もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第356回 [ 開席三十周年記念公演 ] | |
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公演日時: 平成20年 4月12日(土) 開席三十周年記念公演 [昼の部] 午後1時開演 |
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出演者 演目 林家 染 左 「米揚げ笊」 笑福亭 三 喬 「家見舞」 桂 春 駒 「持参金」 桂 南 光 「素人浄瑠璃」 中入 桂 雀 々 「鶴満寺」 林家 染 丸 「三十石」(主任) 打出し 15時50分 お囃子 林家和女、勝 正子 |
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平成二十年、ぐっと暖かくなった四月十二日、『もとまち寄席恋雅亭・開席三十周年記念公演』が開催された。 ネット予約は3月初めに、前売券は3月11日の発売初日に四時間で完売と、びっくりするような前景気。その後も多くのお問い合わせの中、当日の土曜日を迎える。昼の部が一時開演とあって風月堂さんがオープンする十時にはお客様が並らばれておられる。その後も多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で織り込み開場の準備。今回も多い。焦ってスピードアップして準備。 正午に開場。列を作って待っておられたお客様がご入場される。出足は絶好調で次々とご来場されるお客様で会場は、どんどん埋まっていき椅子席は開演時にはほぼ満席となる。 二番太鼓から定刻の一時、祈が入って『開席三十周年記念公演・昼の部』開演。 公演のトップバッターは桂阿か枝師が急病(声が出なくなる)のため、トリの染丸一門から 林家染左師。師匠譲りの口跡の良さと基本に忠実に演じる落語は当席でもお馴染み。『石段』の出囃子に乗って高座へ登場。 「ありがとうございます、只今より恋雅亭三十周年記念昼の部の開演でございます。出て参りましたのは林家染左と申しまして、ご案内では桂阿か枝出演となっておったのでございますが急病・・・」と、紹介し、さらに「どっちでもええと思ってはると・・・」とに場内から、「その通り」「そんなことない」との声がかかる。始まった演題は『米揚げ笊(いかき)』。この頃、珍しくなっている噺で約五年ぶりの口演。まず、イカキが判らなくなった。「東京でザル、大阪でイカキ」であるが、今は判らなくなった。さらに、この噺、簡単な噺のようで完成されており結構骨が折れる噺。その噺を基本に忠実にキッチリと演じた十八分の好演であった。 二つ目は贅沢。『第一回繁昌亭大賞』に輝いた笑福亭三喬師匠。 『米洗い』の出囃子に乗って高座へ登場。「えー、続きまして上方落語界のクマのプーさん」とあいさつすると会場は一気に「三ちゃんワールド」に。 「私事でなんでございますが・・・」と、弟子の喬若師の仲人をした時の出来事でマクラがスタート。 故文枝師匠、八方師匠の失敗談で会場の笑いを誘って、本題の『家見舞(祝いの壺・肥瓶)』が始まる。 兄貴の新築普請の祝いのために手に入れた例の壺(掘り起こしてきた肥瓶)を化粧直しをして持っていくのだが、喜んだ兄貴に冷や奴、おひたし、漬け物、そして、炊きたてのご飯と海苔と水をで接待を受けたのでさあ大変。いかに料理に水が大切かを思わせる。最後には、以前にあった小さな水壺に入っている水を飲んでほっとしたのも後の祭りとなるサゲが待っていた。爆笑の連続の二十分の秀作であった。 三つ目は春團治一門、上方落語界の重鎮・桂春駒師匠。皆様おなじみの実力派で当席の窓口でもある。いつもの『白拍子』の出囃子で高座へ登場。 「ありがとうございます。この会も始まった当初は今のように一杯にはなりませんで・・・」と、あいさつして、すっーと本題の『持参金』へ入る。 米朝師匠直伝の噺で自身の十八番でもある噺、言葉と言葉、場面転換、キッチリユッタリと演じられる絶妙の間。ツボツボできっちり笑いが起こり実に見事。 中トリは、桂南光師匠の登場。楽屋入りしてネタ帳を見て演題を決定して準備万全。 『猩々』の出囃子で、やや前かがみで満面の笑みで高座へ登場すると待ってましたとばかりに大きな拍手が起こる。 マクラは「日本が世界に誇る文化」としての「カラオケ」。世界中にあるボックスの紹介から、結婚式や歓迎会などの笑うに笑えないシーンを紹介して、続いては浄瑠璃の話題。「名前は言えませんが、」と、人間国宝に上手く騙されて苦しめられた想い出を紹介して、始まった本題は『素人浄瑠璃』他に何の欠点もない主人の唯一の問題点に耐えに耐える長屋の住人や番頭さんをはじめとした人々。南光師匠は、聞きたくない浄瑠璃に苦しめられた長屋の衆のワーワーで大きく盛り上げサゲまでは演じられなかった。『寝床』の演題の方が有名だが『素人浄瑠璃』。一言一言に会場全体から爆笑が起った四十分を超える熱演でお仲入り。 中入後は『かじや』の小気味の良い出囃子に乗って、桂雀々師匠の登場となる。 当席の開席時には師匠のカバンを持って来て三十年となる師匠。色々な営業をしたが、台湾のお客様のバスツアーで京都から箱根まで、そば、うどん、焼き芋などを食べる仕草で持たした苦心談で客席の大爆笑を誘って始まった演題は『鶴満寺』。当席では初めて演じられる噺で、珍しい噺で花見の名所の境内に入りたい一行が寺の権助を丸め込んで酒盛りが始まり、帰ってきた住職に怒られ苦し紛れの言い訳がサゲとなる噺。 雀々師匠が演じる主人公の権助が可愛く、態度がコロッと変って踊り騒いだり。登場人物が実に好人物に描かれた熱演であった。 昼の部のトリは四代目林家染丸師匠。 昼の部のトリの演題を当席のネタ帳とご自身のネタ帳を比べながら思案中。 「ここは真剣勝負やからなぁ」小生が「K、D、T」と注文すると笑いながら「無茶言いないな。よっしゃ『三十石』」と演題が決定。『正札付き』の出囃子に乗って高座へ登場すると、会場からは「待ってました」「タップリ」と声がかかる。 「えー、一杯のお運びでございましてありがたく御礼申し上げます。この会も三十周年ということでこうして続けられましたのもひとえにお客様の御蔭・・・」と御礼のあいさつ。 そして、当席の想い出を「第壱回の出演者の中で残っているのは私だけで(場内爆笑)・・・」。 若手時代の苦心談(TV逃亡者の最終回とかちあってお客様が一人もお越しいただけなかった会)をマクラに笑いを誘う。始まった本題は『三十石は夢の通い路』。 伏見寺田屋の浜から始まった噺は、師弟(染丸・染左)舟唄の掛け合いで盛り上がった三時間に及んだ昼の部はお開きとなった。 |
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公演日時: 平成20年 4月12日(土) 開席三十周年記念公演 [夜の部] 午後5時開演 |
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出演者 演目 桂 ひろば 「ろくろ首」 桂 坊 枝 「野ざらし」 桂 梅團治 「竹の水仙」 桂 ざこば 「天災」 中入 姉様 キングス 「音曲漫才」 笑福亭 松 喬 「壷算」(主任) 打出し 19時40分 お囃子 林家和女、勝 正子 |
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大幅に延びた昼の部の影響で、夜の部のお客様入れ替えも何とか納まって夜の部の開演となる。 トップバッターは、ざこば一門から桂ひろば師。平成十二年入門で当席初出演。 芸名の由来のマクラから『ろくろ首』。師匠直伝の噺を基本に忠実にキッチリ演じた。 袖で腕組みして、ざこば師匠が聞いておられ、下りてきたひろば師に「・・・」とアドバイス。 二つ目は文枝一門から桂坊枝師匠。『鯉』の出囃子で笑顔一杯で高座へ登場。 「えー、ここへは入門三年で初出演と取材で答えましたら、横のざこば師匠が『そら凄い』と、言いながらネタ帳を見て『嘘つけ、八年や!』と怒られまして・・・」とのマクラから『野ざらし』。 元々、江戸の噺を上方へ移植され演じられておられるが、随所に尊敬する古今亭志ん朝師匠の口演を彷彿とさせるようなテンポのある好演であった。 三つ目は、『龍神』の出囃子で春團治一門から桂梅團治師匠の登場。 当席への想い出として師匠(春團治師匠)のカバンを持って来て「早く出たい」と思ったこと。その師匠が良く見ていた時代劇TV。今は自分がとりこになっている水戸黄門。視聴率は印籠を出すシーンではなく由美かおるの入浴シーン。と、マクラが続く。一言一言に笑いが起こり、始まった本題はご存じ左甚五郎の逸話である師匠十八番の『竹の水仙』。 この師匠にかかると登場人物が人なつっこい好人物に描かれ、上方の匂いがプンプンする噺に場内は爆笑の渦の連続。サゲも面白く拍手と共にお後と交代となった。 中トリは上方落語界の重鎮、桂ざこば師匠。 楽屋入りして、警察からの交通違反の書類を見せながら、ざこば節が炸裂。 『御船』の出囃子で登場するや、すぐ羽織を脱ぎ「すぐ脱ぐんやったら着てこなんだらええねんけど・・」とあいさつして、例の書類を見せながら、ざこば節全開の爆笑マクラが始まる。場内は大爆笑の連続。 トップギアのまま高座は本題の十八番の『天災』が始まっても衰えを知らない。 師匠のこの噺、いつ聞いても新鮮さがある。今回も確実にパワーUPバージョンUPされた十八番の『天災』、半時間の爆笑高座であった。 中入り後は、姉様キングス(あやめ・染雀)の「音曲漫才」。 一瞬唖然とした客席を「中には動揺したお客様もいらっしゃいますが、すぐにーーー慣れます(大爆笑)」と引き込む。『都々逸』『すととん節』『あほだら教』と続いた二十分の爆笑高座であった。 夜の部のトリは六代目笑福亭松喬師匠。 『高砂丹前』の出囃子でユックリ登場すると、会場から大きな拍手が起こり応えて「もう一席、お付き合い願いましてお開きと言うことで・・・」とあいさつして松喬ワールドの爆笑マクラが始まる。 ざこば師匠に続いての交通違反の裏話、大掃除での本を売った話、そして引っ越し、昔の長屋の状況、そして本題の『壺算』が始まるというマクラの見事さには脱帽。 十八番とあって会場の反応を楽しむように演じられる。 会場からは主人公のアホさ加減や、番頭はんのうろたえぶりなどツボツボで大きな笑いが起こった半時間の高座であった。 |