もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第342回
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 公演日時: 平成19年 2月10日(土) 午後6時30分開演
 出演者      演目
   桂   阿か枝
狸の賽 
  笑福亭 恭 瓶平の蔭・博多弁 」
  桂   米 輔 「親子茶屋
  
  中入
  
桂   蝶 六 「ぜんざい公社
   笑福亭 鶴 瓶 「松岡&たちぎれ線香 (主任)
                  
   打出し 21時 15分
     お囃子  林家和女  
     

 平成十九年の「新春初席」の341回公演も無事お開きとなり、二月如月公演を迎えることになりました。
一月公演での前売券から絶好調。当日だけで半数の前売券が売れる人気。翌日からも風月堂さんでの前売券も売れ、ネット予約もどんどん入り、一月の二十日時点で売り切れ、締め切りとなった。
 その後も電話やメールで問い合わせが入る中、これで雨か雪ならどうしようとの心配が当日まで続いた後、
当日を迎える。晴(今回もセーフ)。とは言っても寒さも一段と厳しくなった、朝十時過ぎ、風月堂さんから電話が入る。「当日券を求められるお客さんが並んではります」。そして二時半から本格的なお客様の列が出来る。
 僅かな当日券も売り切れ。お客様の列はどんどん長く、出足は衰えることなく本通りから脇道へ長〜く続く。会員様からは次々と「どないなってんの、これでもいつもより早く来たのに」「鶴瓶さんやからねぇ」「凄い景気やなぁ」と、言いながら列に加わられる。チラシも次々に到着し、そのチラシをいつもながら人海戦術で織り込む。そして、定刻の五時半開場。列を作って待っておられたお客様がご入場され席が次々と埋まっていく。
 すぐに満席となり、立見のお客様も出る。

 二番太鼓から定刻の六時半、祈が入って、『石段』の出囃子に乗って、トップバッターの故文枝一門で地元兵庫県明石市出身の桂阿か枝師が登場。芸名の由来は皆様ご存じの通り、兵庫県明石市出身「あかし」。
 登場すると、「えー、ありがとうございます。今年はイノシシ年でございまして、私も年男で・・・」
と、一門の中でも師匠の口調に最も似ている口調でスタート。
 マクラは干支の話題「最近、干支を知らない噺家もおりまして、『お前、干支知ってるか?』『干支くらい知ってますよ』『ほな、ネー(子)は?』『ネー、判った、猫』『違う』『あっ、すみません間違えました、猫はミー(巳)や』」(会場大爆笑)
 そして、「噺の中にも動物の出てくる噺は沢山ありまして・・」と、始まった演題はお馴染みの『狸の賽』。
 基本に忠実に間も充分取った名演。ツボツボでは会場から大爆笑が起こる。十四分の高座であった。

 二つ目は、トリの鶴瓶一門から笑福亭恭瓶師。
落語にかける情熱は師匠譲りで、一門では笑瓶・晃瓶・純瓶・達瓶に次いでの五番弟子で昭和61年入門。
 今回は当席、初出演となります。開演前に「すみません。長いこと出てもらわんと」に、笑顔で「いやっ、何回か言ってもらったですけど、こっちこそすみません」と謙虚。
「恭瓶はこの頃、おもろいで!」と、師匠のお墨付き。
『いやとび』の出囃子で高座へ登場し、さっそく自己紹介。会場から声もかかる。
「ありがとうございます。笑福亭恭瓶と申しまして、鶴瓶の五番弟子になりまして、割と偉いんです。
実は火曜の朝九時に師匠から電話がかかってきまして『あ、俺や、お前なぁ、福岡出身やなぁ、今度の恋雅亭な、博多弁でやったら・・・』ええかげん言葉で・・・」と、まずは小咄を紹介すると受ける。「いけるねぇ」と、始まった演題は『平の蔭(博多弁)』。大師匠の六代目の十八番を自分なりにアレンジ。博多弁の面白さを充分盛り込んだ二十分の秀作であった。

 そして、中トリは米朝一門の重鎮・桂米輔師匠に飾っていただきます。
今回も師匠直伝の多くの演題の中からの十八番を演じていただけると期待の中、『獅子舞』の出囃子でゆったりと高座へ「えー、もう出てくるなりこちらの天井が落ちるほどの拍手が頂きまして・・・、変わり合いまして、私の方はでお付き合いを願っておきますが・・・、なんか、漫画のコボちゃんみたいな」のお馴染みのフレーズに会場はクスクス笑いから爆笑に変わる。
「そない笑われると心細いのでございますが」と、笑いをうまく切り返えて色街の話題を川柳で紹介して、「子供、子供」と、始まった本題は師匠(米朝)の十八番の『親子茶屋』。
その噺をキッチリと趣をもたせて演じる。二十五分の高座であった。
この噺の中でも、色々な言葉が登場する。
・しだらがしだら=行いが自堕落。  ・ほたえる=ふざけて騒ぐこと。
・鈍=のろまでへまなこと      ・あんじょう=うまい具合に。
・どんならん=どうにもならないこと。・ねき=そば・かたわら・きわ。

 本日は三席で、お中入りとなる。熱気溢れる会場から満足げなお客様がロビーに出てこられ飲み物が飛ぶように売れる。

 祈が入って、中入りカブリは、春蝶一門から桂蝶六師。
師匠(春蝶)の明るさを一番引き継いでいる師匠ですので、今回もこの位置(中入カブリ)で爆笑上方落語を愛嬌タップリに若々しく演じるていただけると期待の中、『乗合船』で高座へ登場。
 「えー変わりまして蝶六のほうでお付き合いを願っておきますが、もう、一杯のお客様でありがたいもんでございますねぇ。えーなんか落語ブームと言われておるんでございますが・・・」と、「タイガー&ドラゴン」からブームが来て、天満天神繁盛亭を紹介して、関西と関東の言葉の違いを喧嘩を題材に面白く紹介し、当席は「民の力」で頑張って運営していると紹介して、「もしもお役所がぜんざい屋をやったら」と、始まった演題はお馴染みの『ぜんざい公社』。
 師匠の春蝶師匠も軽く陽気に演じていたこの噺、一門の伝統を生かしての口演は実に耳障りが良い。
 この噺、多くの演じ手がいるが、多くの人が感じている役所の堅苦しいイメージを誇張して演じるにだから良く受ける。

 如月公演のトリは笑福亭鶴瓶師匠にとっていただきます。
早くから楽屋入りされ、「お客様が十一時から並んでおられる」に、大感激され、「二席でもええかなぁ」と、やる気ムンムン。『新ラッパ』の出囃子で満員の客席からの大喝采に迎えられ高座へ。
会場からのクスクス笑いを使って「沢山来て頂いてありがとうございます。
何がおかしいんですか、緊張しないと思ってるんですか、しますよ」と、マクラが始まる。
 『たちぎれ線香』の話題。サゲが判らないので、昔の花街の仕組みを説明を始めるが、「いや、今日来てはる、お客様は初めて落語を聞く方も多いで・・・。今日は早くから並んでもらってるし、二席やろか・・・(会場からは大喝采)。やります。まず『松岡』。そして、『たちぎれ』も演(や)ります」。
 私(わたくし)落語の最新作『松岡』が始まる。
高校時代の友人との実際あった事実を爆笑落語に仕上げられ会場は爆笑の連続。
サゲも会場も直前に判ったとあって、ジワジワ・ドッカーン。
そして、見台を引いてムードを変えて、再び花街の話題。友人の中村勘三郎邸へ乱入未遂事件から、会場の笑いをぬって『たちぎれ線香』が始まる。
 古今東西の師匠連の名演をベースに自身の工夫をプラスした三十分の口演は、丁稚定吉に親族会議の様子を聞き出そうとするクダリから、お囃子さんとの息もピッタリのサゲ前のクダリでは、涙腺が緩くウルウル状態のお客様も多かったであろう。
八十二分の長講に大満足のお客様と師匠であった。(叶大入)

 ここで、鶴瓶師匠の応援団長を自認する当席での師匠の口演記録を振り返ってみたい。
師匠が当席に出演されたのは、今回で二十九回目となる。最近は年に一回のハイペースである。
 師匠が初めて当席へ出演されたのは、開席間もない昭和五十三年十一月の第八回公演、演題は『いらちの愛宕詣り』。
当時、師匠は「僕は師匠から三つしか噺を教えて貰っていない」と、笑いを誘っておられた。
『いらちの愛宕詣り』『ミスタードリーマー(改作:夢八)』打飼盗人』『打飼盗人』『堪忍袋』『打飼盗人』『死に目(粗忽長屋)』『言葉アラカルト』『相撲場風景』『つるべ噺』と、続く。
 そして、転機が訪れる。平成五年十一月に鶴瓶師匠は感じておられないが六代目松鶴師匠の十八番の『胴斬り』を演じられた時点が大きな分岐点。
 トリの染丸師匠に刀の抜き方を真剣に質問されておられた。
ここから、『鴻池の犬』『ミスタードリーマー(夢八)』『化物使い』『大安売り』『二人癖』『長短』『化物使い』と、古典落語への傾注が進み当席への出演頻度もUPする。。
 そして、春風亭小朝師匠からの嬉しい宣告を受ける。
「お前、落語やったら、ええと思う」との押しとリクエストを受け、『子はかすがい』『宮戸川』『子はかすがい』『はなし亀』『宮戸川』と名演が続き、「わたくし落語」がプラスされて更なる充実が進む。
『実録・長屋の傘』『お母ちゃんのクリスマスツリー(現在は改名)』、そして今回の『松岡』。
そして、『らくだ』『愛宕山』『たちぎれ線香』と、古典落語の大物を師匠の感性をプラスしての好演となる。
 さて、次の演題は?  
今年の十一月のネタ下ろしを目指して六代目師匠の十八番を現在仕込み中である。お楽しみに。