第267回 公演の記録 吉村 高也 |
公演日時: 平成12年11月10日(金) 午後6時30分開演 「 福三改め 二代目森乃 福郎 襲名披露公演 」 出演者 演目 桂 丸 福 「普請ほめ」 露の 團 六 「鉄砲勇助」 笑福亭 松 喬 「尻餅」 露の 五 郎 「浮世床」 中入 襲名披露口上 福郎、五郎、松喬、はるか・かなた、團六 海原 はるか 漫才 かなた 福三改め 森乃 福 郎 「ない物買い」 |
第二六七回公演は、『福三改メ 森乃福郎襲名披露公演』。 新福郎師匠の門出を祝して、上方落語協会会長の露の五郎師匠。笑福亭一門から笑福亭松喬師匠。漫才界から、今絶好調の海原はるか・かなた師匠と、顔ぶれも揃う。 四時半の開場一時間前に、もうお客様の列が出来る。その列が元町本通りに達した五時半に予定通り開場。 トップは、一番に楽屋入り。前座の仕事であり、本人も得意とするお囃子では一番太鼓を。そして、二番太鼓も参加し、その合間に楽屋で今日の日の演題を考えるという桂丸福師(福團治一門)。今年で十八年のキャリア(五十七年入門)で当席初出演である。 「長いこと、待ってましてん。初めてですわ。ここ。もっとも、わたい、仲間内でも知られてまへんけど。落語会行っても知らん顔でっさかい」と丸福師の話。 さらに、「今日は何分で?」「十五分から二十分で」「えっ、そんな長う演(や)ってよろしいんか。」「何演(や)ったら? お客様は? 」と、矢継ぎ早に質問が出る。 二番太鼓から『石段』の出囃子で、衣装は白と青の井桁模様とやや派手目。その衣装と正比例するような芸風の丸福師の演題は『普請ほめ』。 「えー、私が桂丸福と申しまして、こう言いましても、ご存知の方はいらっしゃらないと思いますが・・・」と、最後まで演じると『牛ほめ』となるお馴染みの噺が始まる。時間を考えて、途中で切り十五分の高座。「あほがワァワァ申しております、『普請ほめ』と云う、お笑いでございました。」と、基本に忠実で、きっちりと演じる口演に客席から惜しみない拍手が起こった。 二つ目は、五郎一門から、当席常連の露の團六師。神戸出身で東灘区御影在住とあって、その活躍は皆様もよくご存知の通りで、襲名披露公演に華を添えます。初代春團治、師匠(五郎)と同じ『鍛冶屋』(現在、五郎師匠は『勧進帳』)の出囃子での登場。 「えー、続きまして私のほうで・・・。」とスタート。アメリカ大統領選挙、ロト6、イチローの大リーグ行き、湯舟トレードの話から、露の一門と他一門のトレードの話。團六案では、立花家千橘↑↓桂福團治、露の真伍↑↓月亭八方、露の都は残留、露の團四郎は金銭トレードで笑福亭へ、新治・吉治↑↓笑福亭喬若で、師匠に提案すると「ええ案や。けど、その前にお前を自由契約に。」 マクラで笑いをとっての今日の演題は『鉄砲勇助』。ポピュラーな噺であるはずのこの噺だが、当席で演じられるのは平成六年七月の百九十四回以来、実に六年ぶり。ネタ帳をジックリ調べて「よし、これや」と決めたのか? それとも、最初から決めていたのか? はたまた、たまたまか? 團六師にたずねるのを忘れた。 この噺、五郎師匠十八番の前座噺とあって、團六師も基本に忠実に演じる。随所に團六師の工夫が入った爆笑噺に仕上がっていた。結構。 三つ目は、軽くて抱腹絶倒の松喬落語を期待の中、『高砂丹前』でゆっくり笑福亭の重鎮、笑福亭松喬師匠が登場。 *** 楽屋よもやま噺 *** 楽屋入りされていた、五郎、松喬の両師匠と談笑。 小 生「おはようございます。本日はありがとうございます。」 両師匠「おはようさん。いつもお世話さん。」 小 生「松喬師匠。CDは完売ですか?(十枚組で自主発売)」 松喬師「ん、百三十セット作ったんやけど。全部売れたわ。また、作るけど自分で作るか ら時間がかかるねん。」 小 生「五郎師匠のCDは進んでますか?(大全集の計画あり)」 五郎師「吉村はん。ちょっと色々あってなぁ。ちょっと遅れそうや。」 * 横で松喬師匠が遊喬師に「『俺や。』ボーンやで」と打ち合わせ。 小 生「『尻餅』でっか。」 松喬師「相変らず、よう判るなぁ。ええやろ、去年、小染が演(や)ってるけど、一年経 ってるしな。」 五郎師「今日はお祭りやから。受けて、トリを考えてやる噺考えな。」 * ここで、新福郎師匠へ風月堂様からのお祝いを開けて、一同で見る。 五郎師「へー、しゃれてるなぁ。さすがや。福郎の紋を真ん中に、京都の景色をあしらっ た和菓子や。立派なもんやな。」 福郎師「立派や。もったいのうて、食べれまへんで。ありがたいわ。」 松喬師「上だけ切り取って、額に入れとかなあかんな。」 五郎師「ところで、ここは、口上の締めは?」 小 生「最後は『大阪締め』です。あ、それと、毛氈の下に座布団を」 五郎師「さよか、ええなぁ。さすがに、ええお客さんやなぁ。あれ、合わへんねん。わて ら慣れてるけど、漫才さんいはるから、引いたげて。おおきに。」 * ここで、『高砂丹前』が鳴る。 松喬師「お先・・・。座布団引っとってな。足しびれる(笑)。」 高座へ登場した松喬師匠。楽しむように、松鶴師匠の貧乏時代の話題から十二月の話題から始まった演題は予想通り『尻餅』。師匠直伝だけあってキッチリ、タップリ演じる、松喬師匠の至芸に会場からは随所に笑いと拍手が起こる。三十分の熱演であった。 中トリは上方落語界の長老、露の五郎師匠。半世紀を越える芸歴の師匠だが、「未だ未完成。生涯勉強」とは、芸にかける師匠の言葉。師匠ご自身も、桂春坊、桂小春團治、露の五郎と改名、襲名も経験されておられ、今公演も新福郎の親代わりとして出演し、ビシッと締めることになった。演題は『浮世床』。おめでたい会にはピッタリの演題。師匠十八番とあって、楽しみながら演じられる。場内もツボツボでドッカンと笑いが起こり、お中となった。 そして、祈が入って「東西ーー、東西」で中入後のお楽しみ、『襲名披露口上』が始まる。 舞台下手から、露の團六(司会)、海原はるか・海原かなた、森乃福郎、露の五郎、笑福亭松喬の各師匠が顔を揃える。 團六師「まず、笑福亭を代表しまして、また上方落語協会理事の笑福亭松喬よりごあいさつ。」 松喬師「先代は、元々笑福亭福郎と申しまして、長い事、松鶴の家に居りまして、一時、 あーちゃん(松鶴夫人)とあやしいと夫婦喧嘩のネタで・・・、いずれにつきま しても先代同様よろしく。」 はるか「きたる十一月の十七日、夜六時半。ワッハ上方で我々、はるか・かなたの漫才ラ イブを行いますので(会場爆笑)・・・。(色々チャチャが入って)・・・とにかく よろしくお願いいたします。十一月十七日よろしく(会場爆笑)お願いいたします。」 そして、五郎師匠が締める。 五郎師「えー、ご多忙中にもかかわりませず、まして、世の中不景気な中を、かくも賑々 しく御来場いただきまして、まずもって厚く御礼申し上げる次第でございます(会 場拍手)。・・・(中略)・・・平成の福郎として、お客様あればこその噺家でござ いまして、『手をとりて共に登らん花の山』なにとぞ、よろしくお願い申し上げる 次第でございます。」 五郎師「せっかくのお祝いでございます。大阪締めで祝いたいと思いますので、打ちまし ょ、チョン、チョン。も一つせ、チョン、チョン。祝うて三度、チョン、チョン、 がチョン。これがなかなか合いまへんねん(会場爆笑)。」と説明して手締めを。 当席ではいつもながらキッチリと決まる。 モタレは上方漫才界のベテラン、海原はるか・かなた師匠。 当席には、初出演ながら、お客様は「髪の毛を・・・」と、よくご存知。「えー、ありがとうございます・・・」とあいさつから、今乗りに乗っている漫才が始まる。途中のツカミ(髪の毛を吹く。もどす)では会場は、大爆笑。当席のお客様に乗せられて、乗りに乗っての漫才は約二十分。お客様も両師匠も大満足の高座であった。 そして、トリは、福三改め二代目森乃福郎師匠の登場。昭和四十七年三月に、故森乃福郎師匠に入門し、笑福亭福三となって二十八年目の今年、弟子としてもっとも嬉しく名誉な師匠の名跡を襲名する運びとなった。当席へはここ暫くスケジュールの関係で出演はなかったが、今回は「大阪・京都・東京の一連の『襲名披露公演』をぜひ、神戸でも」との熱望によっての開催される。 出囃子も福三時代の『牛若丸』から師匠の『獅子』に乗って大はりきりで高座へ登場。「えーありがとうございます。私にとって一生一代の晴れ舞台でおそらくこれが最初で最後・・・。」と喜びの弁。 襲名披露神戸公演に選んだ演題は、京都公演と同じく『ないもの買い』。噺がしっかりしてクスグリも多く、演じ手も多いだけに、非常にポピュラーな噺だけに逆に独自性を出すのが難しい。新福郎師匠は早くから演じられており、十八番中の十八番。最初から爆笑の連続で、サゲにも一工夫が加えられ、笑いは絶え間なく起きた二十二分であった。 *** 恋雅亭の「襲名披露公演」の歴史 *** 「平成三年九月 染二改メ 四代目 林家 染 丸襲名披露公演」 ・落語 四席 林家市染・笑福亭松之助・桂春團治・古今亭志ん朝 ・襲名披露口上 桂春團治・笑福亭松之助・古今亭志ん朝・笑福亭仁鶴 ・漫才 酒井くにお・とおる
・対談 染語楼・鶴 瓶 ・「たばこの火」 染二改メ 林家 染 丸 「平成五年六月 市染改メ 四代目 林家 染語楼襲名披露公演」 ・落語 四席 林家染八・笑福亭仁福・林家染丸・桂文枝 ・披露口上 文枝・松之助・五郎・福團治・仁鶴・染丸 ・漫才 いま寛太・はな寛大 ・「市民税」 市染改メ 林家 染語楼 「平成六年七月 花枝改メ 三代目 桂 あやめ襲名披露公演」 ・落語 四席 桂坊枝・桂枝女太・桂文福・桂文枝 ・披露口上 桂文枝・快楽亭ブラック・桂文福・桂小枝 ・落語 快楽亭ブラック ・「OH!舞ガール」 花枝改メ 桂 あやめ 「平成八年三月 染八改メ 五代目 林家 小 染襲名披露公演」 ・落語 三席 林家花丸・林家染丸・桂ざこば ・披露口上 桂ざこば・林家染丸・笑福亭鶴瓶・林家染語楼 ・落語 笑福亭 鶴 瓶 ・「禁酒関所」 染八改メ 林家 小 染 「平成九年二月 小つぶ改メ 三代目 桂 枝 光襲名披露公演」 ・落語 四席 桂文華・桂きん枝・月亭八方・桂文枝 ・披露口上 桂文枝・林家染丸・月亭八方・桂きん枝 ・落語 林家 染 丸 ・「たちきれ線香」 小つぶ改メ桂 枝 光 平成九年四月 春秋改メ 四代目 桂 梅團治襲名披露公演」 ・落語 四席 桂春雨・月亭八方・笑福亭松之助・桂春團治 ・披露口上 桂春團治・笑福亭松之助・月亭八方・桂春駒 ・太神楽 海老一 鈴 娘 ・「竹の水仙」 春秋改メ 桂 梅團治 「平成十一年五月 小春改メ 三代目 桂 小春團治襲名披露公演」 ・落語 四席 桂福矢・桂春駒・林家染丸・笑福亭松之助 ・披露口上 笑福亭松之助・林家染丸・北野誠・タージン・桂春駒 ・トーク 北野誠・タージン ・「職業病」 小春改メ 桂 小春團治 |