もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第358回 
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 公演日時: 平成20年 6月10日(火)      午後6時30分開演
  出演者      演目
 桂   三ノ助  「四人癖」
 月亭  遊 方  「酔いどれ交番所」
 桂   出 丸  「青菜」
 桂  小春団治  「アーバン紙芝居」
  中入
 内海  英 華  「女道楽」
 月亭  八 方  「算段の平兵衛」(主任)

   打出し 21時00分
     お囃子  林家 和女、勝 正子
     手伝い  笑福亭 達瓶、
 一つの区切りである『三十周年記念公演』を無事お開き。
今回は六月の358回公演を迎えました。前売券も早々売り切れ前景気も絶好調。その後も問合せが途切れないまま当日を迎える。
 平成二十年、六月十日、当日は平日であるが、お客様の出足も絶好調。朝から雨模様。さらに三月に戻ったように寒い。困った。いつもの様に一番のお客様の出足は速い。人気は継続中。その後も多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で織り込んで開場の準備を進める。今回も多い。焦ってスピードアップして準備。定刻の五時半、開場。列を作って待っておられたお客様が入場される。出足は絶好調で、次々と来場されるお客様で会場はどんどん埋まっていき椅子席は開演時にはほぼ満席となる。

 二番太鼓から定刻の六時半、祈が入って、六月公演が開演。
 その公演のトップバッターは、三枝一門から地元神戸出身の期待の星・桂三ノ助師。師匠譲りの明るい芸風と人なつっこい笑顔で演じられる高座は爆笑物。当席への思い入れも人一倍で嬉しい二度目の出演となった。『石段』の出囃子でまん丸な顔をくしゃくしゃにして高座へ登場。
 「ありがとうございます。ありがとうございます。開演いたしました、元町・恋雅亭でございます。まずトップバッターの私でございます。地元神戸が生んだ大スター・・・の予定でございます(場内爆笑)。神戸出身の桂三ノ助でございます(会場から拍手)」と、あいさつし、癖の噺をと始まった演題は『四人癖』。
 鼻の下を擦る、目を擦る、袖を引っ張る、手を打つ癖をもつ友達四人が千円を掛けて癖を直すためのやせ我慢と仕草への言い訳。
 苦しむ姿と仕草が笑いを誘った十三分の高座であった。

 二つ目は、トリの八方一門から月亭遊方師。
楽屋でもいつも通り笑顔も元気も一杯である。演じられる自作の創作落語は自身の個性と相まって、今回も爆笑高座請け合いと、ご紹介したがその通りで、明るくテンポのある『岩見』の出囃子に乗って元気一杯高座へ登場。
 「ありがとうございます、続きまして月亭遊方の方でご陽気に・・・」と自己紹介。
「私事ですが・・・」と、住まいのある天王寺界隈を紹介する現代感覚溢れる爆笑マクラが始まる。天王寺界隈では、道路の標示物は「寝ている人を轢かないで!」とか、違反したバイクに対してパトカーから警官が「そこのバイク、止まりなさい。止まらないと・・・」に続く言葉が「止まらないと知らんぞ」とマイクで警告したりと面白い街でと紹介すると、場内はドッカーンと大受け。
 そして、始まった本日の演題は自身の創作落語で、平和な町で繰り広ろげられる『酔いどれ交番所』。面白いと思ったことを自身の感性で創作落語という形で表現しておられる師匠。
今回は、事件が起こらない交番に酔っ払いが入ってくるところから噺が始まる。
 交番に酔っ払い男が入ってきて、居酒屋と間違えてビールを注文したり、交番とコーナン(ホームセンター)を間違ったり、指名手配ポスターを、落語の一門会のポスターと間違える。間違った一門は「ざこば一門」で、これは大受け。売春通報や、「燃えてる」と放火犯とカップルを間違ったり、ついには、殺人事件の人殺し現場と、お通夜を間違えて通報。
 ついに、酔いつぶれ交番に止めてくれと言い出した男を嫁さんに迎えに来さそうと電話するのだが・・・。似たもの夫婦の嫁さんで・・・。
 見事なサゲとなった二十分の汗ブルブルの大熱演であった。

 三つ目はざこば一門から「デマルクン」こと桂出丸師。
この師匠も努力家で当席の常連。今回も愛嬌タップリで若さ溢れる爆発爆笑高座。何が飛び出すか。と、お楽しみにされている会場のお客様の拍手に迎えられ、『せつもんかいな』の出囃子に乗って高座へ。「えー、ありがとうございます。私のほうも軽く聞いていただくわけでございまして、桂出丸と申しまして・・・」と、あいさつからマクラがスタートする。
 「噺家は涼しい処でありがたいことですが、外での仕事をされている方は暑い中、大変でございまして」と、若手時代の大工のバイトで経験した想い出で笑いをとって、始まった本題は、夏の噺『青菜』。お馴染みの噺だが、発端から実にテンポ良く進む。自身の工夫も随所に入る。繰り出されるクスグリは、狙い通りに会場からは爆笑が連続して起こる。
 間合い図ったサゲも決まって二十五分の好演であった。

 そして、中トリは春團治一門から桂小春團治師匠にとって頂きます。
毎回、師匠独自の切り口の創作落語を演じて頂いている師匠で、今回も大爆笑の高座間違いなしです。過去、当席では『日本の奇祭』『祇園舞妓自動車教習所』『さわやか侍』『多国籍商店街』『冷蔵庫哀詩』『職業病』『失恋飯店』『ヒットマンの午後』『ゴダールより愛をこめて』『すばらしき戦争』『お巡りさんはお人よし』の数々の爆笑創作落語を演じておられる師匠ですので、今回は?と、期待の中、『小春團治囃子』の出囃子で高座へ。
 「えー、子供の遊びというのは昔と今とは随分変わってまいりまして、今は外で遊場所はなくなりまして、その代わり内で遊ぶ機会が多いですが・・・」と、マクラがスタートする。
 凧揚げ、コマ廻し、ベッタン、ゴム跳び、草野球、などで遊んだ想い出をマクラに会場の笑いを誘って、始まった本日の演題は、『アーバン紙芝居』。
 師匠のHPで、06年7月15日・桂小春團治独演会にて初演。
 当席では初演となる噺であるが、テレビが普及して見ることが少なくなった紙芝居を脱サラして始めるのだが、現代っ子達に悪戦苦闘。 紙芝居が理解されず、ボランティア、NPO、宗教の勧誘、キャッチセールス、マルチ商法。紙芝居をやっている理由を「リストラ」と言う子供達に、「脱サラ」と、むきになって応える。会話のひとつひとつに会場は爆笑に包まれる。古典落語『いかけ屋』の現代版で、子供達に悪戦苦闘する。紙芝居屋に代わって、次の現代っ子のターゲット候補はポン菓子屋。
 しかし、ここで爆笑逆転のサゲが待っていた。

 中入りカブリは、「女道楽」内海英華嬢。当席の高座は久々。
 今回も大張り切りで自慢ののどと三味の音色をお楽しみの多くのお客様の大喝采に迎えられ高座へ。「ようこそお越しくださいまして、久しぶりに恋雅亭の方でのお目通りでございまして、フアンの方お待たせいたしました。(拍手)」
 当席の想い出から『洋行流行物(ようこうはやりもの)』、そして、自慢ののどで、女性の色っぽさを『都々逸』で披露する。話題は叶姉妹へ。頭の中が腐ってるので「化膿姉妹」。続いて、アンコ入り都々逸で、自慢の三味の音を聞かせて、お後と交替となった。見事なものである。

 そしてトリは上方落語界の重鎮・月亭八方師匠にとって頂きます。
毎年、当席へ出演され、多くの上方落語を演じられておられる師匠。爆笑マクラもタップリと期待の中、『夫婦萬歳』の出囃子で高座へ登場。
 「えー、年がいくと色々な事を考えるもので、この前、もう今年最後やと、河豚を食いに行ってテレビ見てましたら阪神のええとこで時間切れ。あわててタクシーに乗って『どう』と聞くと『勝ってます』。良く聞くと巨人戦の話で。なんで大阪で、巨人戦やってるラジオ局聞いてる運転手がおるんや」との爆笑マクラから始まった演題は、大師匠の米朝師匠が埋もれていた噺を復活口演された『算段の平兵衛』。師匠の十八番である。
「算段」という言葉も分かり難くなった。計算など、単なる数字の正解への導きが出来ることではなく、「やりくり算段」でも判らない。「なんとかする」のが「算段」の意味なのだろう。と、説明したり、「『おてかけさん』この言葉も判らなくなった。歌舞伎やと解説書に全部書いてあります。けど、料金が高いわ。ここは、何も書いてないわ。けど安いわ・・(大爆笑)」発端からトントン進みながら、分かりやすい様に八方流の解説が入る。
 場面転換も多く、筋立ても面白い。さらに八方師匠のテンポの良さもプラスされ会場は大爆笑に包まれる。この噺、サゲはあるのだが、サゲが分からない。とってつけたような展開になるなどの理由で演じられないことが多い。八方師匠も「さて、平兵衛と徳兵衛、どうなりますか。え、お時間でございます」とお開きとなった。
 お客様を見送りながら「阪神は明日から西武球場でございます」と、最後までサービス精神満点の八方師匠であった。