もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第346回
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 公演日時: 平成19年 6月10日(日) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 桂   福 矢  「牛ほめ」
 笑福亭 遊 喬  「芋俵」
 桂   三 歩  「青い目をした町内会長」
 桂  小春團治  「大名将棋」
  中入
 笑福亭 仁 福  「寝床」
 林家  染 丸  「子はかすがい」(主任

   打出し 21時00分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手伝い  桂 三ノ助
 平成十九年も六度目の公演となる六月の346回公演。
今年も五公演を大入りでお開き。今回も前景気も高水準。前売券(売り切れ)と、ネット予約(締め切り)も好調。さらに、当日は日曜日とあって、当日券の有無の問合せも多い。
 そして当日。先月と同様に空は「おてんと坊のおしっこ」模様。
さらに一時的であったが雷までが鳴る。「えらいこっちゃ」と心配する中、天候は回復し、その中をいつものように多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術(小春團治・遊喬・福矢・三ノ助師も楽しそうに輪に加わる)で、織り込み。今回も多く、焦ってスピードアップ。そして、定刻の五時半に開場。いつもながら申し訳ない。列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。日曜日なので、当日券のお客様の出足が良く、いつもよりハイペース。次々とご来場されるお客様で開演時に最後列に長椅子を並べて座って二番太鼓から定刻の六時半
 祈が入って、『石段』の出囃子で、トップバッターの福團治一門から桂福矢師。
 師匠や一門先輩から基礎をたたき込まれた本格派で、プラス自身の工夫の高座は全開。和歌山県出身で平成六年入門で、当席は今回で四回目の出演となる。
 元気一杯、飛び出すように高座へ登場すると「ありがとうございます。ただ今から開演でございます。こちらに名前が出ております。福島の福に弓矢の矢という字を書いてこれで『ハルダンジ』と発音します」と、自己紹介。不景気の世の中ではやっている業種にテレビショッピングのカリスマ・マーフィー岡田さんの話題をマクラに、笑いを誘う。「こんな、はいり方でええんかなぁ」と本題の『牛ほめ』が始まる。
 この噺、前座噺の定番で当席でも演じられる回数も多い噺。その噺をきっちりとテンポよく演じる。随所にちりばめられた笑いのツボで、キッチリ笑いを誘った十八分の高座であった。汗を拭きながら「お先に勉強させて頂きました」と、楽屋にあいさつする満足げな福矢師であった。

 二つ目は、松喬一門の二番弟子の笑福亭遊喬師。
今回も、明るく豪放磊落な芸風で演じる師匠譲りの上方落語を元気一杯演じるべく早くから楽屋入り。長身で角刈りの風貌だが、愛くるしい笑顔でネタ帳を見ながら、今日の演題を考え中。
 小生に「『芋俵』演(や)りまっさ」と、言い残して『琉球節』の出囃子で高座へ。
 「えー、変りまして、私、笑福亭遊喬のほうでお付き合いを願っておきますが本当に大入り満員でございまして、ありがたいもんでございます」と、挨拶。
 「夏場になりますと、着物に気を使います」と、マクラ。このマクラが次々続く。ポリエステルの羽織と着物を「サランラップの上にクレラップを巻いているようで暑い」「絹であれば羽織もスッと脱げますが私ら、静電気が・・・。楽屋にあった防止スプレーをかけたら殺虫剤。
『お前、そんなんかけて何してんねん』『へー、キンチョウほぐしてますねん』」場内、拍手喝采・大受け。感度・最高。
 さらに爆笑マクラは続き、「えー、皆様はほとんど行ったことはないと思うんですが刑務所の慰問。みな同じ服で同じヘアースタイル、刑務官の言うことしかききません。『笑え』言うたら笑いますし、『やめ』言うたら笑うのやめますねん。護送車、大きなバス、グレーの、あれで迎えに来てくれますねん。ヘアースタイルも五分刈りやし、衣装の入った大きいカバン持ってねぇ、駅まで迎えに来てくれます。『今から、お世話になります』。帰り『お世話になりました』普通、寄席やったら早い人から前でっしゃろ。むこうは罪の重い人から順番に座ります。
 たとえば、ここが刑務所やったとしましょ、一番後ろはましです。懲役一年。真ん中が五年、この辺り(前の方を差して)が、無期懲役、ここは死刑」場内ドッカーン。
 「こないだ、失敗しまして、『花色木綿』という盗人の噺しまして、箪笥を上から開けたら、前から『ちゃう、ちゃう、下から開けるねん。上から開けたら閉める時間がかかる』。
 場内大受けのマクラから始まった本題は『芋俵』。
当席では初めて口演される演題である。やや下ネタかかっているので演じ方次第では後味の悪い噺になってしまうのだが、マクラで暖めた場内の笑いの温度を引っ張りサゲまで爆笑の連続の二十分の高座であった。

 三つ目は三枝一門から当席常連の桂三歩師。
愛嬌タップリに演じられる師匠作の創作落語は自身の工夫も加わってさらにパワーアップしている。
 今回も楽屋入りするとさっそくネタ帳を確認。今日の演題を平成十年以来の口演の『青い目をした町内会長』に決定。
 お馴染みの自身の芸名にちなんだ『三百六十五歩のマーチ』この師匠が出てくるだけで何となくほんわかムードが会場一杯に。
 「この前、南半球のニュージーランドへ行って来まして・・・。大阪の人はミナミハンキュウへは行けません。阪急はミナミにはありません」と、爆笑マクラが続き、本題へ。
 師匠直伝の噺の骨格のしっかりしている処に自身の芸風をマッチさせ、すっかり自身のものとして出来上がっているため、バツグンに面白い。場内も爆笑の連続であった十九分の口演であった。

中トリは春團治一門から桂小春團治師匠に飾って頂きます。
 この師匠も当席ではお馴染み。今回は初の中トリと大張り切り。
『小春団治囃子』の出囃子で登場すると「えー、トップの福矢がポリエステルの着流し、二人目の遊喬が羽織は着てましたがポリエステルで、三人目の三歩君が紋付やけれどシールでして、私が正真正銘の絹でございまして、英語で言いますとシルク。しかも、ワッペンではございません。染め抜きでございまして、袴まで着けております。三十年やるとこういう衣装が着れるという、今日は衣装の出世魚でございます・・・」。
 さらに、「我々の世界は格付けで呼び名が違いまして『師匠』と呼ばれますと一人前で・・・」と、『師匠』『先生』『社長』と爆笑のマクラ。
 紙面の都合でお伝え出来ないのが残念。「昔は『殿』、大名で・・」と、本題が。
先月、自作の創作落語の中から今回も選りすぐりの一席の何を。と、ご紹介したが、今日の口演は、古典落語を土台とし、後半に創作をプラスした、『大名将棋』。この噺も当席では初口演。負けず嫌いの若殿が将棋で家来を苦しめる。長老にたしなめられ、将棋はやめるのだが、次に始めるのが、落し噺。師匠曰く、「後半にもう少し工夫をしないと」と言われているが、なんのなんの、実に面白く、可愛くて恥ずかしそうに落し噺を演じる殿様と聞かされ苦笑する家来が生き生きと演じられ秀作であった。

 中入りカブリは、仁鶴一門から笑福亭仁福師。
ここは皆様には説明不要な文句なしに面白い、爆笑上方落語を愛嬌タップリに演じるべく『自転車節』で登場。
 「ありがとうございます、私の方も落語でございまして、お後お楽しみに聞いて頂いたらありがたいわけでございますが、お後は染丸師匠がタップリと、やってくださるそうでございますので、私も邪魔したらあきませんのでほんの二、三分で染丸師匠にバトンタッチ・・・」。
 そして、繁盛亭の話題で笑いを誘って始まった演題は師匠十八番中の十八番の『寝床』。十八番なので発端からサゲまでツボツボで爆笑が起こる。そして、実にコンパクトで半時間かかるこの噺をどこをカットしたのでもなく、早口でもなく、間もキッチリとって十五分で演じる。実に見事。

 そして、六月公演のトリは四代目林家染丸師匠にとっていただきます。
毎年一回のペースで当席でトリを勤めて頂いている師匠。今回も早くから楽屋入りされ準備万全。
 名調『正札付き』に乗って高座へ登場し、いつもながら見事に曲の切れ目と頭を下げるのが同時となる。
 「ようこそのご来場でございまして厚く御礼申し上げます。ただ今は仁福さんでございまして、『寝床』という、彼十八番の落語でございます。彼の声がよろしい・・・」と、マクラがスタート。
 落語ブームで当席、繁盛亭の話題から、ご自身の夫婦の話題、三十年もたちますと訳のわからん会話で「おいおい」「何」「何やない、こないだのあれなぁ」「あーあれかいな、あれどないした」「あれちゃんと何しといや」「あっあ何しといてくれたんか」から本題の『子はかすがい』が始まる。
 東西にある噺であり、母親と息子が家を出て行く型と母親だけが出て行く型があるが、染丸師匠は前者での半時間の口演。笑いあり、感動の拍手ありの秀作であった。