もとまち寄席 恋雅亭
公演記録    第323回
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 公演日時: 平成17年 7月10日(日) 午後6時30分開演
   出演者      演目
  桂   春  菜  「看板のピン」
  桂   こごろう 「動物園」
  桂   梅團治  「宇治の柴船」
  笑福亭 松 枝  「袈裟御前」
   中入
  桂   文 我  「猫の災難」
  笑福亭 福 笑  「餅屋問答」(主任)

   打出し 21時00分

     お囃子  林家和女、勝 正子
     手 伝  笑福亭銀瓶・たま・智之介・松五。


 2005年も絶好調の当席、昨年十二月からの大入公演も、六月公演で大入連続記録は 7。
そして、七月公演を迎えました。前月の六月公演同様、前評判は絶好調。七月初旬、前売券も売り切れ。その後、事務局の電話が鳴り止まない状態でで当日を迎える。
当日は、日曜日。開場を前に長い列が出来る。「お天んと坊がししたれ」をしそうな雲行きの中、多くのお客様が列を作られ開場を待ちわびる中、開場を十分早めて五時二十分開場。列を作り待っておられた多くのお客様がご入場され、席が次々と埋まっていき、当日券も売り切れ。六時過ぎには客席は埋まってしまう。その後「立ち見でも」とのお客様が入場され、開演時間には、客席は立ち見が出る大入満席(昨年十二月から8公演連続の大入)。会員様とお連れ様さまも過去最高の先月同様の百十名様となる。
 お客様と共に楽屋も準備万全。続々と楽屋入りされる出演者に混じって、来年五月開席予定の「天満天神繁盛亭」の席亭の岩本靖夫氏もご来席。岩本氏は元朝日放送の名物ディレクター。小生もよく可愛がって頂いた。当席開席当初はよく来席されておられたので昔話に華が咲いた。
舞台袖では、春菜師とこごろう師が「放送禁止用語」「差別用語」の話題「ここでは大丈夫」と言いながら難しい放送事情の話題で盛り上がる。

 その公演のトップバッターは、春團治一門から桂春菜師。ご存知春蝶師匠の実子。
現代風の風貌から繰り出される高座は老若男女にファンが多い。三百回記念公演以来の出演。
『石段』の出囃子で登場し「えー、大入り満員のお客様でありがたい限りでございます・・・・。一人暮らしを始めてだいぶ経ちますが・・・」と、息子離れ出来ない母親の失敗談をマクラで笑いをとって、博打好きの父親(春蝶師匠)の家庭での様子を紹介しながら「私もそのDNAを引き継いでおりますので、博打は好きです・・・。」と、始まった演題は『看板のピン』。
ご存知の噺であるが発端から自身の工夫が満載。若さ溢れる高座で大いに結構であった。

 二つ目は、南光一門の長弟・桂こごろう師。当席では常連の師の今回の演題は何かと楽しみにされる多くのお客様の拍手と、軽快な『復興節』の出囃子で高座へ。「えー一杯のお客様で・・・。続きまして、桂こごろうという大それた名前でございまして、二代目でございます。横に名前が載っておりますが寄席文字で書いてありますので読み難いと思いますが決して『てでろう』ではございません」と、ツカミのマクラ。
 そして、始まった演題は『動物園』。「ほたらなんだすかいな・・・」と、前半をバスッと切った導入部から主人公は移動動物園へ前田館長を訊ねる。前田館長から虎の歩き方を伝授される。虎だけではなくワニまで。本物ソックリな歩き方に会場全体から爆笑と拍手が起こる。
 次々と繰り出されるクスグリに会場全体は爆笑の連続。楽屋も袖にトリの福笑、中トリの松枝の両師匠を始め全員が集合しハイテンション。楽屋も大満足な16分であった。

 ※落語の世界にはよく噺家さんの本名の人物が登場する。 
  前田さん⇒枝雀師匠。浜田さん⇒春蝶師匠。竹内さん⇒松鶴師匠。中川さん⇒米朝師匠。
  河合さん⇒春團治師匠。など、そういえば聞いたことのある名前である。

 「ええぞ、裾乱して大熱演や。どんどん行け! 行け!梅も行け!」の福笑師匠の激励と『竜神』の出囃子に乗って、三つ目の桂梅團治師が登場。
福笑師匠の激励に先月出演の鶴ニ師と開いている「須磨寺寄席」をはじめ多くの自身の会で鍛えた力量で応えるべく高座へ登場。
 「えー大入満員でございましてありがたく御礼申し上げます・・・。春菜君とこごろう君が出はりまして、知らん間にもう噺家になって二十五年を超えておりまして・・・。」と、入門当初のことは昨日のように覚えておりまして、師匠に付いて初めて恋雅亭に来た時、鶴瓶師匠に『日本一の噺家になりや』と言われた話題や内弟子時代に師匠に稽古をさぽってTVを観ていた事がバレたことなどで笑いを誘って始まった演題は師匠直伝の大変珍しい『宇治の柴船』。
 発端は「崇徳院」「千両みかん」同じく若旦那の病気から始まって、後半はグッと芝居仕立てになる。三代目師匠もお蔵入りされ、春蝶師匠亡き今、梅團治師匠の十八番となっている。28分の大満足な高座であった。

 中トリは上方落語界・笑福亭の重鎮・笑福亭松枝師匠。今回は兄弟子とタッグを組んでの出演。「ここへ出る時は・・・」と今回も事前に過去の演題をチェックして準備万全。小生の「今日は何を・・・。決まりましたか?」に、「へへ、まあな」と応えるられ『早船』の出囃子で満面の笑みと共に登場。
「えー大入満員だそうで、ありがとうございます。一度、我が家でもお越しください。・・・堺でございます。・・・・電話番号は・・・・」と、得意のマクラで松枝ワールドへ。
 マクラもそこそこに、始まった本題は『袈裟御前』。いわいる「地噺」で、この師匠にかかると物語風に語られる中にクスグリが随所に入る面白い噺となっている。珍しい噺で当席でも、同じく松枝師匠が平成五年十二月の第188回以来、二度目の口演となる。「どうなるか?」と思わせて、「あっ」どうなるのかと思わせると共に爆笑を誘うサゲとなった。
20分の高座であったが爆笑の連続の名演であった。

 中入りカブリは、枝雀一門から実力者・桂文我師匠。当席でも師匠直伝の持ちネタにプラス自身の工夫を満載した演題、それも耳珍しい噺を今回もを好演していただけるとの期待の中、楽屋入り。
 「ご無沙汰しております」「こちらこそ」と、挨拶もそこそこにさっそく落語談義。
「今日は何を」の質問に、「今日はカブリでっしゃろ。酒の噺が出でないので、マクラをそこそこに二十分で『猫災』を。ここは難しいでっせ。三つ目とカブリでは演題も時間も変えなあきまへんでしょ。カブリで半時間や重い噺は厳禁ですわ」といつもながらの懐の深さを感心する。、
 先代と同様、『せり』の出囃子で登場し、酒のマクラを軽く振って本題の『猫の災難』に入る。この噺、東西で多くの演じ手のあるお馴染みの噺である。サゲに一工夫あった20分の口演は、枝雀・松鶴・二代目春團地師匠のようでそうでない文我師匠の名演であった。

 さて、六月公演のトリはご存知・笑福亭福笑師匠にとって頂きます。その過激なまでの芸風から繰り出される多くの創作落語から、新しい解釈での古典落語までを楽しみにされておられる満員のお客様を前に「ありがたいこっちゃ。今日も行くで」とエンジン全開。事前にたま師ときっかけの打ち合わせし、『佃くずし』で高座へ登場。満員の客席からの拍手がなりやまない。
 「えーありがとうございます」。と、「水不足・台風・阪神強い・貴乃花・松健サンバ・・・。そんなお忙しい中ようこそお越しくださいました」と、始まった福笑ワールド。
「今日は古典落語、『餅屋問答』を」と始まった本題も絶好調。発端から問答まで30分の熱演であった。問答のクダリでは、たま師も絶妙のタイミングの鐘も入ったことを付け加えておきたい。