組んでおられ『たちぎれ線香』『不動坊』『帯久』『どうらんの幸助』など、多くの大ネタを演じておられる。今席も一番に楽屋入りして準備万全。今日は出番順を考え、桂三枝師匠作の『宿題』を準備されておられる模様。『拳その一』の出囃子に乗って笑顔で高座へ登場すると会場からまたまた大きな拍手が起こる。奥様がPTA会長を務められる娘さんの小学校で演じた落語(『男女の会話』と『動物園』)の話題をマクラ。面白いマクラに場内は爆笑の連続。 そして、本題の『宿題』が始まる。この噺、ご存知の通り桂三枝師匠作の創作落語。今では一門にとらわれず多くの演じ手のある噺。当席で演じられるのはこれで三度目(桂三歩、桂都丸師)。各師匠共、それぞれが原作を土台に自身の工夫を盛り込んだ秀作であったが、それに勝るとも劣らない秀作で、ふんだんに盛り込まれたクスグリに客席は好反応で、その都度、大爆笑が起こる。上出来で乗り乗りの二十分であった。下りてこられた銀瓶師「いやっ、よう笑ってもらえました。ええお客さんやし、原作がよう出来てますわ」 三つ目はトリの染丸一門の総領弟子の林家染二師が登場。 パワフルな師匠、落語を中心に多方面で大活躍中で、三百五十回記念公演以来、一年半ぶりの出演となる。前回は二つ目で『いらち車』、今回は三つ目で『質屋芝居』とネタも選定、準備万全で楽屋入り。さっそく、キッカケの打合せ。お囃子は林家和女嬢なので息もピッタリ。出囃子は師匠譲りの『藤娘』。笛をしん吉師、太鼓を楽屋入りされた染丸師匠が担当される。「えー、林家染二の方でお付き合い願っておきます。私も今年が年男でして二十四の春を迎えます(場内爆笑)。いや四十八でございます。あっと言う間でございまして、もう一廻り上がうちの師匠(染丸)。六十です。若い還暦で、ギバちゃんもそうですが、その上の七十二が仁鶴師匠、加山雄三さんも、どちらも歌手で、仁鶴師匠の『おばちゃんのブルース』好きでした。八十四が米朝師匠と松之助師匠、どちらもお若い。」と紹介。 さらに「私のほうは、上方落語界の中村橋之助と呼ばれておりますが、この後は上方落語界の自称・藤原紀香の登場です・・・。」と、マクラが続いて、歌舞伎の掛け声の話題から本題の「仮名手本忠臣蔵」三段目をパロディーにした『質屋芝居』が始まる。この噺、はめものがふんだんに入った純上方芝居噺。太鼓は引き続き染丸師匠が、しん吉師が笛、つけ、楽屋の掛け合い、銀瓶師があたり鐘、和女嬢が三味線をと楽屋も総動員。発端からサゲまで乗り乗りで高座の上で動き回った大熱演。随所に会場からは大きな笑いと拍手が起こった二十二分の高座であった。 そして、中トリは上方落語界の女流・露の都師匠にとって頂きます。 染二師匠が「次は藤原紀香」と紹介したのを確かめ、染丸師匠が太鼓を打たれているのを恐縮しながら、しかし、うれしそうに気分良く名前にちなんだ『都囃子』の重厚な出囃子で高座へ登場。爆笑の言いたい放題マクラから爆笑落語へ会場を導く高座は、大爆笑請け合いでと、ご紹介したがその通りで、一礼して「藤原紀香でございます」。場内はドッカン大爆笑。ツカミ大成功。「神戸ですから、藤原紀香とあいさつしましたが、スタイルもええし別嬪ですねぇ。同じ女やのに・・・・。この頃は繁昌亭では『吉・永・小・百・合』と言いすぎて何かあると『吉・永・小・百・合』ですが口に付いてしもて・・・。」と、全開の都ワールドで場内を笑いの渦へ。これが実に面白い。怖いものなしの会話に場内はますますヒートアップ。 始まった本題は『堪忍袋』の一席。上方では鶴瓶師匠がサゲなどを改作してよりお笑いの多い噺に仕上がっている噺だが、都師匠はさらに、女性ならではの演出をプラスしての好演。仕草、言葉使い、意外性のある愚痴のそれぞれのクスグリに場内は大爆笑に包まれ、大いに盛り上がった二十五分の高座でお仲入りとなった。 中入りカブリは、米朝一門から桂勢朝師匠。 毎回、勢いのある高座を努めて頂いていますが、今回は初席で「南京玉すだれ」を会場の皆様の手拍子をお借りして演じて頂きます。『野球拳』の出囃子、袴姿で登場し、「いきなり演(や)ったらええんですけど二分で終わりますから延ばします。」と、オネオネ。これが面白い。 そして、「南京玉すだれ」がスタート。「釣竿」「鉄棒」「炭焼き小屋」「東京タワー」「山の吊り橋(なかなか出来ず、難儀で笑いを誘う)」「阿弥陀物」「しだれ柳」でお開きとなった。 そして本年の当席初席のトリは、上方落語界の重鎮・四代目林家染丸師匠。 当席常連として毎回、熱演の連続の師匠。今回も『正札付き』の出囃子で登場。 「あけましておめでとうございます。ただ今は場内が宴会場のようになりまして、今月はお正月でもあり精鋭を集めまして・・・。私も年男でして、十六で入門ですから四十数年、早いもので・・・」との挨拶から、爆笑マクラを経て始まった本題は、十八番の『けいこ屋』。 「もてるためには『顔』とし、それ以外やと芸や」と、けいこ屋へ行くことを勧められた主人公が芸事を習いに小川市松師匠の元へ向かう、おなじみの噺で、けいこ屋のお師匠はんはプロ、子供は子供らしくと力量が必要な難しい噺。「越後獅子」「狂乱の太鼓地(きょうらんのたいこじ)」「喜撰」と師匠の名演に場内はウットリ。大爆笑の半時間の好演で初席のお開きとなり 初席らしい『しころ』で、満員のお客様を景気良くお見送りとなった。 ・・・・・・・・ 『質屋芝居』で『三段目』をご紹介 ・・・・・・ 『進物の場・文使いの場(足利館城外の場)』・・ 賄賂を受け取る師直(吉良上野之介)の家臣鷺坂判内(さぎざか ばんない)役者の 見せ所の場面。 『喧嘩場(足利館殿中松の廊下刃傷の場)』・・ 判官(浅野内匠頭長矩)が師直へ刃傷におよぶお馴染みの場面。 『裏門合点(足利館裏門の場)』・・ 判官の供侍だった早野勘平(萱野三平)が顔世の腰元お軽と駆け落ちする。 『落人(道行旅路の花聟)』・・ この段のみ、「仮名手本忠臣蔵」ではないが、現在は一体化されて上演されている。 落語では伴内と勘平の掛け合い。 |