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       第264回 公演の記録           吉村 高也
       公演日時: 平成12年 8月10日(木) 午後6時30分開演  

                 
出演者               演目
   桂   三 若動物悩みの相談室
   林家  染 二ラストシーンはしめやかに
   桂   雀 松般若寺の陰謀
   笑福亭 福 笑憧れの甲子園
    
中入   
   笑福亭 仁 智アイスクリーム
主任 桂   三 枝シルバーウエディングベル

八月は、恋雅亭特別番組・第二六四回『創作落語の会』公演と銘打ち、桂三枝、笑福亭福笑、そして、笑福亭仁智の三師匠の顔合わせとなった。

  前売券は七月公演で二十枚、以後、七月中に六十枚を突破し、八月六日には百枚を突破して完売となり、絶好調。電話での問い合わせも日を追って多くなり、「当日券有りますか?」「何時に行ったら入れますか?」などと相次いだ。

 その好調な売れ行きを反映する様に、開場一時間以上前の四時過ぎからお客様の列が出来る。階段の上にまで及んだお客様が、開場定刻の五時半には吸い込まれるように入場された。会員様や当日券のお客様も数多く、会場一杯に並べられた椅子も全て埋まり、ついに立ち見が出る大入り満員となった(今年一、七月に続く大入りが出る)。

  その大入り公演のトップは、三枝一門から当席初出演の桂三若師。

平成六年入門の六年目。師匠譲りの創作落語を引っげての登場となった。ちなみに、平成六年組(入門六年)の当席への登場は、桂春菜、桂福矢師に次いでの三人目。

  『石段』の出囃子で登場した三若師は、地元元町生まれの神戸ッ子。登場するや、会場から大きな拍手と歓声が起こる。「えー、私が落語界の高校野球児。桂三若でございまして、ここは、神戸生まれの私にとりまして憧れの寄席でありまして、ここでやるのが、私の夢でありまして、今日は頭を丸めてまいりました・・・。」と話し始めると、また、会場から拍手が起こる。

 そして、最近の失敗談(一人の落語会、出身大学、公衆便所、ペットショップ)を笑い話風に語り、本日の創作落語、『動物悩みの相談室』がスタートした。主人公の動物が繰広げる物語は、動物の悩みを聞いていき、シャレで綴っていくもの。蚊、なまけもの、パンダ、オウム、、ミンミンゼミ、虎、水牛、蛸、カニ、キリンが登場してサゲとなった。

  二つ目は、林家一門から林家染二師。染吉から師匠の前名を襲名して、師匠譲りの本格的上方落語やその風貌を生かしての創作落語に絶好調の師。今回も、師匠(四代目染丸)の染二時代の出囃子『藤娘』に乗って、染二ファンの歓声と拍手に迎えられる。古典と創作の二刀流の師であるが、今回は創作落語で登場。

  噺家生活十六年の師の修業時代の失敗談、師匠の奥さんのダイエット事件。道頓堀ダイビング事件、一門行き付けの警察連行事件から、その取り調べ風景を落語にした『ラストシーンはしめやかに』。

  定年を明日に控えた、万年平の警察官の最後の手柄を狙った取り調べをオーバーアクションと顔と声で熱演。会場からは惜しみない拍手と笑いが起こる。

  そして、三つ目は故枝雀一門から桂雀松師(地元神戸市出身)。この師も古典と創作の両刀使いで当席常連だが、今回は創作落語。「えー、本日は、ようこそ恋雅亭秘密クラブへお越し下さいまして・・・」とあいさつ。演題は、前月の紹介でも予測した通り、小佐田定雄先生作の『般若寺の陰謀』。お寺を舞台にし、古典落語を思わせる噺は、ギャグで引っ張っていくのではなく、物語の意外性で引っ張っていき、雀松師匠の語り口と相まってほんわかムードの噺として展開。古典落語の域に到達した創作落語であった。

  さて、中トリはご存知、上方落語界の爆笑男 笑福亭福笑師匠。師の個性から生み出される独創的創作落語で、お馴染みの師匠。大拍手で迎えられた師匠。「えー私の方もお付き合いをお願いいたしまして・・・。」と、即、本題へ入る。今日の演題は『憧れの甲子園』。

  師匠がこの噺を当席で演じるのは今回で三度目。初演は震災復興第回公演となる、平成7年7月の203回公演。会場一杯のお客様。桂米平、露の団六、笑福亭鶴瓶、桂春団治、桂雀三郎と顔も揃った演者のトリとしての口演。そして、二年後の平成10年8月の240回公演のトリでの口演が二度目。そして、今回となる。

現代版『一人酒盛』風に、監督のボヤキ酒を中心に噺が進展する。本音やシャレ。温かい言葉や叱咤激励。人間の本質をズバリ描いた師匠一流の福笑ワールドに場内は、酔ったようにタップリ楽しんだ22分は、大喝采のうちにお中入となった。

  中入り後は『創作落語の会』にも、当席には無くてはならない笑福亭仁智師匠の登場となる。

 過去師匠が当席で演じた創作落語は、順に『スタディベースボール』『医者のシンドローム』『老女A』『DO YOUR BEST』『アフリカ探検』『目指せ甲子園』『自分に逢った男』『鉄砲B助』『恐怖の民宿』『大阪弁講座』『健康居酒屋DHA』『俳句は心のよりどころ』。その全てが師匠のほのぼのとした芸風で演じられ好評であった。

 さて、お馴染みの『オクラホマミキサー』の出囃子で登場の仁智師匠、好きなプロ野球選手(引退編)から話題に入る。掛布選手、川上哲治さん、西本幸雄さん、そして、川藤、福本、岩本、栗橋の各選手が生き生きと描かれる。これが大爆笑編。そして、「ちょっと傾むいたやぐざの噺」と前置きして、今回の創作落語『アイスクリーム』が始まる。

兄貴と弟分(源太)とが繰る広げるギャグの連発噺。師匠のたたみかけるような演出と相俟って、これがまた絶品。高利貸しでは儲からなくなったので、何かで儲けようとするのだが、これが、全て失敗。その度に会場全体が大きく揺れる。

  まず、スタートは便所から。「ちり紙」と「明治のチェルシー」の間違い。しのぎの方法を考えた二人は「小銭を溜めた年寄夫婦をかつあげ」。「金出せ!」で出てきたのは老婆の山田カネ。このパターンが続く。紙面ではその面白さが表現出来ないので残念だが・・・・。

こんなパターンが・・・。弟分「兄貴、『豊臣の埋蔵金』ちゅうのんどうですか? 秘密の地図手に入れましてん。」兄貴「それ、ええやないか。掘りに行こか。」弟分「兄貴、壷みたいなん出てきましたでぇ。」兄貴「ぼろぼろの布が出てきたで、なんか書いてあるわ。・・・・こらっ『豊臣のマイゾウキン』やないか。」

 そして「甲子園球場での売り子」として「アイスクリーム」を売ることになりサゲとなる。一番先に振った「高利貸し(コウリガシ)」と「アイスクリーム(氷菓子)」を掛けたシャレでサゲとなった。

  そして、今回のトリは桂三枝師匠。前出の染二師同様、師匠である文枝師匠が小文枝時代の出囃子『軒すだれ』に乗っての登場となる。高座へ顔を見せると本日一番の歓声と拍手が起こる。「ようこそ、おいで下さいましてありがとうございます。えー、私が桂三枝の生物(なまもの)でございまして・・・。えー、関西はざっくばらんでよろしいなぁ・・・。」と、お得意のどこにでもあるような話題がスタート。

@     きどっていない難波のラーメン屋のおばちゃん。「おまっとうさん。」と持ってきたスー

  プの中に親指が入っている。「おばちゃん親指、親指。」と言ったら「出汁し!、出汁し!。」

A     大阪の寿司屋。「何しまひょ?」「何を握ってもらおかなぁ」と言うたら「手でも握りま

  ひょか」

B     堅いはずの医者と患者の会話。パート1患者「先生、私、右の足の付け根押したら痛い

  んですわ。」  先生「ほな、押さんとき。」

C     堅いはずの医者と患者の会話。パート2患者「先生、あの、右の膝のとこがなぁ、歩い

   たら痛いんですわ。」  先生「そら、年やがなぁ。」  患者「年や言われても、左の足は

     同い年やけど、痛ないねん。」

D     堅いはずの医者と患者の会話。パート3患者「先生!胃のレントゲンまだですか?」

  先生「いやぁ。つかえてんので、30分、程待ってくれる。」  患者「いやぁ、昨日から

何も食べてないんで、お腹が空いて、空いて。バリウムでも飲ましてくれる。」

  そして、三枝師匠、作演出の創作落語がスタートする。『創作落語』の命名者でもある師匠が、現代センス溢れる師匠の自作の噺は、その全てが名作爆笑噺に仕上がっているが、今回は八十三歳のおじいちゃんと七十一歳のおばーちゃんが結婚することになり、その披露宴の風景を綴った『シルバーウエディングベル』。

  スケッチ落語風に噺は進み、師匠の一言、一言が爆笑を生む。途中でちょっとしたハプニング。会場のクーラーが切れたのか、暑いのである。噺の途中で「何で、こんなに暑いんや?」と師匠が自らツッコム。それに対して会場から「夏や!」と返す。師匠は「いやぁ、関西は客も面白いわ」ときり返す。

  高座と会場が一体となった『創作落語』は27分。大喝采のうちにお開きとなった。

「えー、ありがとうございました。えー、せっかくでございますので、もう一席・・・ありがとうございました・・・」と満員のお客様を見送る時もサービス満点。

 大受けの『創作落語の会』であった。楽屋でも三枝師匠は絶好調。「今日は良かったなぁ。ちょっと、打ち上げ行こか!」と出演者と関係者で二次会。場所は元町本通りと南京町の間の「R(当席を応援頂いているスナック。福笑、あやめ師匠の行き付けの店でもある)あった。そこで、どんなことがあったか、皆様もだいだい想像はお付きであろうがこの会

報では、お伝え出来ないことをお詫び申し上げる。 (平成十二年八月十日 大入叶)

笑福亭福笑・創作落語演題控

当席へ、最も多く口演されている福笑師匠でありますが、ここで、まとめて演題をご紹介します。

福笑ファンの皆様は、いくつご存知ですか? 何がお好きですか?

『母音の世界』『新おもろい夫婦』『北の旅梅田界隈色事指南』『京都男二人』『いとしのクレゾール』『渚にて』『泪のペアリフト』『懺悔の値打ちもない』『もう一つのニッポン』『ダジャレ教室』『ワンワンラブソディ』『瀞満峡』『脂肪遊戯』『温情刑事』『狼の挽歌』『宗教ウオーズ』『マラソンマン』『三田の猪買い』『珍宝堂奇談』『千客万来』『硬骨の人』『再生おじさん』『鎮守様』『山寺ひょう吉』『セールスウーマン』『骨肉』『憧れの甲子園』『島原ララバイ』『憧れの回転寿司』『きょうの料理』