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       第308回 公演の記録           吉村 高也
       公演日時: 平成16年 4月10日(土) 午後6時30分開演  観客:大入満席(立見多数)

  「小福 改め 二代目 桂 福楽 襲名披露公演」

             出演者             演目

           桂   七 福 「商売根問」
           桂   文 福  「大相撲ほのぼの甚句・福楽編」
           桂     ざこば  「うつ病・襲名アラカルト」
           桂   福團治  「鼻の狂歌」
              中入
      襲名披露口上    福楽・福團治・ざこば・文福・春駒
         
ご祝儀・寿獅子舞 笑福亭三喬

           小福改め
           桂   福 楽 「野崎詣り」
(主任)

             打出し 20時50分

             お囃子
  林家和女 勝 正子
             手伝い 
桂 勢朝、ちゃん好、ちょうば、まめだ、
           笑福亭鉄瓶、呂竹、林家竹丸、染左


桜満開の4月10日の土曜日に第308回「もとまち寄席・恋雅亭・小福改め桂福楽襲名披露公演」が開催されました。前売券も3月中旬から好調で、その後もうなぎ登り。さらに、電話、メールでの問い合わせも加速し、木曜日に80枚で完売。

  そして、当日のお客様の列はいつも通り、2列、そして3列にと並んでもらって整理を始めるが、その後も多くのお客様が階段に列を作られ、本通りに1階の売り場から本通りにまで溢れる。ついに、定刻の5時半を15分前倒しての開場となる。

  次々に会場へ入られるお客様の来場の勢いは衰えず、5ケ月連続の立ち見大入公演となった(会員様にもご迷惑をおかけ致しました)。

 出演者の楽屋への一番乗りは、ざこば師匠。4時過ぎに「ちょっと早かったなぁ」と到着。

 大阪道頓堀の角座での襲名披露公演を終えた一行が続々到着し、出演者全員が揃って、二番太鼓(着到)から、「チョンチョン」の祈と共に定刻の6時半、開演となる。お囃子は、三味線二挺、林家和女、勝正子嬢。太鼓、笛を桂ちゃん好林家染左師らが中心に担当。

  その公演のトップバッターは、一門から桂七福師。

平成3年、四代目桂福團治に入門し、地元徳島で大活躍中の師で兄弟子の晴れの席のトップを努めます。楽屋入りし、トップの持ち時間を確認し、かっぷくのある巨体を小さく屈めて高座へ登場。

「ありがとうございます、只今より開演でございまして、まずは私、七福から・・・。七福、七福、便秘薬のセールスではありません」と笑いを。

 小咄を色々紹介して始まった本題は、お馴染みの『商売根問』。雀、河童(ガタロではなかった)の二つの失敗談で大いに笑いをとってトップバッターの重責を果たした師であった。

 二つ目はこの様な席にはピッタリの桂文福師匠。陽気な高座はお馴染み。今回も華を添える意味で出るか「河内音頭・相撲甚句」。と、会報で紹介したが、楽屋入りから絶好調の師匠。さらに、サーモンピンクの鮮やかな羽織に着替えを出番を待つ師匠「今日は目出度いなぁ。やるで、わしは色物やから、落語は後の師匠連に任せて、パァッと陽気にやるで・・・」

と言い残して、楽屋へ大声で「お願いします」と声をかけ、『毬と殿様』の出囃子に乗って登場。

「バアッー、ようこそ私の襲名・・・ちゃうちゃう、私が芸名、桂文福と言いまして、本名を杉良太郎と申します」と得意のツカミ。

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*** 楽屋 よもやま噺 誰の後がいや ***

福團治師「今日はありがとうございます。お世話になります」

ざこば師「おめでとう。角座も盛会で結構、結構。この頃、演(や)りにくい事が続いてなァ。前でみ

んな一生懸命するもんやから」

春 駒師「今日の文福も、はりきってまっせ」

ざこば師「そや、文福の後もやりにくいで。音頭や甚句でわぁわぁ、沸かせるさかいなぁ」

春 駒師「メンバー決める時、難しいでっせ」

ざこば師「ところで、今日は文福の後、誰や」

小  生「師匠(ざこば)ですがな」

ざこば師「誰や、メンバー組んだん!」

春 駒師「今日は小福ですわ」

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「本日は小福さん改め福楽さんの襲名披露のおめでたい席で・・・」と、いつもの小咄、相撲の話題、NHK上方演芸会出演秘話、羽織の裏の柄、忠臣蔵の話題で笑いをとって、また相撲の話題に戻る。

  今、旬の高見盛の話題から相撲甚句が始まる。もう、文福ワールド絶好調で、一〜十まで甚句、豆腐屋甚句、商売甚句。トリネタは福楽襲名記念甚句で握手喝采をとって高座を後にする。

 三つ目は、二月公演に続いて桂ざこば師匠。今回は「小福の襲名披露やったら」と、喜んでの出演となりました。『御船』の出囃子で登場し、座布団に座り一礼、拍手がいつまでも鳴りやまない。

「えー、ありがとうございます。いやっ、あんまり手たたかんようにその気になりますから・・・」と、まんざらでもない様子。

「えー、こんな商売、度胸あるように見えますが、神経質で・・・」と、落ち込んでうつ病になった話が始まる。

 ここからは、紙面ではちょっと紹介しにくい、怖くてギリギリの話(もちろん、ラジオではピーばかり)。後で師匠に伺ったが、「何を語ろかなぁと思もて、ふっと前見たら、N先生の顔が見えましてん。私の恩人ですわ。それをアラカルト風にしゃべりましてん。全部、ほんまでっせ」。

「きょうは、小福君の襲名で、私も・・・・」と、襲名秘話を語る。

「きょうは落語はしない、こんな話ばっかりします」に、会場から爆笑と拍手の嵐。ここだけの話と断って、米朝師匠からは「米朝」を、松鶴師匠からは「塩鯛」を継ぐように奨められた話題では会場が抜けそうな大爆笑。

  キリネタは、枝雀襲名をやめて、鷲か鷹にしたら言うたけど、芸人は名前やおまへん。そっからだ。と笑いをとって高座を下りるざこば師匠。

 そして、中トリは師匠である桂福團治師匠が、嬉しい総領弟子の前を努めるべく、『梅は咲いたか』に乗って登場。

「どうも、えー、ようおこしでございまして、疲れましたな。ゆっくり寝とくなはれ、全部見ると体悪しまっせ・・・・・。」「私も三十年前に襲名しましてん」と、その頃の角座の想い出話を、おねおねと。「けど、もう四十五年もやってますねん・・・・。商売道具も扇子だけですわ。けど、これも使こてまへん。体ささえるのに使こてます」。

 その一言、一言に会場から笑いが起こる。

  そして、念仏、お寺、寺子屋と話題をつないで、本題が始まる。この噺もTV・ラジオでは出来ない『鼻の狂歌』である。

導入も見事。主人公の鼻がなくなったのは、戦さで切られたとして始まる。(今までは梅毒で鼻が欠けた)。この噺、当席では四度目の口演となるおはこネタ。随所に爆笑、そして、拍手が起こった名演で愛弟子の門出を祝した、22分の高座であった。

  そして、中入り後は「襲名披露口上」となります。

 新福楽師匠を忠心に、福團治、ざこば、文福、そして、司会の春駒の各師匠連が顔を揃えての高座となった。

 祈が入って「東西、東西〜」、幕が開く。文福、ざこばの両師匠の心温まる? 紙面では表せ尽くせない口上が、ざこば師匠が一緒に「上方落語協会脱会」を福楽師匠に誘うと、福團治師匠の「わしも連れてって」と、受けると会場は最高潮。

春駒師匠が「隅から隅まで・・・・」と締めくくって爆笑口上は幕となった。

※紙面の関係で紹介できないのが残念。

 再び幕が開くと名ビラは「三喬」。

会場もビックリ、大満足の飛び入りのご祝儀・寿獅子舞。

 そして、四月公演のトリは本日の主役、桂福楽師匠。襲名が決まってから「恋雅亭で是非、襲名披露公演を!」と、希望されての公演となったとあって、大はりきりです。新しい門出となる今回、どんな高座を披露するか、大いに楽しみ。

 襲名披露の重圧に負けることなく、元気一杯で高座へ登場。会場から今日一番の拍手が起こる。鳴りやまない拍手に恐縮するように何度も頭を下げる新・福楽師匠。

 鳴りやむのを待って、あいさつから始まった演題は、大師匠譲りの『野崎詣り』。

 随所に福楽流がちりばめられた口演は、全身から溢れるような気迫と相まって会場も爆笑の連続。襲名披露公演に相応しい秀作となった。