公演記録目次へ戻る


       第258回 公演の記録           吉村 高也
       公演日時: 平成12年 2月10日(水) 午後6時30分開演  

                 
出演者               演目
   笑福亭 遊 喬二人癖
   桂   三 歩神様の御臨終
   桂   喜 丸鬼の面
   桂   文 紅ちしゃ医者
    
中入   
   桂   雀 々遺言
主任 笑福亭 福 笑珍宝堂奇談

2000年の新春初席の第二五七回公演は大入りで無事お開き。

そして、二月の第二五八回公演が開催されました。今回はトリに笑福亭福笑、中トリに桂文紅師匠の両師匠を中心としての公演となりました。

 いつも通りに開場、階段に列をつくられたお客様の列が、吸い込まれるように開場へ入場されたのは定刻の五時半。当日は平日にもかかわらず、会員様や当日のお客様を中心に出足も好調。前列の方から席が埋まってゆき、六時半に開演。

 トップは笑福亭松喬一門から、二番弟子の笑遊喬師がトップで登場。(キャリア八年目・平成三年入門)

『石段』の出囃子に乗って高座へ登場した遊喬師。マクラもほどほどに、師匠直伝の『二人癖』を演じる。癖を直そうとする二人だが、いつしか金儲けする秘策を用いる側と防ぐ側に分かれての知恵比べとなるのだが・・。

  さて、この噺は松喬師匠も「好きな噺」と公言するだけあって、十八番であるが、遊喬師も師匠と比べても遜色のない出来であった(ちょっと誉め過ぎか)。

**落語ミニ情報  平成三年の入門者**           (敬称 略)

  入門者数にも波があり、この平成三年は九名を数える。

・笑福亭 遊 喬  本名 長 柄 吉 恭   六代目笑福亭 松 喬師匠に 1月入門

・桂  こごろう  本名 尾 崎 裕 一   三代目桂   南 光師匠に 3月入門

・笑福亭 生 喬  本名 小 西 正 之     六代目笑福亭 松 喬師匠に 3月入門

・桂   つく枝    本名 三 宅 胤 清    五代目桂   文 枝師匠に  4月入門

・林家  染 輔   本名 林   将 記    四代目林家  染 丸師匠に  7月入門

・笑福亭 喬 楽   本名 川 崎   大     六代目笑福亭 松 喬師匠に  8月入門

・桂   七 福     本名 中 川 博 之    四代目桂   福団治師匠に10月入門

・林家  花 丸   本名 船 引 厚 志    四代目林家  染 丸師匠に11月入門

・桂   貴 春   本名 井 坂 貴 弘    三代目桂   春団治師匠に12月入門

 

  二つ目は、桂三枝師匠の直弟子、桂三歩師。師匠同様の創作落語派で、当席へは二度目の出演(前回は二三九回公演)。芸名に関連した『三百六十五歩のマーチ』で高座へ。

「はい、神戸の皆様こんばんわ。2000年になりましたなぁ・・・。えー、頭を大晦日から元旦にかけて剃りまして、これがミレニアムカットでございまして、嫁はんにかみそりで剃ってもろてましたら、傷だらけになりますねん。『痛っ!』言うたら、『ごめん、誤作動』(大爆笑)」

  さらに、自動販売機、無言電話の話題で笑いをとった後、電話から始まる、創作落語『神様の御臨終』がスタート。イエス・キリストから電話がかかってきて、二十世紀の神様の御臨終に立ち会って欲しいと頼まれ、大阪の京橋のうどん屋で待ち合わせる。「あー、めん(アーメン)類好きや」。待ち合わせ時間は「おー十時か」。病院へ着くと風邪の神さん、七福神、貧乏神さんがお見舞いに来ている中で面会するという奇想天外な噺。

  そして、三つ目は、ざこば一門の二番弟子、「きまやん」こと桂喜丸師の登場です。昭和五十六年入門ですので、今年で二十年目の芸歴で、当席期待の有望株。

  その「きまやん」が『たつみ』の出囃子で登場。年末のカウントダウンの余興での失敗談から、今の子供と昔の子供の違いは、小さい時から働くことと断わって『鬼の面』が始まる。この噺は、同じ米朝一門の桂雀三郎師匠が復活口演したのを受け継いだものである。

師のイメージと登場人物がピッタリと一致した秀作であり、再演を多いに期待したい。

 さて、中トリは上方落語界の大御所、桂文紅師匠の登場となりました。

当席へは年に一回のペースで、出演願っており、今回も桂本流の文団治師匠直伝の本格的上方落語をその幅広い演題の中から、ほのぼのと、ゆったりした口調で聴かせていただけると期待の中での登場です。

  「えー、寒い中、お運びを頂きまして、楽屋中喜んだり、ころこんだりいたしております。」とお馴染みのフレーズ。

「最近は落語会に来ましても知らん顔が増えまして、わたいら覚える気がないもんでっから、ええかげんなもんです。」・・・とマクラが楽しいそうに始まる。三十五年前の腸捻転での手術の話、『手遅れ医者』の小噺から『ちしゃ医者』が始まる。

小生は数多くの師匠の噺を聴いたがこの噺は初めて。改めて師匠の演題の幅広さを再認識した。

  さて、中入り後は、久々の出演の桂雀々師匠です。師匠(故枝雀師匠)にもっとも似ていると言われる師匠ですが、若さあふれる高座で演じられる爆笑落語はいつもながら楽しみ。拍手で迎えられた雀々師匠、マクラは梅田の歩道橋で、いつも五時半位になぞなぞを突然しかけてくる変なおじさんの話。

「なぞなぞしょ、なぞなぞしょ」と話し掛けてきて、「一番から十番まで番号の打ってある駐車場がありました。九番だけ車が止まっていません。なぜでしょう?」「答えは、車は九(急)に止まれない」「笑て(わろて)笑て(わろて)」

「第二問。清少納言は夜寝る時に、何かして寝ます。さて、何をする?」

「答えは、マクラの掃除(枕草子)」「笑て(わろて)笑て(わろて)」

・・・。とへんなおじさんの話。

続いて地下の自動券売機の前にいるおばあちゃんは、お金を入れると突然走ってきて、取り消しボタンを押す「取り消しババア」という話。

  そして、今日の本題は『遺言』の一席。自分のおやじの遺言を聴こうと、早口でまくしたてる玉造の親戚の叔母さん、短気な河内の叔父さん、話がくどい住吉の叔父さん、を訪ね廻る吉松(きちまつ)。苦労して、引っ張られて、引っ張られて聴いた、おやじの遺言は、

「お前、気が短いからいらいらせんように」。大爆笑の高座であった。

  さて、今回のトリは、今もっとも輝いている笑福亭福笑師匠に出演。昭和四十三年十月に故六代目笑福亭松鶴師匠に入門。熱血漢で個性的な芸風には熱狂的なファンも多く、当席でも最多出場回数を誇る固定客を持っている師匠です。その考え抜いた上方創作落語を楽しみにされたファンの大声援で高座へ登場。(出囃子は『佃くずし』)

  「えー、私もう一席でございまして・・・」と挨拶もそこそこに、さっそく本題へ。

今日は、通常の会で演じるのは、ちょっと掟やぶりの師匠自作の艶笑落語。『珍宝堂奇談』の一席。この手の噺は、当恋雅亭で開催されていた『大人のための童話集』のような特殊な会で演じられることはあっても通常は演じられることはない。

  それも、間接的な表現でニヤニヤとする演じ方が多いのであるが、師匠の演出は超直線的。どの噺でも最初からガンガンかますように演じられる師匠であるが、この噺は、さらにヒートアップ。ガンガン直接的な名詞が出てくる。最初、会場の雰囲気は、やや、緊張(ビックリ)してか、やや固い。

そこで、ペースダウンすることのないのが師匠の師匠たるゆえん。サゲまで出てくる名詞の数は変わることがない。

 噺の内容は、『首の仕替え』をベースに男性自身を取り替えに行く噺であるが内容を明記できないのが残念。サゲは「ベニスの商人」ならぬ「ペニスの商人」であった。

場内も少しビックリ、すごく満足。といったところだろうか。(平成十二年二月十日)