もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第347回
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 公演日時: 平成19年 7月10日(火) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 桂   よね吉  「御公家女房」
 林家  花 丸  「千早振る」
 笑福亭 猿 笑  「宗論」
 露の 五郎兵衛  「もう半分」
  中入
 桂   都 丸  「宿題」
 笑福亭 福 笑  「瀞満峡(どろみつきょう)」(主任

   打出し 21時00分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手伝い  露の 吉次、桂 三ノ助、露の 團姫

 平成十九年も七度目の公演となる七月の347回公演。
今年も六公演を大入りでお開き。今回も前景気も高水準。前売券(売り切れ)と、ネット予約(締め切り)も好調。さらに当日券の有無の問合せも多い。そして当日。先月と同様に空は「おてんと坊のおしっこ」模様。「えらいこっちゃ」と心配するが、天候は先月のように回復せず雨模様。
 その中をいつものように多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。
木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で、織り込み。今回も多く、焦ってスピードアップ。そして、天候を考慮して定刻の五時半を前に開場。いつもながら申し訳ない。
列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。当日券のお客様の出足が良く、いつもよりスローペースながら、次々とご来場されるお客様で開演時に最後列に長椅子を並べて座って頂く。

 二番太鼓から定刻の六時半、祈が入って、『石段』の出囃子で、七月公演のトップバッターは、吉朝一門から亡き師匠の教えを忠実に守っての高座は若さにプラス落ち着きがあると定評のある桂よね吉師。当席の常連で今回で三回目となります。
 落ち着いて高座へ登場、キッチリと礼をして「一杯のお運びまことにありがとうございます。ただ今から開演でございます。一番バッターとして出て参りました私が桂よね吉と申しまして・・・」と、自己紹介。
「今日は暑いですねぇ。梅雨真っ盛りでこんな時はおおいに笑って、スキッと帰っていただきたい訳で・・・」。そして、「実は私、独身でございまして・・・」と、始まった演題は『御公家女房』。
 この噺、同門の桂九雀師匠が古典落語の『延陽伯』をアレンジした噺で『延陽伯』の一番受ける部分の名前のクダリがない。
ある会で、「お客さんに名前を考えてください」と言って決めた(命名者は旭堂南湖師)そうである。
サゲにも工夫。言葉も慣れるもので物売りとの会話もスムーズになる。難しい言葉を操る物売りのハッピの胸のところに「宮内庁ご用達」。十六分の高座は大受けの連続であった。

 二つ目は、染丸一門から二番弟子の林家花丸師。
明るく、笑顔一杯に演じる師匠譲りの上方落語をお楽しみのご贔屓様もお待ちかねでしょう。
勿論、当席常連で今回で七度目の出演。
 『ダーク』の小気味の良い出囃子で笑顔で登場。
「ありがとうございます。今度は花丸でお付き合いをお願いいたしますが、もう沢山のお客様でありがたいことで」と、あいさつから「そばにいてくれてありがたいのは物知りの方で・・・。逆にええ加減なことを教える楽屋の先輩は『DV=どないでっか、ボチボチですわ』『MRI=漫才も落語も知らんインド人や』」と、マクラで笑いをとって本題の『千早振る』。
 おなじみの噺であるが、まず百人一首の歌の解説をする。知っているようで知らない歌の意味がよく判った。
 そして、本題。歌劇(場内拍手喝采)を演じたり、恐山のイタコが登場したり、随所に花丸師の工夫が満載された二十分の熱演であった。

 三つ目は笑福亭一門から当席常連で上方でただ一人、江戸落語を演じられる笑福亭猿笑師。
『かごや』の出囃子で、涼しげな白地の薄物の着物に紗の羽織で高座に登場する。
この師匠が出てくるだけで何となくほんわかムードが会場一杯に広がる。
「えー、別のお盆のついでに来た訳ではございません。こんな頭してますとお坊さんに間違えられます・・・。私の方は東京の喋りで、この頭をして毎晩剃るのです。手間がかかります」と、自己紹介して、「医者と坊主」の小咄から「宗論はどちら負けても釈迦の恥」と始まった本題は『宗論』。
「浄土真宗」VS「キリスト教」を戦わす親子のかみ合わない論争が笑いを誘う。
途中「笑福亭の内情」も飛び出す。
 サゲとなって、受け囃子を制止し、サービスに踊りをとピンクのステテコに手拭いで鉢巻、準備万端。踊りの基本を紹介して『奴さん』をと高座の袖に引っ込む。
 「えーえ、奴さーん」と共に「冷や奴」を持って高座へ再登場すると、手拍子の場内は一瞬、ポカーンとなり、すぐ大爆笑となった。
「五郎兵衛師匠の準備が出来ました」と、十六分の高座であった。

 そして、中トリは上方落語界の大御所・露の五郎兵衛師匠。
足の調子は今一歩であるが、体調は回復されたとお伺かがいし、「是非に」と、お願いしたところ、「こちらこそ」と快諾頂いてのご出演となりました。
 さらに「正座が出来ないので、腰掛け持っていくさかい」との言葉通り、高座作り。
準備の出来たところへ『勧進帳』の出囃子と、場内全体から沸き返るような拍手に迎えられてゆっくりと高座へ。
「えー、およろしいお後でございましてお付き合いの程を願いまして。大阪の淀川が流れての大阪に入りまして一番の上手にかかっておりますのが長柄橋・。」と、物語の場所を紹介して本題が始まる。
 師匠十八番の怪談物で当席では、平成四年七月の第171回公演以来の再演となった。
この噺、東京のいずれも故人の五代目古今亭今輔、五代目古今亭志ん生、十代目金原亭馬生、三代目古今亭志ん朝。十代目柳家小三治師匠ら多くの演じ手がいらっしゃるが、上方では非常に珍しい噺で五郎兵衛師匠や春之輔師匠が十八番とされている。
 因果応報の噺であるので演じ方次第では後味の悪い噺となるのだが、思わずゾッとする噺に仕立て、
サゲで思わずホッとする演出。円熟味を増した師匠ならではの口演。十五分であった。

 中入りカブリは、ざこば一門から総領の桂都丸師匠。
ゆっくり高座を下りられる師匠を会場全体から万来の拍手が見送った。
上方落語の大ネタから爆笑噺、そして、創作落語と幅広い演目の中から今回は何を演じられるか場内の期待の中、軽快な『猫じゃ猫じゃ』の出囃子で巨体をゆするように登場。
「えー一杯のお客様で・・・。これからも落語のファンの獲得を(場内爆笑)」。
 この頃は小学生に落語を聞かせて大爆笑をとったマクラで場内を大爆笑に誘って本題が始まる。
桂三枝師匠作の創作落語『宿題』。これが実に面白い。
作品の良さにプラス、都丸師匠の口演が爆笑を誘い続ける。
息子の塾の宿題(算数の鶴亀算や過不足算)に悪戦苦闘する父親を漫画チックに扱った作品である。すっかり自分の十八番となっている秀作は
何度となく続いた大爆笑に会場も師匠自身も大満足な半時間であった。
**問題**
 月夜の晩に池の周りに鶴と亀が集まってきました。頭を数えると16。
足の数を数えると44ありました。鶴は何羽、亀は何匹でしょうか。

 そして七月公演のトリはお待ちかねの笑福亭福笑師匠。
『佃くずし』の出囃子で本日一番の拍手で迎えられ登場。
「えー、ようこその・・・、もう一席で」とあいさつして、いつものパワフルなマクラから始まった
演題は『瀞満峡』。
 三人家族がキャンプに行って巻き起こる爆笑創作落語。日本でありながら通じない言葉や誰も行ったことのないキャンプ地、老死如意嶽の瀞満峡。
そこにはジェロニモ、ランニングベアー、チャイニーズ系のターザン、チータ、そしてブラックホールと次々にギャグが飛び出す福笑ワールド。
場内、大爆笑の中お開きとなった。二十八分の熱演であった。