第292回の記録 吉村 高也 |
公演日時: 平成14年12月10日(火) 午後6時30分開演 出演者 演目 笑福亭 瓶 吾 看板のピン 桂 三 象 アメリカ人が家に来た 桂 文 喬 親子酒 桂 小 米 掛取り 中入 笑福亭 猿 笑 真田小僧 主任 笑福亭 鶴 瓶 放し亀(小佐田定雄 ) |
寒波到来の12月10日。「第292回・もとまち寄席恋雅亭・師走公演が開催されました。前売券も先月末から日を追って伸び、80枚を突破。当日は、寒い中熱心なお客様が列を作られ、5時20分には1階の売り場の半分を占拠。急遽、開場を5分繰り上げ、5時25分に開場となった。 待ち焦がれたお客様が会場に入られる。席を確保されたお客様と木戸に来られたお客様が木戸前で交錯する中、席はどんどん埋まっていく。開演5分前には長椅子も入れて、ご来場された、全てのお客様に座っていただき、定刻の6時半、『石段』の出囃子でトップバッターの笑福亭瓶吾師が、万雷の拍手に迎えられて高座へ登場し、292回公演の幕が上がる。 |
瓶吾師 三象師 猿笑師 小 生「鶴瓶師匠も教えてもらえなかったそうですねぇ」 猿笑師 小 生「私も、よう聴きました。けど、長かったり、短かったり」 猿笑師 (結局、猿笑師は、前の文喬師匠が、同じ酒の噺である『親子酒』を演じたため、もう一つの師匠に付けてもらった噺の『真田小僧(按摩はんごくろうさん)』を演じられ、この『一人酒盛』は幻となったが・・・・) 「えー、一杯のお客様でありがとうございます。トップバッターの瓶吾の方でお付き合いを願っておきます・・・」と自己紹介。自身の女の子がクリスマスプレゼントをサンタクロースが居るように信じこませてわたそうとするのだがばれそうになる苦心談をマクラしで、笑いをとって本題の『看板のピン』が始まる。 二つ目は、三枝一門から桂三象師。『芸者ワルツ』の出囃子で高座に姿を見せると会場全体から爆笑が起こる。「えー続きまして、私のほうでお付き合いを願っておきます・・・・・。あっ、念のため断っておきますが、私はあの『新婚さんいらっしゃい』などの司会でお馴染みの、あの桂三枝の・・・・・・(充分間をとって)弟子です」「何がおかしいのですか、弟子と言っているじゃないですか。もっとも頭を見ると師匠のようですが・・」とマクラが始まる。 三つ目は文枝一門から桂文喬師。この師匠も独特のカラー。そのキャラで演じる高座は爆笑を誘う。特に酒の噺には定評がある。一時、体調不良から肥満気味であったのだが、すっかり回復され、『まつり』の出囃子で元気一杯に高座へ登場。「えー、この間、新幹線に乗りまして・・・」と、始まったのは、自身の無実の証明「席に残っていた空き缶のコーヒー」「トイレに残っていた○○○(師匠は原語で表現)」が、いかに難しいかをマクラに、「やっぱり酒が好きですわ」と、『親子の酒飲み』の小咄を演じて、始まった演題は、『親子酒』。この噺、自身も自信があるジャンルとあって、当席では3度目の口演となる。師匠直伝とあって、「海老は幼少にして髭長く・・・」と謡から、「こんなくるくる回る家、いやになったわい」のサゲまで、きっちりとした高座は28分であった。 中トリは米朝一門から好男子の桂小米師匠。前回は田舎弁を生かした『代書屋』で爆笑を誘った師匠。今回も一発快諾の出演となった。早くから楽屋入りされていたが、座骨神経痛とあって、「長い噺は・・・」と、楽屋雀を煙にまいて、先代(故桂枝雀)と同様の『さらしくずし』に乗って高座へ。
中入後は、笑福亭一門の笑福亭猿笑師。上方で唯一、江戸落語を演じられる師。『楽屋よもやま噺』でも紹介した通り演題は『真田小僧』。六代目の師匠も放送ではめったに演じられず、小生も一度しか聞いたことはない。まず、マクラで内弟子時代の犬のチンより下の待遇という悲惨な体験?の想い出を楽しそうに語る。場内は爆笑の連続。 さて今回のトリはご存じ、笑福亭鶴瓶師匠。前回七月の出演後、半年で再演となる。今回は「是非、当席で固めたい噺がある。出して・・・」とご自身から熱望されての出演。 マクラからサゲまで、本年を締めくくるに相応しい秀作。9時、大入師走公演はお開きとなった。 |