もとまち寄席 恋雅亭 | ||
公演記録 | 第249回 | |
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公演日時: 平成11年 5月10日(月) 午後6時30分開演 | ||
『小春改め 三代目 桂 小春團治襲名披露公演』 出演者 演目 桂 福 矢 「大安売り 」 桂 春 駒 「青菜 」 林家 染 丸 「猿後家 」 笑福亭 松之助 「お文さん 」 中入 襲名披露口上 松之助・染丸・北野誠・タージン・春駒 トーク 北野誠・タージン 小春改め三代目 桂 小春團治 「職業病 」 |
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五月十日。小春改め 三代目桂小春団治襲名披露公演が開催された。 今回で、当席での襲名披露公演は七度目。過去には、 ・ 染 二改メ 四代目林家 染 丸襲名披露公演。 平成三年九月 特別番組 ・ 市 染改メ 四代目林家 染語楼襲名披露公演。 平成五年六月 特別番組 ・ 花 枝改メ 三代目桂 あやめ襲名披露公演。 平成六年七月 第195回 ・ 染 八改メ 五代目林家 小 染襲名披露公演。 平成八年三月 第211回 ・ 小つぶ改メ 三代目桂 枝 光襲名披露公演。 平成九年二月 第222回 ・ 春 秋改メ 三代目桂 梅団治襲名披露公演。 平成九年四月 第224回 と開催されている。今回で七回目の襲名披露公演には、松之助、染丸の両師匠をはじめ、一門の兄弟子、春駒師匠。そして、新小春団治師匠の親友、北野誠とタージンのご両人と顔ぶれも揃っての開催となった。 トップは、福團治(新小春團治師匠の兄弟子)一門の桂福矢師(平成六年入門。当席初出演)。 『石段』の出囃子で高座へ登場の福矢師は、開口一番、さらりと自己紹介。修業時代(今も、と断わって)の、その筋(この人も修業中)の兄ちゃんとのお風呂での接近遭遇事件。そして、修行の厳しい世界の相撲の話題から本題の『大安売り』へ。 ちょっと一本調子で、ツボはここやというところでの笑いはやや少ない。この噺の名手? 笑福亭鶴瓶師匠の芸談(本人は、おこがましい、と断わって)を聞いたことがある。「この噺は、最後の方へいくと、お客さんは『また、負るんやで』と全員判ってはんねん。そこで、照れたらあかんねん。そこを平気で語んねん」 二ツ目には、一門の兄弟子で、通称「駒ちゃん」の桂春駒師匠。登場するやさっそく「えー、ご酒家のお噂をもうしあげます」と始まった落語はお馴染みの『青菜』。古今東西で演じ手の多い噺であり、笑いも多いが、反面、よく聞く機会があり、演者に力が要求される噺でもある。 その噺を、春駒師匠は無難に演じる。さすが。随所に師匠の工夫が入っている。「この噺、ようけやってるやろ。難しいで。僕のんは、大師匠(故二代目桂春團治師匠)のん参考にしてんねん」は納得のコメントである。 そして、拍手と『正札付き』に乗って林家染丸師匠が登場。「えー、今日は、おめでたい席でございまして・・・。今日まで実は花月に出てましてん。けど、千人の内、まあ落語聴きにきてくれてはる人は八人程でっせ。その点、ここはパラダイスだんな・・・」そして、べんちゃらの話題から『猿後家』へ。この噺、現在では、柳家小三治、桂文枝の両師匠が有名である。この噺、幇間持ちの噺を得意とする林家一門の伝統通り、故三代目染丸、故四代目小染の両師匠も演じられており、当代の染丸師匠も。 * ***落語ミニ情報・其の一(『大安売り』と当席、そして・・・) この『大安売り』という噺。当席でも、数多く演じられている。 桂文福(第112回公演)、桂雀司(第126回公演)、桂春秋(現梅団治、第174回公演)、笑福亭鶴瓶(第211回公演)、笑福亭瓶太(第226回公演)の各師匠である。それと、落とせないのは、笑福亭仁智師匠である。師匠はなんと、当席では、第17、86、133、169回公演と四回演じられている。 そして、この噺は仁智師匠の名作創作落語に続くのである。そうです『目指せ甲子園』。この噺は仁智師匠の『大安売り』の改作である。直伝を感じさせる名演。死にもの狂いのべんちゃらの限りをつくした、この噺は、いつ聞いても面白い。 さて、中トリは笑福亭松之助師匠。演目は既に決まっていた。師匠から「今度、NHK(上方落語の会)で、演(や)ろ思てんねん。その前にどうしても、ここ(恋雅亭)での反応見とうてなぁ。ええかなぁ・・・」と、断わっての『お文さん』となったのである。 勿論、当席では初めて演じられる噺。小生も過去に、文枝、故小染、現染丸の三師匠でしか聴いたことがない、大変珍しい噺である。やはり、言い尽くされた表現であるが、内容が良く分からない。骨が折れる。受けない。からであろうか。そこを、 さすが松之助師匠。「お文さん」という言葉が現代では判りにくいだけで、噺自体は師匠の工夫もあって、面白い噺に。拍手の中、お中入りとなった。 さて、祈が入って拍手の中で、高座にズラリ六人が並び 小春改め三代目桂小春團治襲名披露口上が、始まった。 春 駒師 「えー、ただ今より、小春改め三代目桂小春團治襲名披露口上を申し上げます。 本来ですと、ここに師匠の桂春團治が並んで」 松之助師 「そや、三代目。なんで、おらへんねん」 春 駒師 「他に、美味しい仕事・・・。去年から今日は仕事が『どうぞよろしく』とのことでした」 染 丸師 「なんじゃ、そら」 と爆笑口上がスタート。 春 駒師 「それでは、まずは上方落語界最長老、笑福亭松之助師匠よろしくお願いいたします」 松之助師 「私は老人医療を受けておりますので、そういう人間がこういうとこへ、出てくんのはと 思たんですが、『長生きは目出度いから、並んでるだけでええから』と、なんや古道具 屋の前の狸みたいに言われて座るだけやと思てたら、『座るんやったら、なんぞ喋れ』 言われて、さっき喋って、しんどい・・・。」 と、歴代の桂小春團治の紹介と、お願いを語る。 春 駒師 「引き続きまして、北野誠さまより・・・。これは、様ですか、師匠ちゃいますしね。」 染 丸師 「ゲストやからね。ちゃんでもええし」 北野誠様 「何でもええねん」 春 駒師 「それでは、北野誠ちゃんより、ご挨拶申し上げます」 紹介を受けて、新小春團治師匠との間柄を「高校時代の落研仲間で、二十数年来の友人」 と紹介して、 北野誠様 「先日、携帯に電話がかかってきまして『今度、小春團治襲名すんねん』。寝ぼけて まして『小』が聞こえまへんでして、春団治を襲名する。先代が生きてはんのに四代目を 決めたんか。でよう聞いたら、なんや、小春團治か・・・」と、度々脱線。 愛情こもった口上であった。 春 駒師 「続きまして、タージンちゃんより、ご挨拶申し上げます」 タージン 「私も後輩でございます。初めてお会いしたのは、私が高校へ入学して、落研の部室 でした。もう小春になってはりました。京橋へ連れていかれて、生ビール飲まされて・・・ その後、私の芸人の先輩で、兄貴でございます」と挨拶を述べる。 春 駒師 「引き続きまして、上方落語協会副会長・・・偉いでんな」 染 丸師 「へへぇ、もんいっぺん、言うて」 春 駒師 「上方落語協会副会長、林家染丸より、ご挨拶申し上げます」 染 丸師 「えー賑々しく御来場いただきまして・・・えー小春團治という名前は漢字で四文字、 カナで六文字と大変長いんですが、非常に耳に響きが良い名前でございます。うちの 系列にも、小染丸(こそめまる)とちゅう名前がございますが、これは誰がいうても言い にくい。ところで、一門での四代目候補の一番手?」 春 駒師 「これだけは、言うときます。小春團治から、春團治へなった噺家はおりまへん。 今回も多分無理。これは兄弟子(福團治、春之輔、春若、春駒)全員の普段は まとまりはないが、一致した意見です」 と、春團治襲名の話題で笑いをとってから、手締めとなる。 手締めは「大阪締め」。 「打ちましょ、チョーンチョン。もひとつせチョーンチョン。祝うて三度、チョチョンガチョン」といつもながら会場のお客様も見事に決まって、門出を祝う口上の締めとなった。 中入り後は、口上に登場した、北野誠・タージンのご両人が、派手な着物姿でのトークからスタート。 まずは、着物姿の感想。両氏とも、元落研だっただけに着物姿もなかなかさまになっている。トークは世間話風に進む。小春團治襲名の祝いの高座であるはずなのにず、酒、煙草、女、博打・・・・・。 話題は昔の暴露ネタのオンパレード。 しかし、その目は祝いの気持ちでキラキラ輝いている。約十五分の高座は爆笑の連続。会場の雰囲気を盛り上げるだけ盛り上げてトリにつなぐ。さすがである。 そして、「待ってました」の声と『小春團治はやし』に迎えられて、本日の主役、小春團治師匠の登場となった。 「福團冶、小春團治、梅團治と一門にダンジの名前が三人おります。これを一門では『ダンジ三兄弟』と呼んでます」と笑いを誘って、今日の噺は、前の二人(北野誠・タージン)の紹介通り、 今日のために作った創作落語『職業病』。 「この間も『仮面ライダーショー』の人と喋ったんですけど、あれ大変ですで、ぬいぐるみの中に入っている人。暑いのなんて、けど、裸では入りまへんねんと。ぬいぐるみに汗付けんようせんと、そうでないと、次の人が汗の臭いで中で窒息しまんねん。それと、声の人は別の人で、ぬいぐるみの人に合わせて『タアー』『トオー』とマイクで言ってますと、癖になるらしくて、電車が来たのでホームへ急いで駆け上がって、飛び上がる時に、思わず『トオー』。これが、いわいる職業病・・・・」 二、三の世間話をした後、本題へ。 新装開店のファミリーレストラン「キングダム・ホステス・茶臼山店」に新しく採用になった、元蓮池葬儀社の司会者だったホール担当チーフのしきび兆次、厨房担当チーフで陸上自衛隊出身の菊水守、ハンバーガーショップのスマイルコンクール全国五位の経歴をもつ、ホール担当の西田ひまわり、そして、今年、高校を卒業したバイトのあむらーの四人と立花店長とが巻き起こす、爆笑編。個性溢れる、四人の出身と気性の違いを見事にとらえて、それが笑いにつながっていく。 笑いは絶えることなく起こって、サゲとなった。 平成十一年五月十日 |