もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第345回
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 公演日時: 平成19年 5月10日(木) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 林家  染 弥  「時うどん」
 月亭  遊 方  「たとえばこんな誕生日」
 笑福亭 伯 枝  「運廻し」
 桂   雀 松  「天神山」
  中入
 桂   枝女太  「鹿政談」
 月亭  八 方  「けいこ屋」(主任

   打出し 21時00分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手伝い  笑福亭遊喬、桂 三ノ助、林家央二
 平成十九年も五度目の公演となる五月の345回公演。
今年も四公演を大入りでお開き。今回も前景気も高水準で、前売券(売り切れ)と、ネット予約(締め切り)も好調に推移。
 そして、当日。先月と違い空模様は「おてんと坊のおしっこ」。その中をいつものように多くのお客様が列を作られ開場を待たれる。木戸口では事前に準備された多くの折込まれたチラシを人海戦術で織り込み。今回も多く、焦ってスピードアップ。そして、定刻の五時半に開場。いつもながら申し訳ない。列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。平日とあって、いつもよりややゆっくりのペースで次々とご来場されるお客様で開演時に最後列に長椅子を並べて座って、二番太鼓から定刻の六時半。

 祈が入って、『石段』の出囃子に乗って、トップバッターは、林家一門きってのイケメン、林家染弥師の登場。
師匠、一門先輩から基礎をたたき込まれ、さらに林家の「もっちゃり・こってり」の芸風もプラスされ高座は当席でもお馴染み。会場から拍手と共に声もかかる。
「えー、お足元のお悪い中、ようこそご来場下さいましてありがとうございます」の、あいさつから今日もあった学校寄席のマクラへ。中学・高校ではなく小学校での話題から。田舎の学校では大爆笑だが、大阪では受けない。ウルトラマンの小咄をリクエストされ「ウルトラマンもヤクルト飲むんですか? ジョア」には、「早よ、帰れ」。
 そして、始まった演題はお馴染みの『時うどん』。明るくて陽気なハイテンポな口演に会場からツボツボで爆笑が起こる。
サゲにも一工夫を加えた、お馴染みの噺で大爆笑の連続であった十八分の高座であった。

 二つ目は、トリの八方一門から月亭遊方師。
『岩見』の出囃子で元気一杯飛び出すように高座へ。
「ありがとうございます。かわりまして、月亭遊方でございまして、大好きな恋雅亭でございまして、僕の方もパァとご機嫌にいきたいと思いますが」と、現代的なあいさつから高座がスタート。
「今日は誕生日のお話しを・・・」と、始まった演題は、自身の創作落語『たとえばこんな誕生日』。「若い人は誕生日を星座で、私は昭和三十九年のおとめ座で、キッチリした性格で」と『どんべい』の作り方を披露。「もう少し年配者は干支、六十以上は、その年は何があった・・・」と、「ちなみに干支と性格は、子(ちょろちょろしてる)、牛(おっとりしてる)、寅(気がきつい)、卯(おとなしい)竜(昇ったり下ったり)、巳(しつこい)馬(行動力ある)、ここまではよろしいけど羊は(毛深い)会場大受け。
 そして、「キー、ウワァ、ガシャン」と、交通事故のシーンからスタート。
救急隊員に助けられ、救急車で緊急病院に到着するまで、ギャグがドンドン飛び出す。
 一人ぼっちで誕生日をおくる可愛そうな主人公のために病院で誕生会を、たまたま医師会で出張して来ていた有名な先生まで参加して開催することになる。さて、その結末は・・・・。元気一杯の二十分の高座であった。

 三つ目は笑福亭一門から当席常連の笑福亭伯枝師。
この師匠が出てくるだけで何となくほんわかし、愛嬌タップリに演じられる落語は会場全体が華やかになること請け合い。
 『白妙』の出囃子で元気一杯高座へ登場して第一声は「織田無道です、よろしくお願いいたします」の、いつものツカミ。やや反応が悪い。
続いて恋雅亭をBワン角座と比較して褒める。「繁盛亭へ出たらどう言うか判りません」と笑いをとる。
 そして、入門当時、二十五年前の角座の怖かった想い出を、かしまし娘、宮川左近ショー、ちゃっきり娘、レツゴー三匹、敏江・玲治、暁伸・ミスハワイ、そして、フラワーショー、特に、ばらさんの顔が怖かったとのマクラには場内好反応(織田無道より有名か)。
始まった演題は、「師匠が酒の松鶴ですから酒の噺を」と、「薬上戸」「にわとり上戸」「壁塗り上戸」から、始まった演題は『運廻し・田楽喰い』。
この噺、『寄合酒』と同趣向の噺であるので、時間がある場合は『寄合酒から運廻し』と続ける場合があるが、今回は『運廻し』を二十分で演じる。
 「ん」の出てくる言葉には八本から新しいギャグが「嫁はん、逃げてん、どこ行ってん、知らん、判らん、たまらん、帰ってけえへん、キャサリン」。「嫁はんは外人か」「ハーフ」「どこの」「板宿と新開地」会場は大受け。
 中華料理を題材に「テンシンハン、ワンタンメン、ラーメン、レーメン、チャーシューメン、ニクマン、アンマン、ブタマンと、これだけ食べたら腹パンパン」で十五本で大爆笑。
 テンポよく「新幹線、今晩、突然、停電、全線、動かん、原因、わからん、運転、困難、十七本」には拍手が起こる。二十分の熱演であった。

 そして、中トリは枝雀一門から神戸出身の桂雀松師匠。この師匠も当席ではお馴染み。
幅広い演題の中から今回も選りすぐりの一席と期待の拍手と『砂ほり』の出囃子に乗って高座へ登場。
「えー、どうぞひとつ続いて聞いていたくわけでございますが、沢山のお運びでございまして、楽屋一同、気の狂わんばかりの喜びでございます。えーどうぞ、私のほうも一席お付き合いを願っておきます。お付き合いといいましても、決して結婚を前提としてではありませんのでご安心下さい。我々は弱い商売でございまして、・・・来ていただいて聞いていただくだけ、皆様方の庇護の下に小鳥のように・・・小鳥にしたらえらい汚い・・・」と、雀松ワールドへ突入。
 「今日はちょっと雨模様でございますが、春、スポーツもたけなわでタイガースもあるべき姿(場内大爆笑)。懐かしい思いを・・・」と、松阪の一球で四十万。構えただけで十万円。私、ここへ出てきて四十円いってまへん・・・。けどおかしいですわ、いきなり『こんにちわ、こっち上り』では・・・」。
 「昔は表へ出て、世間話をしてるてな・・・」と始まった演題は枝雀師匠の十八番だった『天神山』。師匠直伝である。発端から墓見へ、しゃりこうべを供養して、幽霊の嫁はんを迎え、隣人が同じく探しに行くが見つからず狐を助ける。ほんわかとした、雀松流の口演は続き、ツボツボで会場から大爆笑が起こる。前半は幽霊との因果応報の噺、後半は狐を嫁さんにする噺で演じ方で暗い噺となるのだが、明るく明るく演じる。場内は大爆笑。なお、後半は芝居の蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)、通称「葛の葉」の四段目の「子別れ」が下書きとなっている。この噺は人形浄瑠璃のひとつで和泉国信太(しのだ)の森の白狐が女に化けて安倍保名(あべのやすな)の子となる安倍晴明を生んだという伝説を脚色したもの。
 サゲは師匠と同様、「子供に言い聞かせて姿を消します。ある春の日のお話しでございます」。半時間の秀作であった。上手い !

 中入りカブリは、文枝一門から「しめやん」こと桂枝女太師。
中入り後ののこの位置(中入カブリ)で爆笑上方落語を愛嬌タップリに演じるべく『岸の柳』の出囃子で高座へ。
「えー、ありがとうございます。枝女太でございまして、もう三十年やってます。さっきの雀松さんの方が年上なんですがやっぱいあるとこにあるものがないと」と、自己紹介。
 そして、当席の想い出を語る。遅れてしくじった話題である。出演者から調べてみると、平成五年四月の十五周年記念公演での出来事であった。
米平、枝女太、春駒、米朝、中入、鶴瓶、染丸、ざこばの各師匠連がズラリ揃った記念公演で、遅れあやうく米朝師匠の後での出演になるところであった(これは超一級の冷や汗もの)。
 充分笑いを誘って始まった演題は故文枝師匠の十八番だった『鹿政談』。
師匠譲りの、登場人物の描写も見事な二十二分の熱演であった。

 そして皐月公演のトリは「師匠も阪神も絶好調?」月亭八方師匠。
『夫婦漫才』の出囃子で登場。「えー、ちょっと声の調子が悪ございまして・・・」と、お馴染みの爆笑マクラが始まる。
今日はお亡くなりになった横山ノック氏の話題。
「麻雀が好きな人で、メンバーを集め方。単騎待ちの牌を額に押しつけて、跡が残ってチョンバレだった」のエピソードで会場を爆笑の渦に巻き込む。
 そして「この年になってネタ下しをするとは思わなかった」と断って「こんちわ」と、元気一杯『けいこ屋』がスタート。「もてるためには顔とし、後は芸や」とけいこ屋へ行くことを勧められた主人公が芸事を習いに小川市松師匠の元へ。
 お馴染みの「越後獅子」だけではなく「木遣りくずし」「宝船・七福神」。そして、「すり鉢」を教わって物干しでけいこしてサゲとなった、師匠の「これでどうだ」とばかりの三十八分の名演であった。