もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第349回
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 公演日時: 平成19年 9月10日(月) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 桂   まん我  「寄合酒」
 笑福亭 瓶 太  「大安売り」
 桂   勢 朝  「佐々木裁き」
 桂   きん枝  「繁昌亭十万人突破」
  中入
 桂   枝三郎  「つづら泥」
 笑福亭 松 枝  「三十石」(主任

   打出し 20時55分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手伝い  笑福亭呂竹、笑福亭松五

  平成十九年も九度目の公演となる九月の349回公演。
猛暑ももうお開きの季節でしたが、残暑も猛暑。その中、開催される公演は、前売券もネット予約も好調で当日を迎える。その中をいつものように多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。
木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で、織り込み。今回も多く、焦ってスピードアップ。そして、定刻の五時半に開場。
 いつもながら申し訳ない。列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。当日券のお客様の出足が良く、いつもよりスローペースながら、次々とご来場されるお客様で開演時には満席となる。

 二番太鼓から定刻の六時半、祈が入って、『石段』の出囃子で、九月公演のトップバッターの、当席初出演となる文我一門の総領弟子・桂まん我師が、先月の都んぼ師同様、愛くるしい笑顔をさらにくちゃくちゃにして元気一杯登場。
「えー、ありがとうございます。地元神戸出身で兵庫高校(会場から拍手)、ありがとうございます。あこがれの寄席(恋雅亭)でございまして、まさか、こっち(高座)へ座るとは思いませんでした。そっち(客席)へ座って観てましたから、もう二十年も前ですが、・・・。私事ですが、昨年、賞を頂きまして(拍手)・・・。」、と、東京と名古屋と大阪の祝儀の渡し方が違うという話題で笑いを誘って、本題の『寄合酒』が始まる。
 おなじみの噺であるが演じ手の工夫と演じ方で大きく違う噺である。その噺を持ち前の明るさと口跡の良さ、さらによく通る声で演じる。場内はツボツボで爆笑の渦。
十八分の高座は客席も演者も大満足であった。

 二つ目は、鶴瓶一門から笑福亭瓶太師。
この師も、明るく、愛嬌タップリの笑顔は負けず劣らず。『あばれ』の出囃子同様に、会場から巻き起こる拍手に「いやっ、わー、ありがとうございます」と、自身の喚声で元気一杯、高座へ登場するやいなや会場全体が明るくなる。
 勿論、当席常連の師である。「先ほどのまん我さんは神戸市北区出身とのことですが、ええかげんでっせ。奈良に行ったら奈良出身や言うし、3日前に住民票を移したり・・・。私は川西生まれですが、神戸に勤めてました。兵庫区です(会場から拍手)。」とあいさつ。
 さらに、「ここは、十年しないと前座に出れないです。私、三回目です。出るには厳選なチェックがあります。けど最後はええ加減でアミダくじで決まります」との爆笑マクラから本題の『大安売り』が始まる。
 この噺、鶴瓶師匠も演じられるので直伝か。明るく、明るく演じる。
 町内の丁稚のような体型の力士。江戸の本場所から帰ってきた。成績は、勝ったり負けたり。
様子を聞くと「押し出し、寄り切り、上手投げ、内がけ、うっちゃり、あらゆる技で」と、ところが全部負け。相手が勝ったり、こっちが負けたり。次の所では、土付かず。風邪をひき、部屋で寝込んでおりました。
余興の花相撲で素人相手に3連勝の相手は子供たち。見込みないので廃業を親方に申し入れると「お前が辞めたらチャンコ料理は誰が?と、説得され、しこ名を変えて出直すことに。
「朝ショウユウ」から「大安売り」と改名、「誰にでも負けてやります」。
と、サゲとなった。
 今の旬の横綱朝青龍の話題もクスグリに入れての十八分の熱演であった。

三つ目は米朝一門から永遠の青年・桂勢朝師。
一門ではやや異質の芸風ですが、その元気一杯の高座は当席でも人気者で、多くのファンを持つ。
『大漁節』の出囃子に乗って今回も元気一杯の高座へ登場。
いきなり高座は爆発モード。
「えー、楽屋へ来てください。そのためには噺家とは知り合いになること。噺家の楽屋見舞いは、「大きな花束より小さな札束。アクシュ(握手)よりキャッシュ。ご声援より五千円。元町より谷町。関西人、口は出すけど、金出さん」と、本音を披露すると会場は大爆笑に包まれる。
 そして、「代議士へ祝儀イン(衆議院)」「ご祝儀はいいですけど役人への祝儀は困ったもので」と、始まった本題は、師匠直伝の『佐々木裁き』。
 昔から、役人(公務員)への悪口には、不正に公金の着服や、収賄や横領、資金をポケットに、タダ酒、タダ飯。自分の保身と天下り先の事しか考えない。弱い者いじめと甘い汁を吸う事。
汚職事件を「お食事券」の聞き間違え、など。
 昔も同じで「役人の子はにぎにぎをよく覚え」といった古川柳があるが、その風潮に立ち上がった佐々木信濃守と聡明な四郎吉との問答噺。
米朝師匠の重みのある噺ではなく元気一杯の二十分の高座であった。

そして、中トリは当席常連・ご存知・桂きん枝師匠。
「上方落語を聞く会会長(副会長は桂小枝師匠)」で、天満繁昌亭でも口演回数が多くなり、当席でも上方古典落語の大物を演じていただけることでしょうと、期待の中、『相川』の出囃子が鳴る。
 まだ高座当番が準備中の高座へ登場。会場は大爆笑。
「えー、久しぶりの恋雅亭でございまして・・・。」と、高校時代のあほを競い合った仲間を紹介。
さらに、「今日も『三十石』や『口入屋』などを演(や)ってもええんですけど、筋は知ってますから喋れますけど、トリの松枝さんが長講を譲りまして・・・。」と、マクラは繁昌亭へ。
 「この間、繁昌亭の入場者が十万人を突破しまして、マスコミ各社にFAXかなんかを送りまして大体この時あたりに出るであろうが判ってまして、マスコミに集まってもらいまして、クス球も作りまして準備万端。そして、桂三枝会長と両副会長、まとめる方ともめさす方、どっちとは言いませんが(場内大爆笑)。それに理事が数名。十万人目のお客様を向かえようやないかと、雨降りの日でした。ここだけの話でっせ。よそ行って言いいなはんなや」と、断って「協会側とすれば汚いおっさんよりも・・・・。でしょ、しゅっとした写真映りのええねぇ。選びたいもんじゃないですか。ちょうどその辺りに十二、三人のおっさんの団体がいてはったんですわ。迷いましたけど、その丁度後ろに、
四十四、五の妙齢のご婦人が・・・。あれ、あれ、全員で『そらあれやろ・・』。カチャカチャ(人数を勘定する機械)を、空ウチして当選者を決定・・・。」と、漫談調の高座が続く。
「景品は一年分の繁昌亭の無料招待券と言うと『私、北海道』」と、サゲとなるが、付け加えて、「実は落語も出来るんですけど、トリの松枝さんに譲りまして・・・」と、、お中入りとなる。

 中入りカブリは、三枝一門から桂枝三郎師匠。この師匠も当席常連。
上方落語界でも屈指の幅広い演目を持つ師匠。
今回も『本調子鞨鼓』の名調子でゆっくり登場。
「えー、続きまして桂枝三郎と申しまして、さぞお力落しではございましょうが」と、おなじみのフレーズでマクラがスタート。
 東京で開催された『大銀座落語会』の裏話。昨今の話題をシャレに変えて笑い誘う。
 爆笑を誘っての本題は『つづら泥』。枝三郎師匠の紹介のとおり、大変珍しい噺である。
 第一「つづら」というものをご存知の方も少なくなった現代である。
日本古来の荷物入れで、竹や蔓を編んでつくったもので、もっと判り易く説明すると、おとぎ話の「舌切り雀」に出てくる「大きなつづら小さなつづら」えっ、「舌切り雀」知らん。困った。
大相撲の支度部屋の置いてある力士の衣装などを入れる箱。
 東京では故蝶花楼馬楽師匠やごく限られた師匠が演じられるだけで、上方では桂米朝師匠の口演があるだけではないだろうか。
 しかし、東西ではちょっと構成が違い、東京では、珍しく与太郎が泥棒を演じる。
上方では、導入部を『花色木綿』。サゲは『釜盗人』を彷彿させる逸品と仕上がっている。
 マクラからサゲまで「枝さんワールド」の二十分であった。

 そして九月公演のトリは笑福亭の重鎮・笑福亭松枝師匠。
 約年一回のペースで当席に出演頂いてる師匠。幅広い演題の中から何を演じていただけるかと楽しみにされているお客様の拍手に迎えられて『早船』の出囃子で登場。
「えー、今日はみんななんでこんな早いの・・。いつも短いのに」と、タップリ演じられるうれしさをこめてあいさつ。
マクラから始まった演題は六代目師匠(松鶴)の十八番であった、『三十石は夢の通い路』。
「やれ〜〜淀の町にもなぁ〜過ぎたるものはよぉ〜お城櫓にな、水車よ」
「やれ〜〜二度は裏壁な、三度は馴ぁ〜染みよ、淀の車がな、クルク〜〜ルとよ〜」
「やれ〜奈良の大仏さんをな、横抱きに抱ぁ〜いてよ、お乳飲ませたおんばさんがどんな大きなおんばさんか一度対面がしてみ〜たいよ」
と、舟歌の掛け合いもあざやかな半時間の名演であった。