もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第324回
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 公演日時: 平成17年 8月10日(水) 午後6時30分開演
  出演者      演目
 桂   あさ吉  「寄合酒」
 笑福亭 銀 瓶  「お近いうちに」
 桂   三 歩  「宿題」
 桂   都 丸  「千両みかん」
  中入
 桂  小春團治  「日本の奇祭」
 笑福亭 呂 鶴  「仏師屋盗人」(主任)

   打出し 21時20分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手 伝  笑福亭風喬

 2005年も絶好調の当席、昨年十二月からの大入公演も、六月公演で大入連続記録は 8。
そして、八月公演を迎えました。前景気も好調で当日を迎える。

 当日は、いつも通り、一年で一番暑い中を開場を前に長い列が出来る。
その公演のトップバッターは、吉朝一門から桂あさ吉師。ご存知一門の筆頭弟子。
口跡と風貌の良さから繰り出される高座は老若男女にファンが多い。当席常連でもあり慣れたもので一番に楽屋入りし、笛の稽古に余念がない。さらにまだ開演前の高座に上がってネタ(寄合酒)を練習。
 多くのお客様が列を作られ開場を待ちわびる中、五時半の定刻に開場。列を作り待っておられたお客様がご入場され、席が次々と埋まっていく。六時過ぎには客席はほぼ満席。開演時間には、客席は立ち見が出る大入満席(昨年十二月から9公演連続の大入)。開場後には、トリの呂鶴師匠も木戸口から会場入り。お客様の入りを確認して「よっしゃ」と、楽屋へ向かわれる。さらに先月同様、来年五月開席予定の「天満天神繁盛亭」の席亭の岩本靖夫氏もご来席された。

 準備万全の中、『石段』の出囃子であさ吉師が登場。
吉朝師匠の復帰報告からスタートしたマクラは、続いて「もともと米朝師匠へ弟子入りしくて・・・」と、「米朝師匠への入門大作戦」を披露。どうしても噺家になりたくて米朝師匠に吉朝師匠を紹介してもらっての入門に、こぎつけた入門秘話を披露。吉朝師匠を見つけて飛んでいったことろ、師匠からは、「ナイフで刺される」と、勘違いされるおまけつき。念願かなっての弟子入りとあって師匠譲りの口跡の良さは見事。本日の演題の『寄合酒』に、その片鱗がいたるところに垣間見られた。

 二つ目は、鶴瓶一門から「銀ちゃん」こと笑福亭銀瓶師。
この師も当席では常連。師匠との「しごきの会」もクリアしての出演となり,今回の演題は何か? 今から楽しみです。 と、会報でもご紹介したが、その通りで、今回は上方落語作家の第一人者・小佐田定雄先生作の創作落語『お近いうちに』を引っさげての登場となった。
 師匠譲りの出囃子で登場すると、師匠の話題からスタートし、「銀座での真っ裸事件」。東京で師匠に「銀座のクラブへ来い」と呼び出しを受けた銀瓶師、行ってみると師匠がパンツ一丁に蝶ネクタイ姿でお客様に接待中。ついには真っ裸でカラオケショーがスタート。横の好楽師匠が「えー師匠や、よく教わりや」の、アドバイスに、「何を教わるねん」。
 その話題で充分笑いをとって始まった演題は、物堅く武道に邁進する船場の若旦那を少しでも軟らかくすることを画策する親旦那と番頭。手伝いの熊五郎と色街・新町の一流の芸者も一枚加わっての懐柔作戦は大成功となるのだが・・・。
 ここまでの展開は『明烏』を彷彿とさせる。
今度は軟らかくなり過ぎる。次の思い切った作戦は、二階に色街を作ってしまうという奇抜な作戦(古今亭志ん生師匠の十八番の『二階ぞめき』も同じ作戦である)。これも見事に的中するのだが・・・。
 そして、演題の「お近いうちに」と、サゲとなる。 再演を大いに期待したい。

 三つ目は三枝一門から桂三歩師。独特の風貌で演じられる爆笑落語は当席でもお馴染みでファンも多い。
『三百六十五歩のマーチ』の出囃子に乗って登場した三歩師、「えー今日は拳を口の中には入れません」と、前歯の差し歯が抜けてしまったことで笑いをとる。さらに、師匠の話題で「瀬戸内の「三枝」という名前の犬、ぶくぶく肥えて歩くのが嫌い『三枝は散歩(三歩)が嫌いです』。いやになります。」と、爆笑は続く。
 充分暖まった会場をさらにピートアップさせたマクラに続いて始まった本題は師匠自作の創作落語で、当席では初の演題となる『宿題』。これが実に面白い。作品の良さにプラス、三歩師匠のイメージが爆笑を誘い続ける。息子の塾の宿題(算数の鶴亀算や過不足算)に悪戦苦闘する父親を漫画チックに扱った作品であるが、三枝師匠はどちらかと理知的なイメージであるが、失礼ながら三歩師匠はこの父親のイメージにピッタリで、すっかり自分の十八番となっている。何度となく続いた大爆笑に会場も師匠自身も大満足な24分であった。

**問題**
 月夜に池の周りに鶴と亀が集まってきました。頭を数えると16。足の数を数えると44ありました。
鶴は何羽、亀は何匹いたでしょう。

 そして、上方落語界・巨漢・桂都丸師匠。体型だけではなく。今回は中トリの重責を当席で初めて努める。
「爆笑落語」「酒の噺」「長屋物」等、全てに合格点を採られる師匠です。
高座に上がられる前の師匠と、「師匠、今日は中トリですからタップリと」の小生に嬉しそうに、「へへ、やらしてもらいまっせ」と、準備万全の師匠、『猫じゃ猫じゃ』のお馴染みの出囃子に乗って登場した師匠「ありがたいことでございます。大入りでございまして・・・・。若い人に聞いてもらわんとあかんので、高校生、中学生、この前は小学生を前に落語、演じってきましてん。『隣に囲いが出来たなぁ。へー』『鳩がなんか落としたで。フーン』ここら、爆笑ですわ。けど、一番は『おかあちゃん、パンツ破れた。またか』ですわ・・・。」と、紹介。さらに、先生から生徒の感想文を見せられる。「今日は落語をしてくれてありがとう。今日の『桃太郎』は、こないだクラスメイトもやっていましたが、都丸さんの方が面白かったです。当たり前や、わしゃ28年もやってんねや」で、大爆笑。「けど、落語の世界はええ時代のお話で・・・」と始まった演題は上方落語の大物で大師匠の米朝師匠直伝の『千両みかん』。この噺、当席では珍しく二度目(86年5月の第98回公演・先代森 乃福郎師匠演)。その噺を発端からサゲまでキッチリ・タップリ演じる。35分。季節感タップリの噺で、夏でもみかんを見ることの出来る現在ではちょっとピンとこないところもあるので、演じるのにあまり新しいギャグを入れ過ぎる噺の雰囲気が壊れてしまうので骨の折れるところである。
なお、この噺に登場する六月二十四日、土用とは、今の七月の末頃を差し、一年中で最も暑い時期である。
尊属殺人、主殺し(しゅうごろし)、逆罪など今では想像できないような律儀な考え方も出てくるし大変力のいる噺であり、どのくだりもカット出来ない。
そして、全ての蓄積が最後のサゲにつながるのである。

中入りカブリは、創作落語の優・桂小春團治師匠。
当席でも師匠自身の工夫を満載した創作落語を演じファンも多い今回も耳珍しい噺を、今回もを好演していただけることでしょう。と、ご紹介したが準備万全の楽屋入りし、『小春團治囃子』で登場し、世界の珍しい祭りとして「牛追い祭り」や、「バンジージャンプ」、これはアボリー人の成人式。
 そして、日本の珍しい祭りを紹介し、『日本の奇祭』がスタートする。
 この噺、師匠のHPの紹介によると、93年10月29日の「平成創作落語の会」にて初演された、山奥に越してきた家族が村に伝わる奇妙な祭りに翻弄される、筒井康隆の世界を思わせる作品。立花一家は田舎に念願のマイホームを購入したが、しきたりに従わないと祟りがあると言う長老の言葉に、家族は否応なく不思議な祭りに巻き込まれていく。22分の名演は笑いの連続。こんな祭りが実際あったら・・・・。皆様方は楽しまれますか。

・・・・前出のHPに掲載されている創作落語(五十音順)で当席で演じられた、演題は・・・・
『お巡りさんはお人好し』・・・83/04口演
『祇園舞妓自動車教習所』・・・04/07口演
『ゴダールに愛をこめて』・・・84/10・96/08口演
『さわやか侍』・・・・・・・・03/06口演
『職業病』・・・・・・・・・・99/05口演
『すばらしき戦争』・・・・・・89/02・92/04口演
『多国籍商店街』・・・・・・・02/02口演
『日本の奇祭』・・・・・・・・95/10・05/08口演
『失恋飯店』・・・・・・・・・88/01・97/11口演
『ヒットマンの午後』・・・・・96/12口演
『冷蔵庫哀詩』・・・・・・・・00/09口演

 さて、七月公演のトリは笑福亭の重鎮、ご存知「ローヤン」こと・笑福亭呂鶴師匠。
『小鍛治』の出囃子で、故笑福亭松鶴師匠同様、見台と膝隠しを前に絽の紋付袴姿でいつも通りゆったり登場。
これで、小生には演題が判った。師匠直伝で当席で演じてみたかった『仏師屋盗人』である。前二回、諸般の事情で演じる機会を失していたので満を持しての口演である。
 「えー、私もう一席でお開きでございます・・・・。」と、あいさつし、「かんてき」の説明、「カテキン」ではありません。続いて、「仁鶴(にかく)」「ニカウ」ではない、「膠(にかわ)」の説明。
そして、けちんぼ、盗人のマクラ、「どうしてくりょう(九両)三分二朱」と、十両盗むと首が飛ぶとサゲの仕込みもして、本題が始まる。
「ベリバリボリ」の擬音で盗人が入ってくるのだが、ここの主人は一向に驚く様子もなく逆に盗人の印伝(なめしがわに漆で模様を現した染め革で作った袋物)の煙草入れの煙草も借りる落ち着きよう。表へ出るつもりが奥の襖を開けるとそこには賓頭盧(びんずる)さんが・・。首をはねてしまって、形勢は一気に逆転。仏師屋に使われ、首をにかわで修繕する手伝いをさせられる羽目になる(袴姿を生かして膝を首に見立てる)。
最近はあまり演じられることのない師匠譲り噺をキッチリ演じられた呂鶴師匠であった。