もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第351回
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 公演日時: 平成19年11月10日(土) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 笑福亭 喬 若  「手水廻し」
 桂   團 朝  「座長の涙」(小佐田定雄 作)
 桂   三 風  「振り込め!」
 桂   文 太  「松島心中」
  中入
 桂   春 雨  「天災」
 笑福亭 仁 智  「EBI」(主任

   打出し 21時
     お囃子  中田まなみ、勝 正子
   
 平成十九年も十一度目の公演(今年もあと二回)となる十一月の三百五十一回公演。
一つの区切りとなった先月の開席三百五十回記念公演後の第一回公演となります。
前景気は絶好調で、今回はまずネット予約が満杯。前売券も十一月初旬で完売。その後も多くのお問い合わせの中、当日を迎える。その中、好調で当日を迎える。
 当日は土曜日とあって、いつも以上に多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で、織り込み。今回も多く焦ってスピードアップ。
 そして、定刻の五時半に開場。いつもながら申し訳ない。
列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。
当日のお客様の出足は絶好調で次々とご来場されるお客様で会場はどんどん埋まっていき椅子席は満席。開演時には立ち見客も出る大入満席となる。

 二番太鼓から定刻の六時半、祈が入って、『石段』の出囃子で、十一月公演のトップバッターで当席二度目の出演となる三喬一門の総領・笑福亭喬若師が登場。
「えー、『上方落語界の松坂大輔』でございます。・・(客席からは「似てる」との合図の拍手)・・。それではこれで失礼いたします。」のチャッチフレーズから。「私のほうが年上でして、向うがこっちに似てるんですが年収が七桁違います」とマクラがスタート。
小学生相手の司会の仕事でディズニーの主人公当てクイズで「僕、ミッキーだよ」とやった時の反応を紹介。
・岡山・・>面白い。  ・神戸・・>おっさん、答え言うとるやんけ。
・大阪・・>おっさん、べたやなぁ。  を紹介して、本題の『手水廻し』が始まる。
この噺、純上方噺で、通して演じる場合は『貝野村』。後半部分のみを独立させて演じる場合を『手水廻し』と呼ぶ。つまり『貝野村』の後半部分が独立して、『手水廻し』に仕上がっている。船場の若旦那が丹波の貝野村の庄屋家へ入り婿の式を挙げての、翌朝、景色がエエので、庭を眺めながら庭先・縁先で、手水を使おうと、女中さんを呼びまして、「ここへ手水を廻してくれ」と後半へつながる。通して演じると半時間以上かかる大作である。
 喬若師へは、五代目松鶴師匠、六代目松鶴師匠、六代目松喬師匠、そして三喬師匠へと、笑福亭代々からの直伝である。
その噺をトントンとテンポよく、誇張、漫画チックに演じた十五分の秀作であった。

二つ目は、米朝一門から桂團朝師。
今回も明るく、元気一杯、笑顔一杯で演じる上方落語を待ちわびた場内から『道頓堀行進曲』に乗って舞台へ顔を見せると大きな拍手が起こる。
「えー、只今、拍手頂きましたお客様のみ厚く御礼申し上げます。ちょっと早く神戸に着きましたので、・・・」と、大好きな神戸の二宮町、長田(いづれも廃館)、そして、メッカの新開地劇場と大衆演劇の劇場を紹介。さらに、熱狂的なファンの驚くような額のご祝儀を紹介して、本題の小佐田定雄先生作の創作落語『座長の涙』が始まる。
 ドサ廻りの芝居の一座にお涙頂戴で加わった芝居好きの男の正体は、地元の仏壇屋の息子。この男が繰り広げる爆笑噺。
 この噺、10年程前に小佐田先生が大衆演劇が好きな團朝師のために書き下ろした創作落語。小佐田先生と團朝師の息のピッタリあった秀作であった。二十分。

 三つ目は三枝一門から創作落語の雄・桂三風師の師匠譲りの切り口鋭い元気一杯の爆笑高座である。出囃子は三枝師匠譲りの『おそずけ』。三枝師匠は、文枝師匠が小文枝師匠時代に使われていた『軒すだれ』を譲られ自身の出囃子を弟子の三風師に譲っておられる。
 その師匠譲りの出囃子に乗って登場し「えー、コーヒーが好きで今日も時間があったので二杯飲んで来ましたが、この頃、『ホット』が判りません。どうも本日のコーヒーがそのようで・・」と、マクラが始まり、さらに大阪のおばちゃんの元気溢れる行動、「喫茶店での席取り。注文」「美人にライバル意識一杯の環状線一周事件」を二つ紹介して場内を笑いの渦へ。
 そして、始まった本題は自身の創作落語で昨今の振込み詐欺を題材とした『振り込め!』。
振り込み詐欺のマニュアルを手に入れた男たちが詐欺を企てる。電話を掛けるのだが、上手くいかない。五十年前に亡くなっている息子に成りすましたり、留守番電話に脅し文句を吹き込んだり、三歳の孫の三輪車に引かれたと脅したり・・・。振り込め詐欺を企んだものの、次々失敗。逆にお金を振り込むハメになりサゲとなる。
この噺、高齢者へ送る社会派落語、この噺を参考に「振り込め詐欺」に騙される事はないよう注意!

そして、中トリは上方落語の本格派・桂文太師匠。
この師匠も当席常連。いつも色々なジャンルの落語を聞かせていただいている。お馴染みの『さわぎ』の出囃子で高座へ。
「えー、今日は松島のお話をします」と、即、本題へ。『松島心中』。
東京落語の大物『品川心中』を、東京の品川と遠浅の遊郭と同条件の大阪の松島へと置き換え移植した郭噺。年齢と共に人気が落ちてきた元NO1が、移り変え(宴会付き衣替え)が出来ない悔しさから自殺を考えるがプライドが許さず心中を思いつく。その相手に指名された災難な男と巻き起こす爆笑が連続するストーリー。
文太師匠の話芸に場内はウットリしたり、爆笑となったり。28分の名演であった。

 祈が入って中入りカブリは、春團治一門から桂春雨師。
「上方落語界の若旦那」の師匠、初めてのこの位置。『春雨』の出囃子で登場すると「えー、私、虚弱体質で・・・夏痩せがもどりません・・・」と、始まったマクラは、羨ましいでしょと「血糖値が低い。悪玉コレステロールが低い。中性脂肪数値が低い。ウエストは68センチ、バスト81センチ、Aカップ」と、紹介。
 「すんまへんちょっと書いて、パッパと・・」と、始まった本題は師匠十八番の『天災』の一席。
どこにでもいるような短気で喧嘩早い男が隠居さんの紹介で心学者・紅羅坊名丸(べにらぼぉなまる)先生の教えでどう変身するか。24分のテンポのある爆笑高座であった。
 ここで二通の離縁状を書かされそうになった
この噺では中川(米朝師匠本名)、関口(ざこば師匠本名)らの知恵を授ける隠居が登場する。春雨師は浜田の隠居である。。故春蝶師匠の本名である。

 そして十一月公演のトリは笑福亭の創作落語の雄・笑福亭仁智師匠の登場となる。
過去、軽くて爆笑一杯の創作落語の、『川柳は心の憂さの吹きだまり』『トクさん・トメさん』『スタディベースボール』『目指せ甲子園』など、幅広い演題を演じていただいている師匠。
出番前に「師匠、今日は何を?」とお尋ねすると無言でまかしときと言わんばかりの笑顔。
 お馴染みの『オクラホマミキサー』の出囃子で高座へ登場。
「ありがとうございます、てなことで、もう一席お付き合い願おうと・・」と、トリとしてのあいさつ。
 そして、「こないだ東京の寄席へ寄せて頂きまして、高座へ上がりますと『待ってました』『タップリ』」と声が掛かります。こないだ大阪で私がやってましたら『手短に』・・・」。
 東京と大阪の違いのマクラで場内を大爆笑に巻き込む。
痴漢防止のポスター :「痴漢は立派な犯罪です」 ・「痴漢、あかん!」
乗車ルール :「きっちり並ぶ」 ・「早いもん勝ち」
警察のポスター :「犯罪防止にご協力下さい」 ・「たれこみ歓迎」
子供の叱り方 :「落ちたらどうするの」 ・「落ちても知らんで」
生命保険にきくこと :「掛け金いくら?」 ・「死んだらなんぼ」

 大阪の善哉、夫婦善哉(さらりと仕込む)、対立軸を強調、「自民党と民主党」「巨人と阪神」。
 「今日は蟹と海老のお話で」と、始まった演題はご自身の創作落語『EBI(エビ)』。
 大阪の道頓堀の名物、蟹と海老。この対決が拡大し、遂に戎橋で果し合いに。必勝を期す海老グループが集結する処から物語がスタートする。
海老グループは、伊勢海老、車海老、ブラックタイガー、ソースの掛け方を嘆く名古屋の海老フライ、ウスターソースを主張する梅田松葉の海老フライ、風邪を引いてるカト吉の冷凍海老、乾燥肌のイ、回転寿司の海老、食べてもらえない幕の内弁当の海老の甘煮、アメリカザリガニ、三河屋えび満月、カルビーかっぱえびせん、エビシュウマイ、厚着した駅前そば屋のエビてんぷら、らが集結。そこに、さる・かに合戦でひどい目にあった猿が参戦。さらに三回脱皮して成長したえび道楽、千日前の亀が帰参。
一方、蟹グループは、平家がに、兜がにと戦上手に加え、かに道楽にくいだおれ人形、ずぼらやのふぐの携帯ストラップ三本柱が揃い万全。一発即発の戎橋。そこへ仲裁者が・・・。
 27分の名演に会場からは惜しみない拍手が起こる。
花束も届きそれを受け取る大満足な師匠であった。  (叶 大入)