もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第325回 | |
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公演日時: 平成17年 9月10日(土) 午後6時30分開演 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
出演者 演目 桂 吉 弥 「犬の目」 林家 花 丸 「厩火事」 桂 枝三郎 「テレビ葬式宿題」 露の 五 郎 「蛸坊主」 中入 桂 米 二 「ろくろ首」 笑福亭 仁 智 「トクさん・トメさん」(主任) 打出し 21時00分 お囃子 勝 正子 手 伝 露の團姫 |
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2005年も絶好調の当席、昨年十二月からの大入公演も八月公演で大入連続記録は 9。 そして、九月公演を迎えました。 残暑も残る中、前景気も好調で当日を迎える。 当日は、いつも通り、開場を前に長い列が出来る。その中、五時過ぎから多く届いているチラシの折り込みを開始して、多くのお客様が列を作られ開場を待ちわびる中、五時半の定刻に開場。列を作り待っておられたお客様がご入場され、席が次々と埋まっていく。六時過ぎには客席はほぼ満席。開演時間には、客席は立ち見が出る大入満席 (昨年十二月から十公演連続の大入)。 その公演のトップバッターは、吉朝一門から桂吉弥師。先月のあさ吉師の弟弟子で、当席の常連で300回以来の出演となる。師匠譲りの口跡と風貌の良さから繰り出される落語を楽しみにされている老若男女にファンが多い。特に当席では、元神戸大学落語研究会出身でもあり熱狂的。当席では慣れたもので一番に楽屋入りし、高座に昇っての稽古にも余念がない。 準備万全の中、『石段』の出囃子で吉弥師が登場。 「えー、いっぱいのお客様でございまして、まずは米朝門下の桂吉弥でお付き合いを願っておきます」と挨拶し、昨年のNHK大河ドラマでの出演秘話を紹介して笑いを誘う。 そして、「俳優は歯を大事にする」と、自らの歯医者体験談で笑いを誘う。 「歯医者へ行きましたら言葉少ないですなぁ。『あ』しか言いませんで、あ、あ、あー、あ〜あ、あっ・・・・。お、おー、お〜っ、けど『え』と言われると不安になります」。と、医者の話題で充分会場を暖めた後、すっと本題へ入る『犬の目』である。落語ファンなら知らない人はいない程のポピュラーな噺であるだけに逆に力のいる難しい噺でもある。ましてや、トップの出来不出来がその日の会に大きな影響をあたえるとあっては重責。その重責を爆笑の連続で見事に果たした十六分の高座であった。 二つ目は、林家一門から林家花丸師。この師も当席では常連で、今回も林家一門伝統の「はんなり、もっちゃり」の芸風とややポッチャリした体型を引っさげ初の二つ目として登場となる。 マクラは結婚式の司会で出会った珍しい名前の紹介。「『妻鳥さん』をなんと読みますか? これが『めんどりさん』。結婚は縁ですなぁ・・・・」と、始まった演題は『厩火事』。 東京の八代目桂文楽師匠の名演から脈々と受け継がれている江戸落語の大物。最近は上方でも演じる師の多い噺。当席でも文太、都師匠が演じられている。 三つ目は三枝一門から「えださん」こと桂枝三郎師。 創作落語の師匠と古典落語の大師匠からの口伝された多くの十八番の中から今回は何を?と、期待の中、『本調子鞨鼓』の出囃子で高座へ。 「続きまして桂枝三郎と申しまして、さぞ、お力落としの方も・・・」と、いつものフレーズからスタート。 いつもながら達者な話術で「なんばグランド花月」のお客様。今年、次々とお亡くなりになられた話術の名人、吉本の会長、桂文紅師匠、大師匠の文枝師匠、染語楼師匠、ヨハネパウロ二世、岡八郎師匠、旭堂南陵師匠、そして露の五郎師匠(場内大爆笑)・・・。」 そして、笑ってはいけない葬儀でついうっかり笑ってしまう光景を紹介し、続けて、「もっとも、笑ってもええのに笑いがない方が辛い(爆笑)」と続く。 そして、始まった演題は当席では初めて演じられる『テレビ葬式』。 この噺、桂文紅師匠の創作落語であり、小生が初めて聞いたのが昭和48年で、その後、昭和50年から演じられ始めた師匠にあたる三枝師匠の名演が有名であった。その直伝であるので悪かろうはずがない。随所に師匠の息を生かしながら自身の工夫を織り交ぜ、サゲも工夫を凝らしての25分の秀作であった。 降りてこられた師匠は「久々、今日のトリは仁智師匠やから、前で創作落語でもと思てなぁ。よう受けたわ。ええ、お客さん。また出してよ」。 そして、中トリは上方落語界の長老・露の五郎師匠。 ご存じの通り十月に「二代目露の五郎兵衛」襲名を控えられた、老いて益々盛んな師匠である。 楽屋入りされた師匠と・・・。 小 生 「襲名、おめでとうございます。いよいよ来月ですねぇ」 五郎師 「おおきに、パンフにも書いてもろて、色々押してくれはる人がおおうて、嬉しいこってす」 小 生 「お体の調子は、いかがですか」 五郎師 「ええ、足の筋肉を悪うしてねぇ。困ったもんですわ」 小 生 「新治、千橘、團四郎ら一門の師匠連にも出て頂いてありがたいことです。新治師匠は『狼講 釈』をちゅうてはりました」 五郎師 「ええ、珍しい噺ですわ。今は誰もやりまへんやろ」 小 生 「ちょっとええ昔の臭いのする、達者な師匠で」 五郎師 「その通りで、昔でいう『小味(こあじ)な』タイプです」 そして、ゆっくり万雷の拍手と『勧進帳』の出囃子に乗って高座へ。まずは『彦八祭り』の紹介から、会場でもある生魂神社の紹介、そして、昔そこにあった茶店での出来事、『蛸坊主』が始まる。当席では、150回、200回公演と、今回で三度目となる。 終演後、この噺について師匠に伺った。 「稲荷町の師匠(八代目正蔵)から習いました。文我君(先代)も習ってるで、彼は演じてないけど、これ、元々こっち(上方)の噺なんやで」 中入りカブリは、米朝一門から桂米二師匠。 「ありがとうございます。タップリたのみますよ。先月の都丸師匠『千両みかん』を35分でした」「中トリですやん。やはり位置(出番)が違いまっせ」と、見識あふれる回答。 中入後、高座へ登場すると、「ちょっと、声帯をいためておりまして、普段はボーイソプラノのようなええ声なんですけどご辛抱頂きまして・・・」とスタート。 そして、「夏場を涼しく過ごすには怪談噺なんかええわけですが・・・」と、中座での『四谷怪談』での爆笑裏話を紹介して、落語の怪談話『ろくろ首』が始まる。 師匠の米朝師匠は演じられない噺であるが、兄弟子のざこば師匠の口伝ではないだろうか? きっちりと行儀良く演じられる噺に場内は爆笑の渦。トリにバトンタッチとなる。 さて、七月公演のトリは、お待たせいたしました。笑福亭仁智師匠です。当席でも師匠自身の工夫を満載した創作落語を演じる師匠。今回は初トリとあって大張り切りで、小生へ電話で「ネタ、前回はたしか『スタディ』でしたねぇ。『トクさん・トメさん』は演(や)ってますか?」。小生は「いいえ」と答えた。 その「ほんわか」ムードが好き。さらに、今回は初トリとあって多くのファンが心待ちにされる中、我々の年代は思わず踊ってしまう『オクラホマミキサー』の名調子と、最後列まで聞こえる「ご苦労様です」の袖の大きな声に乗って高座へ登場。 会場からは本日一番の拍手が起こる。「えー私もう一席でお開きでございまして・・・」と、大声で語りで笑いを誘う。 会場からは「待ってました」と、声がかかる。「えー、長いこと噺家やっておりますが、『待ってました』と、声がかかったのは初めてでございます。嬉しいことで東京ではタップリなっていう声がかかるそうで」。 会場の最後列から「タップリ」と声がかかる。大爆笑の会場を受けて「タップリやれたらいいんですが、そんな長く持ちません。『手短に』と言われたいもんで・・・。」と、エンジン全開。 マクラは「おもしろ比較論」。色々な比較に場内は拍手喝采、大爆笑の連続。 そして、「今日はおばあちゃんの病院での風景」と、『トクさん・トメさん』がスタート。爆笑の頻度はマクラ以上。どんどんヒートアップする。 過去、何度となく師匠の噺を聞いたが、こんな弾けた師匠は表現できない。降りてこられた師匠に「よう、受けてましたねぇ」に、「お客さん、温もってたし、熱かったもん。ありがたいこっちゃ」と、大満足な感想。 会場を出られるお客様も一様に大満足な様子の九月公演であった。 ・・・・・・・・絶妙な仁智師匠の比較論・・・・・・・・・・・・・・・ @小泉首相と岡田代表の場合・・・
A東京と大阪・・・・
B男女の老人の違い
と、大爆笑のマクラであった。 |