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       第303回 公演の記録           吉村 高也
       公演日時: 平成15年 11月10日(月) 午後6時30分開演  観客:180人

             出演者             演目

          林家  染 弥「千早振る」
       桂   枝曾丸「和歌山弁落語。親族一同」
             露の  團四郎「三人旅浮かれの尼買い」
             桂   小 米「猫の茶碗」

               中入
             桂   九 雀「二人癖」
       主任  笑福亭 福 笑「山寺ひょう吉」

       お囃子  内海英華、林家和女、草尾正子
       お手伝(順不動)
            桂 阿か枝、笑福亭 たま、笑福亭鉄瓶

     打出し  20:50

ちょっと寒くなってきた感のある11月10日、第303回「もとまち寄席・恋雅亭」が開催されました。

 5時半の開場時間にはいつもの通り、階段に列が出来る。通りにまで溢れた列を最前列から一歩寄ってもらって解消し、5時半定刻の開場となる(最終的には、180名超のご来場)。

 二番太鼓(着到)から、「チョンチョン」の祈と共に定刻の6時半、『石段』の出囃子で開演となる。

お囃子は、三味線三挺、内海英華、林家和女、草尾正子嬢、太鼓を笑福亭鉄瓶、林家染弥、桂阿か枝、笑福亭たま師がそれぞれ交互に担当。

 トップバッターは染丸一門から林家染弥師。「えー、沢山のご来場でまことにありがとうございます。只今より開演でございまして・・・・」と、あいさつして始まった演題は『千早振る』。

師匠の染丸師匠直伝の噺を、キッチリと演じ、大喝采を受ける。しかし、この師も一門の伝統になりつつある「イケ面」。

 二つ目は文枝一門から、桂枝曾丸師。和歌山出身で、小茶久から現名に改名、今回で4度目の出演。 

  出囃子と共に高座へ登場したのは、おばちゃんカツラと衣装の枝曾丸師。会場はドッと受ける

(掴み成功)。

和歌山出身の噺家としては、桂文福師匠が有名であり、和歌山弁を使ったマクラで爆笑を誘っているが、枝曾丸師も同様に「南海電車の車掌の特急サザンの場内アナウスや、「動物園の象(どうぶつえんのどうさん)」と、「ざじずぜぞ」と「だぢづでど」が、ごっちゃになるマクラで笑いを誘って『和歌山弁落語・親族一同』が始まる。

題材はどこにでもある、お通夜から葬式が舞台。全編、和歌山弁で演じられる高座は・・・。

感想は枝曾丸師がHPで書かれているのでご紹介したい。

** 楽屋よもやま噺  『枝曾丸HPより』 **

昨夜、伝統ある神戸元町「恋雅亭」に出演した。毎月開催しているこの会はいつも超満員!

落語家にとって憧れの会である。

僕も久々の出演ということ気合が入った。そこで考えた末に出したネタが和歌山弁落語「親族一同」。和歌山県外で何処まで通じるのかワクワクドキドキ!、、お客さんもおばちゃん姿に最初は呆然としてました。

和歌山とは違ったウケ方なんかも発見し大いに勉強になりました。

この調子でどんどんと県外でもやって行こうと心に決めた一夜でした。来週は大阪ワッハ上方での「島之内寄席」でもこの「親族一同」をやります。

大阪の方是非聞きに来てください。

   * 楽屋よもやま噺  『和歌山弁落語』 **

和歌山弁落語には、常に主人公として「おばちゃん」が登場します。

「和歌山弁」の代弁者として、また、「和歌山の文化」を映す鏡として日常風景の中で活き活きと描かれる彼女らの振る舞いは、緻密な人間観察のひとつの結実であるといえます。

 また、「おばちゃんカツラ」を被って熱演する枝曾丸のパフォーマンスも見逃せません。これが寄席などのライブ公演で高い動員数を呼ぶ要因のひとつとなっており、一度見たものの心を捉えて放しません。「幅広い年齢層に受け入れられやすい」と、教育関係者からも高い評価を受けています。

 これまでに制作された和歌山弁落語は三作。年一作づつ制作され、秋の独演会「わかやま芸品館」で毎年新作がお披露目されます。

 三つ目は、露の五郎一門から露の團四郎師。出身地の民謡『炭坑節』で登場し、「こんなん、出ました・・・」といつものツカミで笑いを誘う。その顔つきとやや舌足らずの口調は、会場全体をほんわかとさせる。

 出身地の福岡の折尾へ新幹線で里帰りした時の話題を、紹介して旅のマクラとし、始まったのは『三人旅浮れの尼買い』。

楽屋入りされた團四郎師が小生に、「先月の『三人旅』はどこまで?」と質問し、「ブッのくだりまでの美味しいとこまで」と答えると嬉しそうに笑いながら「よっしゃ、決めた」と『尼買い』が決まった。

 この噺、東の旅の一部とされているが、従来の喜六・清八の二人づれから源兵衛を加えた三人が織りなす大爆笑落語である。発端(なぜ、足が痛くなり馬に乗ることになるか)から、お馴染みの馬子とのやりとり、そして、尼買いと続く噺で、全編通し演じると40〜50分ある噺である。

東京にも『おしくら』の演題で演じられるが、出てくる尼さんは一人であるが、上方は三人共が尼さんである。

 その噺を情緒タップリにお囃子もタップリ入って演じた、23分の熱演であった。

  中トリは、米朝一門の中軸である桂小米師匠。昭和25年9月22日、鳥取県西伯郡生まれ。昭和44年4月13日、桂米朝師匠に入門し、8月7日に金比羅会館「桂米朝落語研究会」にて桂すずめの芸名で「東の旅・発端」口演で初舞台。昭和49年1月1日、故枝雀師匠の前名である桂小米に改名。「酒」をこよなく愛す、酒豪である(当日も痛い体を押して福笑師匠と二人で飲みに行かれた)。

  よく考えると、本日の出演者は、染弥(三重県)、枝曾丸(和歌山県)、團四郎(福岡県)、小米(鳥取県)、九雀(広島県)、福笑(大阪府)と、大阪以外の出身者が多い。

その鳥取県出身の小米師匠、鳥取弁を生かした『代書屋』など、爆笑噺が多いが、本日も、その鳥取の母親の話題からスタート。これが、面白い。会場も大爆笑だが、お囃子連中のお師匠はんも、笑い声を堪えるのに体をよじる。

  約10分のマクラからスッと始まった演題は、十八番の『猫の茶碗』。

小品だが、人間の業を題材にし、サゲもピリッとしまっての18分の名高座であった。

  中入り後は、枝雀一門の桂九雀師が『旅』の軽快な囃子に乗って登場してスタート。

「えー、中入り終わりましてあと一席で・・・・、あと二席です。自分勘定にいれるのを忘れてました。今日のトリは福笑兄さんで、お後お楽しみに・・・」と、あいさつ。

衆議院選挙の話題(最後のお願いは落語会への妨害!)から不景気、失業率5%、落語家は失業率90%そして、始まった本日の演題は『二人癖』。

この噺、東西の多くの演じ手がいる。東京では『のめる』として演じられることが多い。

噺の筋立ては単純で、狙いはお客様にもすぐ判るので演じるのには相当の力量が必要となる噺である。その噺をきっちりと20分で演じトリの福笑師匠に良いムードでつないだ九雀師であった。

  本日のトリは『上方落語界の鬼神』笑福亭福笑師匠。

「神戸は相性バクグン」といってはばからない師匠。当席最多出演回数の師匠が『25周年記念』以来の出演とあって、気合い充分で、事前に過去の演題をチェックし決定すみ。

  手伝いの笑福亭たま師が、「師匠、気合い入ってますっせ。ネタくってはりました。やる(演じる)噺は決まってまっせ」と語ったが、楽屋入りするなり、トリらしく会場の入りを気にされ、小生が「百八十」と答えると「よっしゃ」とさらに気合いが入る。

 そして、待ちこがれるように『佃くずし』の出囃子に乗って、万雷の拍手に迎えられて登場。

「(ポン)えー、ようこそのお運びでありがとうございます。もう一席でございます。おつき合い頂きますように、しかし、大変ですな・・・。」と衆議院選挙の話題、山崎、松波、田中、鈴木、土井、加藤と次々と登場。

「そんな中で、鈴木宗男は癌で出馬断念、星野監督は体が悪いんで辞めるし、原監督は辞めさせられますし、中曽根は辞めたがらへんし、有栖川捕まるし、百姓米盗まれるわ、子供は親子殺すし、雨降りよるし、大変大騒ぎの中、本日お越し下さいましてありがとうございます(場内拍手喝采)」。

 そして、始まった演題は自身の創作落語『山寺ひょう吉』。

人質監禁、説得、追走、銃撃戦、と、およそ落語らしくないTVの刑事ドラマさながらの設定と、どんどん変化する場面展開に、会場は爆笑の渦。

  サゲ、挨拶をして高座を下りてこられた師匠の満足そうな笑顔が出来の良さを表していた秀作であった。

   * 楽屋よもやま噺  『福笑師匠の演題』 **

 今回の演題は『山寺ひょう吉』で、当席では約10年ぶりの口演となった。

ちなみに、179回〜303回までの記録をひもといてみると、

      303回『山寺ひょう吉』 。・296回『ちしゃ医者』。・286回『宿屋ババァ』。・276回『じたじた』。・264回『あこがれの甲子園』。・258回『珍宝堂奇談』。・250回『もうひとつのッポン』。・245回『きょうの料理』。・240回『あこがれの甲子園』。・236回『再生おじん』。230回『憧れの回転寿司』。・220回『島原ララバイ』。・213回『瀞満峡』。・203回『あこがれの甲子園』。・197回『小言念仏』。・190回『骨肉』。・186回『鎮守様』。 ・183回『セールスウーマン』。・179回『山寺ひょう吉』