第298回 公演の記録 吉村 高也 |
公演日時: 平成15年 6月10日(火) 午後6時30分開演 観客:192人(ほぼ満席) 出演者 演目 桂 吉 弥 「桃太郎」 笑福亭 銀 瓶 「牛ほめ」 桂 三 歩 「国技インターナショナル大相撲」 桂 福團治 「悋気の独楽」 中入 桂 小春團治 「さわやか侍」 主任 笑福亭 松 枝 「舟弁慶」 お囃子 林家和女 草尾正子 お手伝 笑福亭 三喬、遊喬、鉄瓶 打出し 21:10 |
近畿地方への梅雨入り宣言があった6月10日。『もとまち寄席 恋雅亭第298回公演』が開催された。 開場時間の5時30分に予定通り木戸を開ける。次々にご来場されるお客様に席は見る見る埋まっていく。一方、噺家さんの楽屋入りも順調で、楽屋も、熱気ムンムン。 そして、開演までに用意した椅子がほぼ埋った会場に6時25分過ぎ、着到(ちゃくとう)の二番太鼓が流れる。担当は太鼓を、松喬門下の遊喬師と鶴瓶門下の鉄瓶師が、笛を吉弥師がそれぞれ担当し、定刻の6時半の幕が開く。 石段の出囃子に乗って、トップバッターの吉朝門下の筆頭弟子の桂吉弥師が登場。「えー、ありがとうございます。只今より開演でございまして、まず、トップバッターは私、桂吉弥と申しまして、上方落語界のルー大柴と申します」とあいさつし、「えー、最近、小学生の前で落語やりまして、『お母ちゃん、パンツ・・・』、ここで受けまねん。普通はねぇ、『マタか!』で笑うんですけど・・、私も落語やって、こんな受けたんは初めてでございまして、皆さん、みんなカメラの方ばっかり見て、今日はNHKさんの取材で、あっ、いまさら服なおしても一緒でございまして、それに、そっちは映りまへんで」と笑いを誘って、観客の注意を高座へ向けて「小学生の間で、落語の『寿限無』が大流行でNHKの教育TVでやってますねん」とマクラを振って、お馴染みの『桃太郎』が始まる。 大師匠の米朝師匠が練りに練った、この噺をキッチリと演じる。トップらしく、15分の高座は場内、大喝采のうちに交代となった。 * * 楽屋よもやま噺 お囃子さんとの打ち合わせ ** 楽屋へ早く到着された松枝師匠は、お囃子の林家和女嬢、太鼓の笑福亭三喬師匠と、きっかけの打ち合わせ。ここは、こうして、キッカケはこの言葉。生き殺しはこうと、何度も打ち合わせ。『船弁慶』である。先月の呂鶴師匠と違って、こうすると前の演者が遠慮してネタをダブらさないように配慮。 福團治師匠は、一言、「わたい、『悋独楽』」。 一方、松枝師匠の打ち合わせに付き合っていた小春團治師匠は、完了を待って、「ほんなら、わたいの方は・・・」と、台本片手に打ち合わせを開始。 当日ご来場の会員様、各演者の出来映えはいかがだったでしょうか? 二つ目は、鶴瓶一門から当席常連で『銀ちゃん』こと、笑福亭銀瓶師。持ち前の明るさとルックスの良さで、人気実力を兼ね備えた逸材。過去、当席では『千早振る』『書割盗人』を好演。 「えー、替わりまして、早いもので今年も半分過ぎてしまいました」と、上半期の話題。 『白装束の集団』の話題で笑いをとって、「落語の中にも。けったいな人が登場します・・・。」と、始まった演題は『池田の牛め』。 発端からサゲまで、20分の高座は、現代感覚一杯の銀ちゃん。であるが、キッチリ古典をベースに、所々に現代感覚を交えて演じる銀瓶師匠であった。 三つ目は、三枝一門から桂三歩師。持って生まれた漫画チックな雰囲気を生かしての師匠直伝の、爆笑落語で今回も会場を爆笑の渦に。と、紹介したが、『三百六十五歩のマーチ』が鳴って、楽屋へ「お先に勉強させていいただきます」とあいさつして、元気一杯、高座へ登場。 「はい、続きましては桂三歩でございまして・・・。えー、最近、佐賀県のご当地ソングがブレイクしておりますが、私も、地元和歌山を扱った『和歌山ラブソング』を文福師匠を中心にして発売して『紅白』を目指してたんですが、30万枚売れたら出演できるんです。今、28万枚・・・・、足りません(大爆笑)」と自己紹介。 さらに、落語海外公演でのトラディショナルな話題。相撲、ゴルフも男女に区別なく・・・、 と笑いをとって、オーストラリアへ行った時の話題から特に、「南半球でっせ、私、北の阪急しか知りまへん」では、場内大爆笑。 本題は、国際的になった大相撲の話題から、師匠直伝の創作落語『国技インターナショナル大相撲』が始まる。 現在の相撲界で、ありそうで実際はない話題をスケッチ風に、古典落語の根問風に物語は進む。ツボツボで会場を爆笑の渦に巻き込んだ21分の高座であった。 そして、中トリは、上方落語界の重鎮、四代目桂福團治師匠の登場。滑稽噺から人情噺までと、その幅広い演題の中から、今回は何を演じられるか、また、独特のマクラの面白さを期待されるファンの拍手に迎えられ『梅は咲いたか』の名調子で高座へ登場。 「えー、ようけ入ってまんなぁ。ここは・・・・。えー、ようけ入ってますなぁ、最近の落語会は7人てな処があって、私も道頓堀の浪花座が無くなって、中座が燃えて、今、パチンコ屋でやってます。えらい人ですわ、パチンコは、負けた人が入ってきますねん。恐い顔して、何、言っても笑いまへん、負けたんですなぁ・・・。」と、いつもの、おねおねのマクラがユッタリと始まると、場内は福團治ワールド。 そして「日の本は女なくして夜の明けぬ国」と『悋気の独楽』が始まる。お馴染みの噺であるが、この師匠の手にかかると、また、独特の面白さが、御寮人、おなごし、丁稚、番頭と登場人物も多彩であるが、そのひとりひとりが生き生きと描かれた30分の好演で中入りとなる。 中入カブリは春團治一門の貴公子、桂小春團治師匠。 勉強家としても知られている師匠ですので、今回はどんな切り口鋭い高座を披露していただけるかと、期待の中、高座へ登場。 「最近は時代劇ブームでして、終わりましたなぁ、桃太郎侍。あの、水戸黄門の視聴率で一番上がるのは、黄門様が印籠を見せるシーンで、強いですなぁ、黄門様、けど、本当に強いのは、助さん角さんのほうで・・・・」と時代劇のマクラから自身の創作落語、『さわやか侍』が始まる。
毎日の生活に退屈していた若殿は、長屋暮らしを始め、警備の忍者達は翻弄される。ところが「ええかっこ」がしたいがために汚職現場に踏み込むが・・・。と粗筋のみの紹介となったが、お囃子もップリ入った、25分の秀作であった。 * * 楽屋よもやま噺 小春団治 創作落語作品 イン恋雅亭 ** 解説 モハメド・アルジャバ(桂小春団治研究家)小春日和 HP 転載 『お巡りさんはお人好し』 83年2月12日 RAKUGOばとるろいやるにて初演(83年4月当席口演) 『ゴダールに愛をこめて』(84年10月・96年8月当席口演) 84年8月18日RAKUGOばとるろいやるにて初演 『失恋飯店(四面楚歌)』 86年5月10日 創作落語の会にて初演(88年1月・97年11月当席口演) 『素晴らしき戦争』 86年9月6日 創作落語の会にて初演(89年2月・92年4月当席口演) 『日本の奇祭 』 93年10月29日 平成創作落語の会にて初演(95年10月当席口演) 『ヒットマンの午後』 94年4月22日 平成創作落語の会にて初演(96年12月当席口演) 『職業病 』 98年2月4日 平成創作落語の会にて初演(99年5月当席口演) 『冷蔵庫哀詩』 98年8月27日 平成創作落語の会にて初演(00年9月当席口演) 『多国籍商店街』 96年5月24日 平成創作落語の会にて初演(02年2月当席口演) 『さわやか侍 』 02年10月5日 桂小春団治独演会にて初演(03年6月当席口演) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ トリには、笑福亭一門から笑福亭松枝師匠。昭和44年入門で、キャリアも30年超。 いつまでも若々しい高座は爆笑の連続で、今回も、トリの重責を果たすべく舌によりをかけての登場である。 『早船』の出囃子に乗って高座へ。「えー、ありがとうございます。もう我々は皆様方が頼りでございまして・・・」とマクラで笑いをとって、練りに練った『舟弁慶』が始まる。 発端からサゲまで、「喜公」と「雷のお松っあん」が大活躍する30分の秀作であった。 実力者がズラリと揃った第298回公演はお開きとなった。 |